絶対満足できる!新しい英語授業

菅正隆

新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第3回]大きく変わる中学校英語! 指導力不足の教師が白日の下に

トピック教育課題

2019.09.23

新教育課程 実践講座Ⅰ
絶対満足できる!新しい英語授業

[第3回]大きく変わる中学校英語!
指導力不足の教師が白日の下に

大阪樟蔭女子大学教授
菅 正隆

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.3 2018年7月

 中学校の学習指導要領が改訂され、2021年度から全面実施されることとなった。世間では、小学校の「外国語活動」や教科「外国語」が注目されているが、実は、中学校の英語が大きく変わることを多くの人は意識していない。従来の訳読中心や文法中心の授業をしてきた先生方にとっては青天の霹靂である。また、全国学力・学習状況調査(以下、「全国学力テスト」)等から指導力不足の教師が白日の下に晒されることになるかもしれない。そこで、どのように中学校の英語が変わるのか、五つに分けて説明する。

1.主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)を取り入れた授業

 従来の教科書本文を日本語に訳す訳読(「薬毒」と私は書く。初めは薬のように役立つが、大量に処方すると毒になることの例え)中心の授業や文法中心の授業では、これから求められる思考力・判断力・表現力の向上にはつながらない。これからは、生徒が、読む・話す・書く活動に積極的に参加し、自ら課題を見付け、自ら課題を解決できる能力や技能を育てることが求められる。そのために、ディスカッションやディベート、グループ・ワークなどを行い、他の生徒から多くのものを学ぶシステムを構築する必要がある。しかし、これらを可能にするためには、確実な基礎基本の定着が必要であることを忘れてはいけない。

 

2.思考力・判断力・表現力を伸ばす授業

 従来は、知識・技能を評価の重要な要素としてきた。そのために、単語や文法などのインプットされたものを量るテストが行われてきた。しかし、これからは、思考力・判断力・表現力が評価の重要なポイントである。入試においても、様々な知識や技能を駆使し、考える力や判断する力を問うテストに変わる。したがって、授業においても、思考する場面や発表する場面などを多く創り出すことが求められる。まさに、コペルニクス的転回である。

 

3.英語で行うことを基本する授業

 現行の高等学校学習指導要領に取り入れられた「授業は英語で」が中学校に降りてきたかたちであ る。50分間、All Englishで行えと言っているのではない。生徒が英語を使う場面を増やすために、英語の環境づくりとして、英語を聞くことに慣れ親しませるためにも、極力英語を使うようにすることが求められている。そのためにも、教師の英語力を磨くことが望まれる。

 

4.全国学力テストに向けた授業改革

 先日、来年に実施される全国学力テストの予備調査(以下、「プレテスト」)が行われた。これを見ると、訳読中心、文法中心では対応できないことがよく分かる。次ページで解説するが、生徒の成績は、授業そのものの結果の表れとなる。さて、どのように対策を練るべきであろうか。

 

5.語彙指導を取り入れた授業

 小学校で取り扱う語彙数は600~700語、それに加えて中学校では1600~1800語。合計すると、中学校卒業段階で2200~2500語を取り扱うことになる。この数は、現行の語彙数に1000~1300語加えた数である。ほぼ今の高校2年生の教科書レベルである。つまり、教科書の内容が難しくなり、新たに語彙指導も授業の重要な部分となる。

全国学力テストのプレテストから、これからのテストの在り方と指導の在り方を考える

1.話すこと

 ここではコンピュータを使用し、聞こえてくる英語や問いかけに、英語で話していく問題である。かつて、私が文部科学省に在籍していた当時、教育課程実施調査で、全国の中学校にコンピュータを送り、ヘッドホーンから聞こえる英語の質問に英語で答え、それを録音して採点していたが、それと同じシステムを取っている。以下は問題の一例である。

 大問2では、まず2人の話を聞いて、その内容を理解して、ナオミからの質問に答えなければならない。このようなことに生徒が慣れているかどうかである。これは明らかに、普段から教師が生徒に英語で質問したり、初めに英文を読み聞かせて、その内容についての質問を英語で尋ねたりするなどのインターラクションを行っていないと解けない問題である。

 また、大問3ができるようにするには、普段から教師がテーマを提示して、グループなどで30秒スピーチや1分間スピーチなどを取り入れておく必要がある。その後に、グループでスピーチ内容についてディスカッションをさせるなどの工夫が必要になる。

 

2.聞くこと

聞くことにおいても、従来のリスニングテストとはいくぶん質的変化が感じられる。つまり、思考することが求められている。例えば以下の問題のとおりである。

 3(放送問題)を解けるようにするには、ある程度の長さの文章を聞くことに慣れておく必要がある。しかも、話者の意向や考えを的確に判断する力も求められる。そのために、普段から、教師がスモールトークや内容のある話を英語で聞かせて、内容を判断させる指導が必要になってくる。

 4(放送問題)では、まず英文を聞き取り、内容を把握した後で、適切に英文を書くことが求められている。したがって、聞くことの問題ではあるが、聞くことと書くこととが融合されている。なかなかこのようなことは授業では行われていないのが実情である。まさに、技能の統合をねらった問題である。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

特集:スクールリーダーのあり方・生き方

リーダーズ・ライブラリVol.3

2018/07 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

菅正隆

菅正隆

大阪樟蔭女子大学教授

岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

閉じる