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教師のためのメンタルケア入門

奥田弘美

リーダーから始めよう! 元気な職場をつくるためのメンタルケア入門[第2回]ストレスの正体、知ってますか?

NEW学校マネジメント

2020.05.08

新型コロナウイルス感染症対策に伴う急激な環境の変化や病気への不安により、いわゆる自宅でコロナ鬱(うつ)に悩む方が増えています。ご自身やご家族に問題がなくとも、一緒に働く方の心の健康は大丈夫でしょうか。ここでは、精神科医・産業医として活躍する奥田弘美先生が学校の管理職層向けにメンタルヘルスを親しみやすく解説した「リーダーから始めよう! 元気な職場をつくるためのメンタルケア入門」(『学校教育・実践ライブラリ』連載)を12回にわたってご紹介いたします。(編集部)

リーダーから始めよう! 
元気な職場をつくるためのメンタルケア入門[第2回]
ストレスの正体、知ってますか?

精神科医(精神保健指定医)・産業医(労働衛生コンサルタント)
奥田弘美

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.2 2019年6月

ストレスとは

 皆様は、ストレスについて、じっくり考えてみたことはありますか?

 精神医学では、「ストレスとは生体に何らかの刺激が加えられたときに発生する、生体側のゆがみ」であると定義されています。この定義から考えると、ストレスとは、不快なことや嫌なことだけではありません。心か身体に何らかのゆがみを与える、あらゆる刺激や変化がストレスになりうる原因なのです。

 ではどういった出来事が、ストレスを引き起こす危険があるのかを見ていきましょう。表にストレスの原因になりうる主だった日常生活上の出来事を列挙してみました。まずは、ご一読ください。

《ストレスとなりうる日常の変化・刺激》
①日常生活や職場でトラブルや強いプレッシャーに遭遇。
②親しい人やペットとの別れ。
③自分や家族の病気や怪我。
④自分や家族の、解雇や失業、または退職。
⑤経済状態の大きな変化(借金、収入の著明な減少、大きな増収など)。
⑥自分や家族の結婚(または離婚)、妊娠、出産など。
⑦配偶者や、子供との別居。逆に家族が増えた(親との同居、子供の誕生等)。
⑧自分や家族の職場での地位や環境、仕事内容が変化した(降格、異動、昇進、栄転など。または仕事の量や質の変化、新しい仕事や企画を任された等)。
⑨自分や家族の転校、入学や卒業、受験など教育関連の変化。
⑩日常の生活環境の変化があった(引越し、新築、災害など)。
⑪日常生活の習慣の変化があった(禁煙、ダイエット、習い事やスポーツを始めたなど)。
⑫仕事、学業、スポーツなどでの大きな成功や賞賛をあびた。もしくは逆に失敗や叱責を受けた。

 入学や就職、昇進、引越しなどの嬉しいこと、家族におこった変化も、ストレスの原因となりうるというのは、一般的にはあまり認識されていません。

 なぜ変化や刺激がストレスになりうるかというと、人は何らかの変化や刺激に遭遇すると、心や体が緊張したり興奮したりと普段よりエネルギーを使うから。この状態が続けば続くほど、知らず知らずのうちにエネルギーを消費し疲労していきます。心身のバランスが崩れて不調が発生してしまうのです。

 ストレスから身を守るための第1歩は、表にあるような「変化や刺激」に遭遇したとき、ストレスが発生する恐れがあるということを、あらかじめ意識化しておくことが大切です。特に年度替わりの春(3月〜4月)は、職場に新しい同僚が入ってきたり、上司の交代があったり沢山の変化が発生しますし、プライベートでも家庭内の変化が起きやすくなるので注意が必要です。また嬉しいことやおめでたいことに関わる変化がおこったときは、本人も周りの人も、ストレスには無関心となりがちです。嬉しさや喜びに興奮しがちとなり、ついつい普段より無理をしたり、頑張ったりしてしまいます。その結果、徐々に心身に疲労が蓄積していき、思わぬ体調不良に見舞われたり、集中力や気力が低下してしまったりするのです。まさに新入社員や新入生に多いとされる五月病などは、その典型といえるでしょう。

 もし変化や刺激に重なって遭遇したときは、まず普段より意識して睡眠(できれば7時間以上)とバランスのとれた栄養豊かな食事をしっかりとり、体に疲労を蓄積させないようにすることを心がけてください。そしてできるだけリラックス時間を捻出して心身をゆったりさせるようにしましょう。また一つの変化に心身がなじむまでは、次の新しい変化を起こすことはできるだけ避けることも肝要です。「変化に変化をできるだけ重ねない」ということは、自分だけではなく、職場の同僚、部下にも心がけてあげてください。例えば新卒の新人や、異動してきた人には、新しい仕事や役割をどんどん与えないこと。彼らが新しい職場に慣れるまで、残業や休日出勤、プレッシャーのかかるプレゼンやクレーマー担当などの仕事は免除する。アフターファイブの付き合いを誘うのも、ほどほどにする。こうした心がけや気遣いが心の不調を予防することに繋がっていくのです。

 

Profile
おくだ・ひろみ
平成4年山口大学医学部卒業。都内クリニックでの診療および18か所の企業での産業医業務を通じて老若男女の心身のケアに携わっている。著書には『自分の体をお世話しよう~子どもと育てるセルフケアの心~』(ぎょうせい)、『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)など多数。

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奥田弘美

精神科医(精神保健指定医)・ 産業医(労働衛生コンサルタント)

平成4年山口大学医学部卒業。都内クリニックでの診療および18か所の企業での産業医業務を通じて老若男女の心身のケアに携わっている。著書には『自分の体をお世話しよう~子どもと育てるセルフケアの心~』(ぎょうせい)、『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)など多数。

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