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トピック教育課題

2019.09.11

幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)[抜粋]

平成28年12月21日 中央教育審議会

第1部学習指導要領等改訂の基本的な方向性

第5章 何ができるようになるか -育成を目指す資質・能力-

6 資質・能力の育成と、子供たちの発達や成長のつながり
(一人一人の発達や成長をつなぐ視点)

〇 例えば、資質・能力の三つの柱など、育成を目指す資質・能力についての基本的な考え方を、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校において共有することで、子供の障害の状態や発達の段階に応じた組織的、継続的な支援が可能となり、一人一人の子供に応じた指導の一層の充実が促されていくと考えられる。こうした方向性は、障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、子供たちの十分な学びを確保し、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくためにも重要である。

第8章 子供一人一人の発達をどのように支援するか -子供の発達を踏まえた指導-

5 教育課程全体を通じたインクルーシブ教育システムの構築を目指す特別支援教育

〇 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくためには、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校において、子供たちの十分な学びを確保し、一人一人の子供の障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させていく必要がある。

〇 その際、小・中学校と特別支援学校との間での柔軟な転学や、中学校から特別支援学校高等部への進学などの可能性も含め、教育課程の連続性を十分に考慮し、子供の障害の状態や発達の段階に応じた組織的・継続的な指導や支援を可能としていくことが必要である。

〇 そのためには、特別支援教育に関する教育課程の枠組みを、全ての教職員が理解できるよう、小・中・高等学校の各学習指導要領の総則において、通級による指導や特別支援学級(小・中学校のみ)における教育課程編成の基本的な考え方を示していくことが求められる。また、幼・小・中・高等学校の通常の学級においても、発達障害を含む障害のある子供が在籍している可能性があることを前提に、全ての教科等において、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援ができるよう、障害種別の指導の工夫のみならず、各教科等の学びの過程において考えられる困難さに対する指導の工夫の意図、手立ての例を具体的に示していくことが必要である。

〇 また、通級による指導を受ける児童生徒及び特別支援学級に在籍する児童生徒については、一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援が組織的・継続的に行われるよう、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を全員作成することが適当である。

〇 加えて、平成30年度から制度化される高等学校における通級による指導については、単位認定の在り方など制度の実施にあたり必要な事項を示すことが必要である。また、実施に向けて円滑に準備が進められるよう、校内体制及び関係機関との連携体制、各教科等の指導を行う教員との連携の在り方、通級による指導に関する指導内容や指導方法などの実践例を紹介することが求められる。

〇 障害者理解や交流及び共同学習については、グローバル化など社会の急激な変化の中で、多様な人々が共に生きる社会の実現を目指し、一人一人が、多様性を尊重し、協働して生活していくことができるよう、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」と関連付けながら、学校の教育活動全体での一層の推進を図ることが求められる。さらに、学校の教育課程上としての学習活動にとどまらず、地域社会との交流の中で、障害のある子供たちが地域社会の構成員であることをお互いが学ぶという、地域社会の中での交流及び共同学習の推進を図る必要がある。

第10章 実施するために何が必要か -学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策-

2 学習指導要領等の実施に必要な諸条件の整備

〇 また、複雑化・多様化する学校の課題に対して、「チームとしての学校」の視点から対応していくため、例えば特別支援教育など学校教育を取り巻く共通的な課題や社会的な課題をテーマとした校内研修を通じてこれらに関する問題意識を共有し、個々の教員の資質向上を図ることも有効と考えられる。

第2部 各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性

第1章 各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続

5 特別支援学校

(3)特別支援教育の改善・充実を支える方策

①教員の専門性向上
(特別支援学校教員)

・障害の多様化や重度・重複化への対応、特別支援学校のセンター的機能を発揮するための地域における小・中学校等との効果的な連携手法等に関する知識を身に付けるための、専門的な研修の充実が期待される。

・教育職員免許法附則第16項の廃止も見据え、平成32年度までの間に、おおむね全ての特別支援学校の教員が特別支援学校教諭免許状を所持することを目指し、国が必要な支援を行う必要がある。

②学校の指導体制

〇 特別支援教育コーディネーターについては、障害の多様化や重度・重複化への対応、地域における他の学校、関係機関との効果的な連携が求められてきており、特別支援教育コーディネーターの役割を分かりやすく整理し示すとともに、その専門性を高めるための研修等の充実等を図ることが求められる。

〇 特別支援教育コーディネーター、通級による指導の担当教員など、各学校において特別支援教育に対応するための教員定数等の改善が求められる。

〇 特に、特別支援教育コーディネーターは、各学校において、校内委員会、校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口等の役割を担うなど、特別支援教育推進に向けた多岐にわたる校務の中核を担っている。

〇 また、特別支援学校における特別支援教育コーディネーターは、校内における取組だけでなく、例えば、小・中学校等に在籍する児童生徒に対する巡回による指導を行ったり、特別支援学校の教員の専門性を活用しながら教育相談を行ったりするなど、域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)の中で、コーディネーターとしての機能を発揮していくことが求められる。

〇 このような特別支援教育コーディネーターの役割の重要性を踏まえ、各学校に計画的に育成・配置されていくことが必要である。

③家庭や地域、関係機関等との一層の連携

〇 教育課程の編成に当たっては「社会に開かれた教育課程」の観点から、各教科等や自立活動の指導の場面でも、家庭や地域、専門家や支援団体等の関係機関等との連携・協力が求められる。

〇 障害のある子供たちへの指導や支援に当たり、医療や福祉等の関係機関との連携は不可欠であり、これらを担当する行政機関等との連携・協力が一層求められる。

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