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トピック教育課題

2019.09.05

小学校学習指導要領

(平成29年3月31日告示)〔抜粋〕

*囲み内は「小学校学習指導要領解説」(平成29年6月)

第1章 総 則

第2 教育課程の編成

4 学校段階等間の接続

 教育課程の編成に当たっては、次の事項に配慮しながら、学校段階等間の接続を図るものとする。

(1)幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより、幼稚園教育要領等に基づく幼児期の教育を通して育まれた資質・能力を踏まえて教育活動を実施し、児童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かうことが可能となるようにすること。

 また、低学年における教育全体において、例えば生活科において育成する自立し生活を豊かにしていくための資質・能力が、他教科等の学習においても生かされるようにするなど、教科等間の関連を積極的に図り、幼児期の教育及び中学年以降の教育との円滑な接続が図られるよう工夫すること。特に、小学校入学当初においては、幼児期において自発的な活動としての遊びを通して育まれてきたことが、各教科等における学習に円滑に接続されるよう、生活科を中心に、合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など、指導の工夫や指導計画の作成を行うこと。

■小学校学習指導要領解説総則編(平成29年6月) 

 本項は、幼稚園教育要領や認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針(以下「幼稚園教育要領等」という。)に基づく幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の重要性を示している。

 小学校低学年は、幼児期の教育を通じて身に付けたことを生かしながら教科等の学びにつなぎ、児童の資質・能力を伸ばしていく時期である。幼稚園教育要領等においては、「知識及び技能の基礎」、「思考力、判断力、表現力等の基礎」、「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力の三つの柱を一体的に育むように努めることや、幼児期の教育を通して資質・能力が育まれている幼児の具体的な姿を幼児期の終わりまでに育ってほしい姿として示している。

 この幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を手掛かりに幼稚園の教師等と子供の成長を共有することを通して、幼児期から児童期への発達の流れを理解することが大切である。

 小学校においては、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより児童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かい、幼児期の教育を通して育まれた資質・能力を更に伸ばしていくことができるようにすることが重要である。

 その際、低学年における学びの特質を踏まえて、自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を育むことを目的としている生活科と各教科等の関連を図るなど、低学年における教育課程全体を見渡して、幼児期の教育及び中学年以降の教育との円滑な接続が図られるように工夫する必要がある。特に、小学校の入学当初においては、幼児期の遊びを通じた総合的な指導を通じて育まれてきたことが、各教科等における学習に円滑に接続されるよう、スタートカリキュラムを児童や学校、地域の実情を踏まえて編成し、その中で、生活科を中心に、合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の編成など、指導の工夫や指導計画の作成を行うことが求められる。

 

第5 学校運営上の留意事項

2 家庭や地域社会との連携及び協働と学校間の連携教育課程の編成及び実施に当たっては、次の事項に配慮するものとする。

ア 学校がその目的を達成するため、学校や地域の実態等に応じ、教育活動の実施に必要な人的又は物的な体制を家庭や地域の人々の協力を得ながら整えるなど、家庭や地域社会との連携及び協働を深めること。また、高齢者や異年齢の子供など、地域における世代を越えた交流の機会を設けること。

イ 他の小学校や、幼稚園、認定こども園、保育所、中学校、高等学校、特別支援学校などとの間の連携や交流を図るとともに、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を設け、共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むようにすること。

第2章 各教科

第1節 国 語

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

(7)低学年においては、第1章総則の第2の4の(1)を踏まえ、他教科等との関連を積極的に図り、指導の効果を高めるようにするとともに、幼稚園教育要領等に示す幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮すること。特に、小学校入学当初においては、生活科を中心とした合科的・関連的な指導や、弾力的な時間割の設定を行うなどの工夫をすること。

[編注]他教科等の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」でも同様の記載がある。

第5節 生 活

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

(4)他教科等との関連を積極的に図り、指導の効果を高め、低学年における教育全体の充実を図り、中学年以降の教育へ円滑に接続できるようにするとともに、幼稚園教育要領等に示す幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮すること。特に、小学校入学当初においては、幼児期における遊びを通した総合的な学びから他教科等における学習に円滑に移行し、主体的に自己を発揮しながら、より自覚的な学びに向かうことが可能となるようにすること。その際、生活科を中心とした合科的・関連的な指導や、弾力的な時間割の設定を行うなどの工夫をすること。

■小学校学習指導要領解説生活編(平成29年6月)

第1章 総 説

2 生活科改訂の趣旨及び要点

(2)改訂の要点

・各教科等との関連を積極的に図り、低学年教育全体の充実を図り、中学年以降の教育に円滑に移行することを明示した。特に、幼児期における遊びを通した総合的な学びから、各教科等における、より自覚的な学びに円滑に移行できるよう、入学当初において、生活科を中心とした合科的・関連的な指導などの工夫(スタートカリキュラム)を行うことを明示した。なお、これまでは国語科、音楽科、図画工作科の各教科において、幼児期の教育との接続及び入学当初における生活科を中心としたスタートカリキュラムについて規定していたが、今回の改訂では、低学年の各教科等(国語科、算数科、音楽科、図画工作科、体育科、特別活動)にも同旨を明記したところである。

第5章 指導計画の作成と学習指導

第2節 生活科における年間指導計画の作成

4 幼児期の教育や中学年以降の学習との関わりを見通すこと

 生活科については、目標や内容を基にして、2学年間を見通した指導計画を立てることが大切である。その際、以下の三つの関わりに配慮することが求められる。

 一つは、スタートカリキュラムをはじめとする幼児期の教育との連携である。二つは、2学年間における児童の発達との関わりである。そして、三つは、第3学年以上の学習との関わりである。

 本解説第4章で述べたように、入学当初をはじめとした低学年の時期において、生活科が中心的な役割を担いつつ、各教科等との合科的・関連的な指導の一層の充実を図ることが求められている。これは、一部に見られるような小学校入学期のみの適応指導を意味しているのではない。幼稚園教育要領に示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を手掛かりに、幼児期の実態を理解し、自覚的な学びとして期待する児童の姿を共有することが出発点となる。指導計画の作成に当たって、遊びを通じた総合的な学びから小学校教育への円滑な接続を図るためには、児童の学習環境についての見直しが必要で、自立に向かうようにすることが大切である。また、低学年の児童の発達は未分化な特徴をもつことから、このような工夫は必ずしも小学校入学当初に限らず、2学年間にわたって積極的に行うことが求められる。この場合、生活科だけの指導計画の作成にとどまらず、低学年における教育の全体を視野に入れて、生活科を柱にした教育課程を創意工夫していくことが必要である。

 幼児期の教育と小学校教育の接続とともに、低学年の2年間における児童の成長や第3学年以上の学習への接続にも留意することが大切である。

 まず、指導計画の作成に当たっては、児童の成長や発達を見通し、2学年間の中で具体的な活動や体験が拡充されるようにすることが大切である。これらのためには、学年による発達の特性に十分留意し、体験や気付きの質が着実に高まるような工夫をすることが求められる。低学年の児童の知的な発達や行動力の伸長は目覚ましく、第1学年と第2学年では、対象への関心の向け方や関わり方にも違いがある。また、学年が進むにつれ、具体的な活動への思いや願いも、情緒的なものから次第に知的なものへと比重が増してくる。したがって、単元を作成するに当たっては、学習対象の選び方や学習活動の構成が変わってくることが考えられる。生活科では、このような2学年間を見通した指導計画を作成することによって、身の回りの対象への見方や考え方を広げ、思考力を伸ばし、気付きの質を高めていくことにつながるようにしていくことが大切である。

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