センパイの背中 最高で最強のセンパイ 映画「ビリギャル」モデル 小林さやか
トピック教育課題
2022.04.04
センパイの背中 最高で最強のセンパイ
映画「ビリギャル」モデル
小林さやか
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.5 2022年1月)
学ぶよろこびや面白さを教えてくれたセンパイ
私の人生のセンパイで、誰よりも尊敬していて、私の人生に最も大きな影響を与えた、そして今も与え続けてくれている人は、やっぱり恩師坪田信貴先生(『ビリギャル』の著者)だ。もしあのとき、坪田先生に出会っていなかったら、私の人生、どうなってたかな。まぁ、それはそれで、それなりに楽しかったと思う。気の知れた仲間と慣れ親しんだ故郷で子育てしたりして、それもきっと間違いなく幸せな人生だっただろうなと思う。でも、勉強は一生、しなかっただろうな。学校の先生も、みんな嫌なやつだと勘違いしたままだっただろうし、学校の勉強も実は全部意味があることに、気づけないままだっただろうな。坪田先生が、新しいことを知るよろこびや面白さを、私に教えてくれた。勉強って、暗記でも苦行でも全然なくて、テストのためにだけ覚えるものでもなくて、私自身の人生を大きく拓いてくれる、可能性をでっかくしてくれる、そして、沢山の人に出会わせてくれる魔法みたいなものなんだと、知った。それから15年経った今、私はまだ学び続けているし、たぶん生涯、学び続けると思う。
私は学び続ける
現在33歳だけど、今から初めての留学に挑戦しようと思っている。坪田先生に、「子どもたちにとっての教育を考えるなら、まず君が世界のスタンダードを知っておかなくちゃまずいんじゃない?」と2年前に言われてしまって、「本当にそうだ……」と。先生の言葉はいつもしっかり刺さる。それから15年ぶりに受験勉強を始め、約1年間1日8時間以上英語を勉強し続けた。来年の秋にはアメリカの大学院に入学してまたしっかり学べるように、今もなお準備中だ。
私は、学生の殆どの時間を教育に絶望したまま、大事なことに気づけずに過ごしてしまって、とても後悔している。だから、昔の私みたいに、「は? こんなの勉強してなんの意味があんの?」と言っている子どもたち、学生たちに、1日でもはやく気づいてもらえるように、もっと力をつけて、もっと広く、伝えていきたい。そして私は、学校が大嫌いだったけど、やっぱり公教育の可能性を信じたいと思っている。だから、アメリカでは、日本の学校現場での実践を想定しながら、学習理論をしっかり学び、将来的には学校の先生たちと協働して子どもたちの学びを引き出すサポートができるといいなと思っている。
今度は私が最高で最強のセンパイに
昔はあんなになにかを学ぶことが億劫で逃げ回っていた私が、こんなに学び続けることになるとは、人生は何が起こるかわからない。たった一人の、「わくわくさせてくれる大人」との出会いというのは、子どもたちの人生をがらっと変えてしまう威力がある。だからこそ、大人こそ、学び続けて、知識を、考え方を、常にアップデートし続けることが必須だなぁと感じている。それこそまさに、一番の英才教育だと信じている。子どもたちは、大人を通して社会を見ている。自分が大人になったときのことも、周りの大人を見て想像するものだ。だから究極、世界中の大人が「大人になるって最高! 学ぶって楽しいなぁ! 働くって幸せだなぁ!」と毎日笑っていれば、子どもたちは勝手に勉強するんだろうなぁと思う。そういえば私は、それで勉強したんだった、と最近思い出した。坪田先生に出会って、「こんな面白い大人が存在するんだ……」と感動して、「自分もこんな大人になりてぇ……」と心の底から思ったのだ。次は私が多くの子どもたちにそう思ってもらえるように、しっかり背中を見せていかなくちゃ、と今とても張りきっている。でも、きっと来年、私は泣きながら勉強していると思う。「辛いよぉ、やめたいよぉ、なんでこんな茨の道ばっかり来ちゃうんだよぉ」と、泣きながら愚痴っていると思う。でも、それでも学ぶのをやめないのは、その先にもっと沢山の出会いと、明るい未来と、強くなった自分がいることを、過去の経験で実証済みだからだ。こわいけど、楽しみだ。人生って、面白い。そう思わせてくれた、最高で最強のセンパイ、坪田先生へ。次は私が世界中の子どもたちの最強のセンパイになりますね!
Profile
小林さやか こばやし・さやか
1988年3月生まれ、名古屋市出身。『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴・著)の主人公であるビリギャル本人。高2の夏に小学4年レベル、偏差値30の学力しかなく、教師に「人間のクズ」と呼ばれたことも。その後、1年で偏差値を40上げ、慶應義塾大学に現役で合格。卒業後は、ウェディングプランナーとして仕事をし、その後フリーランスに転身。講演、学生・親向けのイベントやセミナーの企画運営など、幅広い分野で活動中。2019年3月に自身初の著書『キラッキラの君になるためにビリギャル真実の物語』(マガジンハウス)を出版、4月より、教育学の研究のため大学院に進学、21年に修士課程修了。