これからの保幼小連携を読み取る資料
トピック教育課題
2019.09.05
目次
これからの保幼小連携を読み取る資料
(新教育課程ライブラリII Vol.10 2017年10月)
中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」
(平成28年12月21日)〔抜粋〕
第1部 学習指導要領等改訂の基本的な方向性
第6章 何を学ぶか-教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成-
〇 次期学習指導要領等については、資質・能力の三つの柱を骨組みとして、教科等と教育課程全体のつながりや、教育課程と資質・能力の関係を明らかにすることとしている。
これは教育課程について、教えるべき知識や技能の内容に沿って順序立てて整理するのみならず、それらを学ぶことでどのような力が身に付くのかまでを視野に入れたものとするということである。
〇 こうした観点から、学習指導要領の各教科等における教育目標や内容については、第2部に示すとおり、資質・能力の三つの柱を踏まえて再整理し示していくこととしている。これにより、資質・能力の三つの柱を踏まえて、教科等間の横のつながりや、幼小、小中、中高の縦のつながりの見通しを持つことができるようになり、各学校の学校教育目標において育成を目指す資質・能力を、教科等における資質・能力や内容と関連付け、教育課程として具体化していくことが容易となる。
〇 また、幼稚園教育要領においては、幼稚園における生活の全体を通じて総合的に指導するという幼児教育の特質を踏まえ、ねらいや内容をこれまでどおり「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の領域別に示しつつ、資質・能力の三つの柱に沿って内容の見直しを図ることや、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を位置付けることが必要である。こうしたことを踏まえながら、幼児教育と小学校の各教科等における教育との接続の充実や関係性の整理を図っていく必要がある。
第2部 各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性
第1章 各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続
1.幼児教育
(1)現行幼稚園教育要領等の成果と課題
〇 幼稚園教育要領は、これまで「環境を通して行う教育」を基本とし、幼児の自発的な活動としての遊びを中心とした生活を通して、一人一人に応じた総合的な指導を行ってきたところであり、現行幼稚園教育要領では、言葉による伝え合いや幼稚園教育と小学校教育の円滑な接続などについて充実を図り、その趣旨については、国立教育政策研究所の教育課程研究指定校の研究成果等から、おおむね理解されていると考えられる。
〇 一方で、社会状況の変化等による幼児の生活体験の不足等から、基本的な技能等が身に付いていなかったり、幼稚園教育と小学校教育との接続では、子供や教員の交流は進んできているものの、教育課程の接続が十分であるとはいえない状況であったりするなどの課題も見られる。
〇 また、近年、国際的にも忍耐力や自己制御、自尊心といった社会情動的スキルやいわゆる非認知的能力といったものを幼児期に身に付けることが、大人になってからの生活に大きな差を生じさせるという研究成果をはじめ、幼児期における語彙数、多様な運動経験などがその後の学力、運動能力に大きな影響を与えるという調査結果などから、幼児教育の重要性への認識が高まっている。
〇 さらに、平成27年度から「子ども・子育て支援新制度」が実施されたことにより、幼稚園等を通じて全ての子供が健やかに成長するよう、質の高い幼児教育を提供することが一層求められてきている。
〇 このため、前述のような研究成果や調査結果を踏まえつつ、幼稚園のみならず、保育所、認定こども園を含めた全ての施設全体の質の向上を図っていくことが必要となっている。
(3)幼児教育において育みたい資質・能力と幼児期にふさわしい評価の在り方について
①幼児教育における「見方・考え方」
〇 幼児期は、幼児一人一人が異なる家庭環境や生活経験の中で、自分が親しんだ具体的なものを手掛かりにして、自分自身のイメージを形成し、それに基づいて物事を感じ取ったり気付いたりする時期であることから、「見方・考え方」を働かせた学びについても園生活全体を通して、一人一人の違いを受け止めていくことが大切である。
〇 幼児教育における「見方・考え方」は、幼児がそれぞれの発達に即しながら身近な環境に主体的に関わり、心動かされる体験を重ね、遊びが発展し生活が広がる中で、環境との関わり方や意味に気付き、これらを取り込もうとして、諸感覚を働かせながら、試行錯誤したり、思い巡らしたりすることであると整理できる。
〇 また、このような「見方・考え方」は、遊びや生活の中で幼児理解に基づいた教員による意図的、計画的な環境の構成の下で、教員や友達と関わり、様々な体験をすることを通して広がったり、深まったりして、豊かで確かなものとなっていくものである。こういった「見方・考え方」を働かせることが、幼稚園等における学びの中心として重要なものである。
〇 このような「見方・考え方」は、小学校以降において、各教科等の「見方・考え方」の基礎になるものである。
②幼児教育において育みたい資質・能力の整理と、小学校の各教科等との接続の在り方
〇 育成を目指す資質・能力の三つの柱は、「高等学校を卒業する段階で身に付けておくべき力は何か」という観点や、「義務教育を終える段階で身に付けておくべき力は何か」という観点を共有しながら、各学校段階の各教科等において、系統的に示されなければならないこととされている。
〇 幼児教育においては、幼児期の特性から、この時期に育みたい資質・能力は、小学校以降のような、いわゆる教科指導で育むのではなく、幼児の自発的な活動である遊びや生活の中で、感性を働かせてよさや美しさを感じ取ったり、不思議さに気付いたり、できるようになったことなどを使いながら、試したり、いろいろな方法を工夫したりすることなどを通じて育むことが重要である。このため、資質・能力の三つの柱を幼児教育の特質を踏まえ、より具体化すると、以下のように整理される。
①「知識・技能の基礎」(遊びや生活の中で、豊かな体験を通じて、何を感じたり、何に気付いたり、何が分かったり、何ができるようになるのか)
②「思考力・判断力・表現力等の基礎」(遊びや生活の中で、気付いたこと、できるようになったことなども使いながら、どう考えたり、試したり、工夫したり、表現したりするか)
③「学びに向かう力・人間性等」(心情、意欲、態度が育つ中で、いかによりよい生活を営むか)
〇 これらの資質・能力は、現行の幼稚園教育要領等の5領域の枠組みにおいても育んでいくことが可能であると考えられることから、幼稚園教育要領等の5領域は引き続き、維持することとする。なお、幼児教育の特質から、幼児教育において育みたい資質・能力は、個別に取り出して身に付けさせるものではなく、遊びを通しての総合的な指導を行う中で、「知識・技能の基礎」、「思考力・判断力・表現力等の基礎」、「学びに向かう力・人間性等」を一体的に育んでいくことが重要である。
(別添1を参照)