今後の学校行事の在り方・取り組み方

トピック教育課題

2023.01.25

message 今後の学校行事の在り方・取り組み方

文部科学省視学官
安部恭子

『教育実践ライブラリ』Vol.3 2022年9

コロナ禍における学校行事

 令和2、3年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止等により、各学校ではいろいろな教育活動が制限された。特に、子供たちが関わり合う活動や、児童会活動やクラブ活動など異年齢による交流活動が制限され、音楽会や体育祭、集団宿泊活動など、多くの学校行事が中止や延期になった。一方で、「できないからやらない」ではなく、新しい生活様式のもと、「どうしたらできるか」を考え、子供たちの発意・発想を生かしたり、ICT端末等を活用したりして、創意工夫して特別活動の実践に取り組んだ学校も多くみられたことは大変素晴らしい。

 令和3年1月25日の中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会における審議のまとめでも、次のように記述されている。(一部抜粋、傍線は筆者)

「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う臨時休業からの学校再開後には、限られた時間の中で学校における学習活動を重点化する必要が生じたが、そのような中でもまず求められたのは、学級づくりの取組や、感染症対策を講じた上で学校行事を行うための工夫など、学校教育が児童生徒同士の学び合いの中で行われる特質を持つことを踏まえ教育活動を進めていくことであり、これらの活動を含め、感染症対策を講じながら最大限子供たちの健やかな学びを保障できるよう、学校の授業における学習活動の重点化や次年度以降を見通した教育課程編成といった特例的な対応がとられた。このように我が国の学校に特徴的な特別活動が、子供たちの円滑な学校への復帰や、全人格的な発達・成長につながる側面が注目された。

 子供たちにとって学校生活が楽しく充実したものになるためには、特別活動の豊かな実践が欠かせない。

学校行事の意義について改めて考える

 学校行事は、学校や学年などの大きな集団で、子供たちが協力して行う活動である。学級活動や児童会活動、クラブ活動といった自発的、自治的な活動とは異なり、学校が計画し、実施するものであるが、子供たちが積極的に参加し、協力し合うことにより充実する教育活動である。日常の学習や経験を総合的に発揮し、発展を図る教育活動であり、各教科等では容易に得られない体験活動である。そして、地域の催し物等、学校外の行事ともつながりのある活動内容も多く、子供たちは学校行事を通して、地域や社会への所属感や連帯感も高めていく。学校行事の充実は、学校生活に彩りを与えて豊かなものにし、家庭や地域の信頼を高めることにつながり、共生社会の担い手を育てることにもつながっていく。

 令和3年6月に、国立青少年教育振興機構から、「国立青少年教育施設における小・中学校の集団宿泊的行事に関する調査─コロナ禍における安心安全に配慮した体験活動の在り方─」の報告書が公表された。報告書によると、小学校、中学校ともに集団宿泊活動を実施することによって、コロナ禍におけるストレス反応(怒りや引きこもりの感情)が事前に比べて事後は減少し、反対に自信ややる気の感情が事前に比べて事後は向上するなど、メンタル面での課題の改善が見られたという。各学校においても、学校行事の意義や価値を確認し、学校全体で共有することが求められる。

学校行事の充実に向けて 各学校で取り組んでほしいこと

 令和4年度においても、学校行事について、感染症予防だけでなく働き方改革と熱中症予防の観点から、時間短縮だけに重点を置いて実施したり、「昨年度やらなかったから、今年度もやらなくていい」などの安易な削減をしたりしている学校もあると聞く。

 各学校においては、自校の子供たちや学校の実態から、子供たちに育みたい資質・能力を明確化した上で、5つの種類の学校行事で育成を目指す資質・能力を明確化し、自校で大切にしたい学校行事やその内容を見直すようにする。各教科等との関連を図るなど、カリキュラム・マネジメントの充実や、各学校行事の学びをつなげることも大切である。

 次に、事前、事後の指導を含めた年間指導計画を作成して学校全体で共通理解を図ることが大切である。学校行事の成果を上げるためには、活動の手順だけではなく、活動の目的や内容を指導し、子供たちが意欲をもって主体的に活動できるようにする。学校行事は単なる思い出づくりではないことから、子供たち自身がめあてを立てて活動に取り組み、振り返りを次の活動や課題解決に生かすことができるようにすることが求められる。

 学校行事の種類によっては、子供たちが一部を分担し、自主的にその運営に当たることができるようにすることも大切である。上学年の子供たちが、学校や下学年のために活動する姿は、下学年にとってあこがれや尊敬につながり、ロールモデルとなる。多様な他者と協働する経験が自己有用感や自己肯定感、学校生活への意欲の向上につながっていく。

 また、ICT端末や「キャリア・パスポート」を活用して振り返りの充実を図り、子供たちが自他のよさや頑張りに気付いたり、その後の生活に生かしたりできるようにすることも大切である。

 これまでと同じようにできないからこそ、創意工夫して学校行事を実践する必要がある。

 学校行事の充実が学校文化を創り、特色ある学校づくりにつながっていくのである。

 

[参考文献]
・文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)、同解説特別活動編

 

 

Profile
安部恭子 あべ・きょうこ
 埼玉県大宮市、さいたま市の小学校教諭、さいたま市教育委員会主任指導主事兼係長、さいたま市立小学校教頭を経て、平成27年4月より文部科学省初等中等教育局教科調査官(併)国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官、令和4年4月より文部科学省初等中等教育局視学官、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導センター生徒指導・特別活動連携推進官(併任)。小学校学習指導要領(平成29年告示)、同解説特別活動編、特別活動指導資料、「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(小学校特別活動)、小学校特別活動映像資料学級活動編を作成。単著に『特別活動で学校を楽しくする45のヒント』(文溪堂)、編著に『「みんなの」学級経営』小学1年〜6年生(東洋館出版社)、『楽しい学校をつくる特別活動』(小学館)がある。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

特集:ニューノーマルの学校行事

おすすめ

教育実践ライブラリVol.3

2022/9 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中