続・校長室のカリキュラムマネジメント

末松裕基

続・校長室のカリキュラムマネジメント[第1回]対話を始め、続けたいと思います

学校マネジメント

2020.12.09

続・校長室のカリキュラムマネジメント[第1回]対話を始め、続けたいと思います

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.1 2019年5月

東京学芸大学准教授
末松裕基

 新年度が始まり、清々しい気持ちとともに、慌ただしく慣れない環境で不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

 そのようななんとも言えない感情を抱くのは、この時期には自然なことだと言えます。わたしたちは慣れない環境にいるときには当然不安を感じますし、その反面、新しいことに挑戦しようという気持ちも湧いてきますので、それら両方とうまく付き合うことが大切だと思います。

 わたし自身も、卒業式を終えたかと思うとあっという間に新年度ということで、大学を卒業し、これから社会に出て行く学生をどのような言葉で送り出し、そして、大学に入学する学生になにを伝えるか思いを巡らす日々です。

 この春に卒業した学生は、詩人の岩崎航さんの言葉とともに送り出しました。前回の連載(2018年度「校長室のカリキュラム・マネジメント」『リーダーズ・ライブラリ』)の最終回でも紹介しましたが、彼は1976年生まれでわたしとほぼ同世代です。3歳のときに、筋ジストロフィーという難病を患い、その後、ほとんど動けなくなり、一時は自ら命を絶とうとしました。

 中学校卒業後、30歳近くになるまで、家族以外との接点もほとんど持てなくなってしまいますが、そんな彼は五行歌という詩に生きがいを見出し、たくましく生きています。

 彼の詩です。

思いのほんの
竹膜ほどの差で
変わってゆく
ひとの 生き様
ひとの 死に様

(『点滴ポール生き抜くという旗印』ナナロク社、2013年、57頁)

 竹膜というのは、竹の内側にある薄い皮です。卒業式などではなるべく自分の言葉で語るようにしてきましたが、今回は事前に文章を準備し、読み上げました。準備の途中で多少説教臭くなるかなとも感じながら、ただ大切なことは伝えたいという気持ちが優り、「これから様々な困難や難しさに直面することもあると思いますし、ついつい、周りに流されそうになることもあると思いますが、その際にでも思い出してください」と添えて、彼のこの詩を2回朗読しました。そして、「皆さん、これからほんの少しでも良いので、自分の思いを持って生きていってください。努力しない偉そうな大人にならないでください」と伝えました。

新たな気持ちで始める

 卒業や入学、新年度などの区切りは、人が完成する証ではなく、なにかを始めるためにあるのだと言えます。そして、新しいことを始める際に「今年はこれをやってみよう」と思いつくのはさほど労を要しないものですが、続けることが実は一番難しかったりします。敬愛する思想家の鶴見俊輔さんも「だれにでもひらめきはある。難しいのは続けることだ」とおっしゃっていました。

 不安も多く生じるこの時期は、続けられそうなことを、気持ちを新たに考え工夫する良いきっかけになるのではないでしょうか。

 本連載は、昨年度からの続きとなり、そのため連載名にも「続」と付いています。基本的なスタンスや問題意識は昨年度から変わりません。ただ、同じ内容を繰り返すつもりもありません。本連載から手に取られた方も問題なく読み進められるようにしようとも思っています。

 その精神は引き継ぎながらも、昨年度からの読者の方にも、様々に学校づくりのヒントやアイデアを提供できるようにも心がけたいと思いますし、また、大切なことは、繰り返しを恐れずに何度でも問いかけていきたいと思います。

 昨年度の初回には次のように述べました。

 この連載は、教育界にありふれた考え方や当たり前とされていることを少し別の角度から捉え直すことで、学校づくりのためのアイデアや視点の参考となるような内容にしていきたいと思います。慌ただしい日々を見つめ直す一助となればと思います。そのためにも、政策等の形式的で一般的な解説をやめて(そういうものは他にいくらでもありますし、そういうものにもう飽き飽きしている方も多いのではないかと思います)、わたしも先生方と本音トークをしたいと思っています。(中略)昨今もてはやされている「カリキュラム・マネジメント」というものは正直、わたしにもよく分かりません。皆さんもそう思ってはいませんか?(中略)本連載名にもなっていますが、これはわたしの考えたものではありません。変更を申し出ようかとも思いましたが、そのままにしておいた方が色んな問題を逆に考えることができるので良いかなとも思い、そのままにしています。今の学校をめぐる問題を象徴しているようにも思いますので、そういう現状やある意味理不尽さがあるからこそ、人間が考え、問題に向き合い解決する意義や価値も高まるのではないかと思っています。

根気強い対話と学びを

 これがわたしの基本的なスタンスです。学校には様々に突然、謎の言葉が降ってくると思います。しかし、それをただ単に否定するのでは、現状肯定やそれらの言葉に埋没するのと、その単純さという点では大差はないと言えます。

 突如として教育改革や教育政策の方針に右往左往させられるというこのような矛盾した状況下にあっても、なんとか方向性を定め、地域や学校の実態に即して学校経営をしていく姿勢がリーダーには求められます。

 そのような難しい仕事はどのようにして身につくのか。やはり丁寧な学習が求められます。その学習のために、現代という複雑な時代を理解しながら学校づくりの問題とあり方を様々な角度から考え、日々の実践のために時事的な話題も含めて論じていこうと思います。

 学校経営において取り組むべき課題はなにか、時間をかけて考え向き合っていく問題はなにか、リーダーとしてどのような思いを持って毎日を生きていくか。これらを考えるヒントを少しでも掴んでいただければ幸いです。

 今回の連載も皆さんとの率直な対話を心がけ、それらを根気強く続けていきたいと思います。耐久性のない文章、知識は使い捨ての発想ですので、そのような学びにならないようにわたしも意識しますし、昨年度の連載も含めて、繰り返し読み込んでいただければと思います。

 

 

Profile
末松裕基(すえまつ・ひろき)
専門は学校経営学。日本の学校経営改革、スクールリーダー育成をイギリスとの比較から研究している。編著書に『現代の学校を読み解く―学校の現在地と教育の未来』(春風社、2016)、『教育経営論』(学文社、2017)、共編著書に『未来をつかむ学級経営―学級のリアル・ロマン・キボウ』(学文社、2016)等。

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学芸大学准教授

専門は学校経営学。日本の学校経営改革、スクールリーダー育成をイギリスとの比較から研究している。編著書に『現代の学校を読み解く―学校の現在地と教育の未来』(春風社、2016)、『教育経営論』(学文社、2017)、共編著書に『未来をつかむ学級経営―学級のリアル・ロマン・キボウ』(学文社、2016)等。

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