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Leader’s Opinion〜令和時代の経営課題〜 [今月のテーマ]働き方改革のリアル 妹尾昌俊+高野敬三 令和2年度からの教員の働き方改革

NEWトピック教育課題

2020.08.05

Leader’s Opinion〜令和時代の経営課題〜
[今月のテーマ]働き方改革のリアル 妹尾昌俊+高野敬三

令和2年度からの教員の働き方改革

明海大学副学長 
高野敬三

『新教育ライブラリ Premier』Vol.1 2020年5月

 新型コロナウイルスの猛威が全世界を席捲する中、日本では、首相や緊急事態宣言に基づく都道府県知事の要請により、令和2年3月から、特に三密(密閉、密集、密接)の活動が展開される全国の学校では臨時休校が続いている(令和2年4月末日現在)。

給特法の一部を改正する法律の特長

 令和元年12月11日、国は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の一部を改正する法律を公布した。この概要は、次の二つにあった。

① 長期休業期間に休日のまとめ取りを可能にする「一年単位の変形労働時間制の適用」

② 文部科学大臣による「教育職員の業務量の適切な管理等に関する指針」の策定と公表

 そして、上記1の施行日は令和3年4月1日、上記2の施行日を令和2年4月1日と定めた。

 このうち、上記2は、令和2年1月17日に、「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」を告示等として都道府県等教育長宛て通知された。ここでは、中教審答申で示された「勤務時間の上限に関するガイドライン」を法的根拠のある「指針」として示し直した(1か月の時間外在校時間等は45時間以内、1年間は360時間を上限、特別な事情で月100時間未満、年720時間以内)。

 これに加えて、通知の標題にあるように、教育職員の服務を監督する教育委員会が講ずべき措置を明記したことにその特長がある。次に、教育委員会が講ずる措置を以下に列挙する。

① 勤務時間の上限に関する指針を参考に、より実効性を高めるため、学校の教育職員の在校時間の上限等に関する方針を教育委員会規則において定める。併せて、地方議会において勤務時間等に関する条例を整備する。

② 在校時間についてはICT活用やタイムカード等により客観的に計測する。また、その文書等は公文書として管理・保存を適切に行う。校外で職務に従事している時間も、できる限り客観的に計測する。

③ 休憩時間や休日の確保等に関する労働基準法等の規定を遵守する。

④ 在校時間が一定時間を超えた教育職員に医師による面接指導を実施する。また、終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保する。更には、教育職員の心身の健康問題についての相談窓口を設置する。

⑤ 各学校の取組状況を把握して、在校時間の長期化を防ぐための業務分担の見直し等適切な環境整備の取組を実施する。

 また、文部科学大臣が告示した「指針」には、留意事項として、上限はあくまでも上限時間まで業務を行うように推奨したものではなく、真に必要な教育活動を疎かにすることや勤務時間の虚偽報告はあってはならないとした。さらには、持ち帰り業務については行わないことを原則として示している。これも、かなり踏み込んだ内容となっている。

休校期間中の教育委員会・学校、教員の取組

 休校期間中に、文部科学省、教育委員会は民間教育機関などのコンテンツを借りて豊富な教材等を公開しており、学校はこうした教材等を活用した児童生徒の自宅学習を奨励している。また、教育委員会や学校は、いつ再開されるか分からない学校における教育活動のキャッチアップのための教育課程の変更をシミュレーションして、休校期間中の学習の遅れを取り戻すための授業計画を立てている。学校の学期の始期と終期を変更し、本来夏季休業中である8月に授業を行うことも視野に入れているという。

 一方、教育職員に目を向けると、学校の休校期間中は、教員の感染防止のため、基本、在宅勤務やテレワークとなっていて真に必要な教員だけがローテーションなどにより出校している。児童生徒と学校とのICT環境が整っている場合、教員はオンライン授業やオンデマンド授業を実施している。筆者が様々な学校の先生方に聞いたところ、こうした在宅勤務中であっても、教員は児童生徒の心のケアや安否確認のため電話を掛けたり、休業中に与えた課題に関する質問を受け、児童生徒からのフィードバックを評価したりしていて、実は、極めて忙しいという。

学校再開後における教員の働き方改革に関する教育委員会の役割

 どこの都道府県等も条例で教育職員の勤務時間等に関する条例改正を行い、学校の教育職員の在校時間の上限等に関する方針を教育委員会規則で定めたところである。しかしながら、上記、教育委員会が講ずべき措置のうち②から⑤については、学校の休校状態が続いている現在、実行に移されていない。教育職員の在校時間の上限等を方針として定めた以上は、教員には事務作業ではなく、授業に専念させなければならない。今後の学校再開後については、以下の取組を行うことが求められる。

1 中教審答申で求められていた「基本的には学校以外が担うべき業務」については全廃する。また、「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」を厳に精選する。この点が、まだ、甘いという指摘もある。

2 学校再開後に行われる、教育委員会から学校に対する休校中の教育活動等に関する調査報告事項等の依頼を徹底的に縮減する。

3 教育委員会が講ずべき上記②から⑤を遅滞なく実行に移す。

 不幸にして、これまで経験したことのない全国的な学校休校を私たちは経験しているが、このことにより得られた教訓を生かすことが必要である。とりわけ、今回の休校措置により、改めて問い直された教育の手法のうち学校再開後でも活用できるICT等の環境整備が急務である。まさに、新型コロナウイルス禍を、これまでの学校教育の在り方を変える好機として捉え、令和の時代における教員の働き方改革を強力に推進すべきであると考える。

 

Profile
高野敬三(たかの・けいぞう) 昭和29年新潟県生まれ。東京都立京橋高校教諭、東京都教育庁指導部高等学校教育指導課長、都立飛鳥高等学校長、東京都教育庁指導部長、東京都教育監・東京都教職員研修センター所長を歴任。平成27年から明海大学教授(教職課程担当)、平成28年度から現職、平成30年より明海大学外国語学部長、明海大学教職課程センター長、明海大学地域学校教育センター長を兼ねる。「不登校に関する調査研究協力者会議」委員、「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会議」委員、「中央教育審議会教員養成部会」委員(以上、文部科学省)を歴任。

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