「知識・技能」を活用したコミュニケーション能力の育成[外国語]〈中学校〉

トピック教育課題

2019.09.19

「知識・技能」を活用したコミュニケーション能力の育成
[外国語]〈中学校〉

大阪樟蔭女子大学 菅 正隆

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.2 2019年6月

外国語科における新しい評価のポイント

 現在、文部科学省においては、2021年度から使用される中学校外国語の教科書の検定作業が行われている。新教科書が使用され始める時と同じくして新学習指導要領が全面実施され、新しい評価観に立った指導及び評価が行われることになる。

〇外国語での評価のポイント

 現行の学習指導要領では、①「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」、②「外国語表現の能力」、③「外国語理解の能力」、④「言語や文化についての知識・理解」の4観点から評価を行っている。ただし、②と③については、「技能」のみではなく、「思考力・判断力・表現力等」も含まれていることが前提となっている。しかし、未だに知識や技能が中心で、生徒の思考力や判断力、表現力が向上されていないとの意見も多く出されている。そこで、新学習指導要領では、大きく評価の観点を変え、①「知識・技能」(~することができる)、②「思考・判断・表現」(~している。~できる)、③「主体的に学習に取り組む態度」(~しようとしている)の三つの観点にまとめられている。①の「知識・技能」は、従来のように評価の中心に置くのではなく、実際にコミュニケーションを図る際の下支えとしての知識・技能として習得されるべきもので、単にこれらを評価するものではない。したがって、評価の軽重を考えれば、②の「思考・判断・表現」を中心に評価していくことが必要になる。これを評価するためには、生徒に基礎的な知識・技能が備わり、それらを基に、コミュニケーションを図る際に、思考しながら判断し、表現しているかどうかを評価することになる。そのために、様々なパフォーマンス活動(スピーチ、プレゼンテーション、ディベート、スキット、作文等)を行い、生徒から表出される表現等を評価していくことになる(パフォーマンス評価)。したがって、いくら単語や表現を知っていたとしても、活用できないのであれば、ただの「宝の持ち腐れ」になってしまう。

主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくりのポイント

 外国語では新しい評価観の考え方から、教師中心の授業から生徒中心の授業に転換することが求められている。一方的な教師側からの講義では、生徒の生きる力や学力を向上させることはもはや期待できない。そこで、取り入れられたのが主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の指導である。これは、外国語の授業では他教科と異なり、普段からペアワークやグループ活動などをふんだんに取り入れ、生徒のコミュニケーション能力を向上させてきた経緯がある。しかし、まだまだパターンプラクティスや暗記に偏り、生徒自身が課題を見つけ、自らその課題を解決するような状況が授業に組み込まれていないのが現状である。そこで、ペアやグループでの活動の中で、生徒同士が「考える場面」「様々な表現を工夫する場面」「意見を闘わせる場面」など、主体的に活動する場面を設定することが必要となる。これらを成功させるためには、あくまでも、基礎・基本としての知識や技能が備わっていないと、ただの発展性のない「ピーチクパーチク」の活動になってしまい、深い学びとはほど遠いものとなる。この点にも注意を払いたいものである。

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特集:評価と指導~全面実施直前・各教科等の取組課題~

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