押さえておきたい 最新「教育法令」トピックス15選

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押さえておきたい 最新「教育法令」トピックス15選 Topics3「無償化」の実態は

トピック教育課題

2021.01.13

押さえておきたい 最新「教育法令」トピックス15選 
Topics3「無償化」の実態は
高校無償化法、大学無償化法

『新教育ライブラリ Premier』Vol.4 2020年11月

教育費自己負担という理不尽

 日本の社会には、「教育はお金のかかるもの」「教育費の確保は自己責任」「教育費は保護者が負担するもの」という観念が広く、根強く残存している。もし教育が自己責任だというなら、自己すなわち児童生徒自身に教育費を負担させるべきだ。しかし、児童生徒には教育費をまかなう経済力はないから、保護者に負担させている。そのため、個々の児童生徒の教育の機会は、保護者の意思と経済力に依存することになる。しかも、子は保護者を選べないから、教育の機会は運命に支配されることになる。こんな理不尽はない。

自己負担原則を温存した高校等就学支援金

 この理不尽を克服するには、教育費の公費負担が必要だ。高等学校については、2010年度から、高等学校等就学支援金の支給に関する法律(高校無償化法)により、公立高校の授業料不徴収と私立高校の就学支援金支給が始まった。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(1979年)には、後期中等教育の無償制導入が定められているが、日本は授業料を徴収し続けるため、30年以上もこの条項の適用留保を国連に申し立ててきた。

 高校無償化法の制定・施行によりやっと国際標準に追いついたとはいえ、同法は「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減」を目的とするもので、高校教育の無償化ではない。教育費の自己負担原則は今も維持されており、標準在学期間(全日制3年、定時制4年)を超えて在学する場合は授業料が徴収されるうえ、2014年度からは所得制限が設けられた。

 高校無償化法は一歩前進と評価してよいかもしれないが、教育費の自己負担原則は依然温存されている。

対象を絞り込んだ「高等教育無償化」

 2019年には大学等における修学の支援に関する法律(大学無償化法)が成立し、2020年度から低所得世帯に属する学生に対して、授業料等の減免と給付型奨学金の支給が始まった。

 両親・本人・中学生の弟か妹の4人世帯で年収が約270万円未満なら、国立大学の初年度学納金約82万円が全額免除となり、私立大学なら約96万円が支給される。さらに、自宅生には年額約35万円、自宅外生には約80万円の給付型奨学金が支給されることになった。

 しかし、4人世帯の場合、約380万円を超えると支援は一切行われない。これには従来授業料減免措置の対象となっていた所得層も含まれ、授業料減免の対象者はこれまでより狭くなったのだ。独立行政法人日本学生支援機構の奨学金を利用する途もあるが、日本の奨学金制度は返済義務を伴うものだから、国際的には学生ローンと見なされている。卒業後、奨学金の返済に苦しむ若者は少なくない。

 「高校無償化」とか「高等教育無償化」といった言葉は踊るが、支援は例外的かつ限定的な措置にすぎず、教育費の確保は依然として保護者の自己責任とされている。小手先の改革ではなく、教育費負担の原理的転換が必要だ。

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