新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学 校運営上の工夫について(通知) 2 文科初第222号 令和2年5月1日

トピック教育課題

2020.05.02

「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガ イドライン」等を補足するものとして,最終学年等を優先した休業中の登校 日の設定など学校運営上の工夫についてまとめましたので通知します。

2文科初第222号
令和2年5月1日

各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
附属学校を置く各国公立大学長    殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第12条
第1項の認定を受けた各地方公共団体の長

文部科学省初等中等教育局長
丸 山 洋 司
(印影印刷)

 

新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学
校運営上の工夫について(通知)

 

 これまで,新型コロナウイルス感染症に対応した学校運営の在り方に関しては,「I.新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」(令和2年3月24日付け文部科学事務次官通知別添1)及び「II.新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン(令和2年4月17日改訂版)」(令和2年4月17日付け文部科学事務次官通知別添)(以下「ガイドライン」という。)において示してきましたが,この度,「新型コロナウイルス感染症対策の現状を踏まえた学校教育活動に関する提言」(令和2年5月1日学校における新型コロナウイルス感染症の対策に関する懇談会(以下「懇談会提言」という。)(別添参照)を踏まえ,ガイドラインを補足するものとして学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について下記のとおりまとめましたので,各学校設置者においては,これを参考に取組を進めてくださいますようお願いします。

 各都道府県教育委員会におかれては,所管の学校(高等課程を置く専修学校を含む。以下同じ。)及び域内の市区町村教育委員会に対し,各指定都市教育委員会におかれては,所管の学校に対し,各都道府県知事及び小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては,所轄の学校及び学校法人等に対し,附属学校を置く各国公立大学長におかれては,その管下の学校に対し,厚生労働省社会・援護局におかれては,その所管の高等課程を置く専修学校に対し,周知くださいますようお願いします。

1.本通知の趣旨について

 文部科学省が実施した調査によると,令和2年4月22日時点において,小学校及び中学校では95%,高等学校では97%について臨時休業が実施されている。一方で,懇談会提言によれば,地域によっては「徹底した行動変容の要請」が長期に渡ることも考えられ,臨時休業が長期化した場合,「新型コロナウイルス感染症対策のために小学校,中学校,高等学校等において臨時休業を行う場合の学習の保障等について」(令和2年4月21日付け文部科学省初等中等教育局長通知。以下「学習保障通知」という。)の1で示した児童生徒の学びの保障について懸念が生じることとなる。

 この点は,懇談会提言においても「学校における感染リスクをゼロにするという前提に立つ限り,学校に子供が通うことは困難であり,このような状態が長期間続けば,子供の学びの保障や心身の健康などに関して深刻な問題が生じることとなる。」とされており,「社会全体が,長期間にわたりこの新たなウイルスとともに生きていかなければならないという認識に立ち,その上で,子供の健やかな学びを保障するということとの両立を図るため,学校における感染及びその拡大のリスクを可能な限り低減しつつ段階的に実施可能な教育活動を開始し,その評価をしながら再開に向けての取組を進めていくという考えが重要である」とされている。

 また,「例えば,緊急事態宣言の対象区域は都道府県単位で指定されるが,たとえ区域内であっても地域や生活圏によって感染の状況は異なることから,一律ではなく地域の状況を踏まえて,段階的に学校教育活動を開始していくことも可能である」とされている。

 本通知は,学習保障通知で示した取組に加え,こうした提言を踏まえ,各設置者において可能な限り感染及びその拡大のリスクを低減させながら学校における教育活動を行うことに資するよう,ガイドラインを補足するものとして学校運営上の工夫の在り方を示すものである。

2.最終学年等を優先した休業中の登校日の設定について

(1)分散登校日の設定について
 新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)に基づく緊急事態宣言の対象区域とされるなどに伴い,学校の臨時休業を続けざるを得ない地域においても,ICTを最大限活用しながら,感染症対策を徹底した上で,分散登校(児童生徒を複数のグループに分けた上でそれぞれが限られた時間,日において登校する方法)を行う日を設けることにより,段階的に学校教育活動を再開し,全ての児童生徒が学校において教育を受けられるようにしていくことが重要である。

 このような分散登校を行う際には,進路の指導の配慮が必要な小学校第6学年・中学校第3学年等の最終学年の児童生徒が優先的に学習活動を開始できるよう配慮すること。併せて,最終学年以外の指導においては,教師による対面での学習支援が特に求められる小学校第1学年の児童にも配慮すること。

 登校日については,地域や児童生徒の生活圏の感染状況を踏まえ,学校の全部を休業とした上で任意の登校日を設ける方法や学校の一部を休業とした上で授業日としての登校日を設ける方法が考えられる。

 いずれの場合でも,学校医・学校薬剤師などと連携した学校の保健管理体制を整え,学校関係者に感染者が確認された場合の対応について確認しておくこと。

 なお,高等学校等においても,進学や就職を控えた高等学校第3学年の生徒等に配慮するなど,生徒の発達段階や多様な学校の実態を踏まえつつ,同等の対応を検討すること。

 また,特別支援学校については,指導の際に接触が避けられないことや,重篤化する基礎疾患等を有する児童生徒が多いこと,多くの児童生徒がスクールバス等で一斉に登校すること等の課題を多くの学校が抱えているため,学校教育活動の再開については,児童生徒の障害の種類や程度等を踏まえた慎重な検討が必要であること。

①身体的距離の確保登校の際は,「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」に示した感染症対策を行うほか,必要に応じて学級を複数のグループに分けた上で使用していない教室を活用するなどして,児童生徒の席の間に可能な限り距離を確保し(おおむね1〜2メートル),対面とならないような形で教育活動を行うことが望ましいこと。

 

図:身体的距離を確保した座席配置のイメージ

※咳エチケットを行っていない場合,くしゃみや咳のしぶきは約2mの距離まで届くため,咳エチケットを行った上で,児童生徒同士の距離を1〜2m以上保つように座席を配置する。

 

②分散登校の工夫
 児童生徒数の多い学校にあっては,1に示す身体的距離の確保のため,
・時間帯又は日によって登校の対象とする学年又は学級を順次変える方法
・学級を複数のグループに分けた上で,登校の対象とするグループを順次変える方法
等により分散して登校するなどの工夫が考えられる。(参考資料参照)

③分散登校に伴う子供の居場所づくり
 分散登校に伴い,登校する児童生徒の兄弟姉妹である幼児や低学年の児童が自宅で一人になる場合が生じることも考えられるところであり,担当部局と相談し,地域全体としての子供の居場所づくりに配慮すること。

(2)各教科等の指導における感染症対策について
 各教科等の指導については,以下に掲げるものなど感染症対策を講じてもなお感染の可能性が高い学習活動については行わないこと。
・音楽科における狭い空間や密閉状態での歌唱指導や身体の接触を伴う活動
・家庭科,技術・家庭科における調理等の実習
・体育科,保健体育科における児童生徒が密集する運動や児童生徒が近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い運動
・児童生徒が密集して長時間活動するグループ学習
・運動会や文化祭,学習発表会,修学旅行など児童生徒が密集して長時間活動する学校行事

 なお,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が継続している地域においては,当分の間,上記の学習活動ができない可能性が高いことを踏まえ,指導順序の変更や,教師による適切な事前・事後指導と家庭における学習の組合せによる指導計画の立案など,各教科等の指導計画の見直しを検討し,必要な措置を講じること。

(3)新型コロナウイルスに関する正しい知識の指導
 児童生徒に対して,新型コロナウイルスに関する正しい知識を身に付けるとともに,これらの感染症対策について,児童生徒が感染のリスクを自ら判断し,これを避ける行動をとることができるよう,「新型コロナウイルス感染症の予防」資料等※を活用し,発達段階に応じた指導を行うこと。
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/08060506_00001.htm

(4)学校給食(昼食提供)の工夫について
 学校給食を実施するに当たっては,「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」に示したもののほか,配膳の過程での感染防止のため,可能な限り品数の少ない献立(例えば,主菜と具沢山の汁物等)で適切な栄養摂取ができるようにすることや,可能な場合には給食調理場において弁当容器等に盛り付けて提供することなどの工夫が考えられる。また,それらが困難な場合に,少なくとも配膳を伴わない簡易な給食(パン,牛乳等)を提供することも考えられる。

 なお,学校給食は,衛生管理上の観点から持ち帰りは想定されていないが,児童生徒の食事支援の一つとして,保護者の希望及び衛生管理上の必要事項に係る同意がある場合に,例外的に持ち帰りを実施することも考えられる。

(5)学校図書館の活用について
 学校図書館については,感染症対策を徹底した上で,貸出等を行うことが望ましいことのほか,特に時間帯により休業の対象となる児童生徒が変わる場合において,学校図書館を児童生徒の自習スペースとして活用することも考えられる。

(6)登下校の工夫について
 登下校中については,校門や玄関口等での密集が起こらないよう登下校時間帯を分散させることや,集団登下校を行う場合には密接とならないよう指導することなどの工夫が考えられる。その際,特に通学に不慣れな小学校第1学年の安全に十分注意すること。

(7)出欠の取扱い等について
①学校の全部を休業とする場合学校の全部を休業とする場合,任意の登校日は指導要録上の「授業日数」には含まないものとして取り扱うこと。

 その際,任意の登校日における学習活動について,「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の学習指導について」(令和2年4月10日付け文部科学省初等中等教育局長通知。以下「学習指導通知」という。)の2(2)と同様に,学習評価に反映することができること。なお,登校しなかった児童生徒に対しては,個別に学習指導や学習状況の把握を行うなど,不利益に取り扱われることのないよう配慮すること。

 また,任意の登校日における学習活動について,学習指導通知の4と同様に,一定の要件を満たす場合には,学校の再開後に再度授業において取り扱わないこととすることができること。なお,一部の児童生徒への学習の定着が不十分である場合には,別途,個別に補習を実施する,追加の家庭学習を適切に課すなどの必要な措置を講じること。

②学校の一部を休業とする場合
 学校の一部を休業とする場合,最終学年等の児童生徒を優先させて登校させ,その他の児童生徒は休業とすることなどが考えられるが,児童生徒の出欠の取扱いについては,「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」(平成31年3月29日初等中等教育局長通知)別紙等における考え方を踏まえ,以下のとおりとなる。
・学年の全部を休業とした日数は授業日数には含めない
・学年の一部を休業とした日数は授業日数に含まれ,授業のある児童生徒については出欠を記録するとともに,授業のない児童生徒については「出席停止・忌引等の日数」として記録する

 なお,出欠を記録する際には,学習指導通知の3(2)に示したとおり,やむを得ず学校に登校できない児童生徒への必要な配慮を行うこと。

(8)長期休業期間及び土曜日における登校日の設定等について
 学習指導通知の4では,
・児童生徒が学校に登校できるようになった時点で,可能な限り,令和2年度の教育課程内での補充のための授業や教育課程に位置付けない補習を実施すること,家庭学習を適切に課すこと等の必要な措置を講じること
・その際,例えば,時間割編成の工夫,学校行事の精選,長期休業期間の短縮,土曜日に授業を行うことなどが考えられること
を示している。

 登校日を設ける場合も,必要に応じ,長期休業期間及び土曜日に行うことなどが考えられる。その際,児童生徒の負担が過重とならないように配慮するとともに,各学校の指導体制に見合った日数・時数となっているかなど,教職員の負担が過重とならないように配慮すること。また,週休日である土曜日に登校日を設ける場合には,教職員の勤務日及び勤務時間について,各地方公共団体の条例等に則り,適切に振替を行うことが必要となる。

(9)教職員の出勤について
 教職員の勤務についても基本的な感染症対策を徹底するとともに,体調の悪い教職員が休みやすいような環境づくりを行いつつ,可能な範囲内で,在宅勤務や時差出勤のほか,管理職を含む学校の教職員がローテーションで出勤するなどの勤務形態の工夫を行うこと。

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