学校改革の新定石Ⅱ

西留安雄

学校改革の新定石Ⅱ[第6回]保護者目線

トピック教育課題

2019.08.23

学校改革の新定石Ⅱ
[第6回]保護者目線

新教育課程ライブラリII Vol.6 2017年6月

 教職員の保護者や子供への接し方についての細かい取り決めがない。ありそうでないのが学校の現状だ。それは、教職員一人一人に委ねられているからだ。学校は他の組織とは違うという考え方もある。だが、細かい取り決めの上に動くのは学校も他の組織も同じはずだ。かつての勤務校では、OJTノートを作成し、社会の常識に合わせた動き方を教職員に学ばせていた。特に、保護者目線で学校を観ることを教職員に指導してきた。

学校公開・保護者会の確認事項

 時間割通りに授業公開を行うことが当たり前と考え、テストや体験学習を参観させる教師がいた。こうした考え方は通用するだろうか。保護者は、学校へ子供の様子を見に来校される。テストの場面を見に来るのではない。そこで公開の指針を作成しておくとよい。

 かつての勤務校では次のような指針を規定していた。①研究指定を受けている内容(言語スキル)を公開する、②1日3教科以上を公開し、教科の授業を参観していただく、③テスト時間の公開は行わない、④特別な発表(全時間、総合・生活科の授業等)は行わない、⑤教室を主として使用する、⑥研究指定校であるので全国の教師が来校し参観する日であることを意識する、⑦親子レク、スポーツ大会、お楽しみ会に類する学級活動は行わない(授業カットとなる)、⑧学校公開のためのアンケート用紙を用意する、⑨各学級の入り口に時間割表を掲示し出席表を置く、⑩学年保護者会は、原則として行わない、⑪保護者会の時間は短い時間とする、⑫保護者会用の資料を用意する、⑬担任は清掃をして保護者を迎える、⑭保護者から出された要望は、職員間のワークショップで共有する、⑮副校長に保護者の参加人数を報告する、⑯初任者には、副担任が付く。

三者面談(弱点克服面談)

 働く保護者が増えている現状を考えると、家庭訪問より三者面談がよい。かつての勤務校は、夏期休業日の早い時期に三者面談を設定し、弱点克服箇所を説明した。ひと夏で課題解決を図らせることがねらいであった。そこで、次の3点を教師間で共有した。①観念的な説明ではなく具体的な資料をもとに説明を行う、②夏季休業中の具体的なめあてを7月上旬までに子供に立てさせて教師の指導を加える、③三者面談で話し合われたことがそれ以降の学校生活で達成できたかどうかを継続的に評価をする。

 なお、全教師が次のような資料を揃え、子供や保護者に助言を行った。①「あゆみ」(通知表)、②ドリルがんばり表、③各教科・総合的な学習等の学習状況(専科、教科担任からの情報も含む。ノートや作品等で具体的に示す)、④係や当番の活動状況、⑤夏季休業中の具体的なめあて(例、サマースクールに10回以上参加して、漢字を身につけるぞ!)、⑥第6学年は、全国学力・学習状況調査の結果の説明、⑦「すばらしい、すばらしい」と褒めるような言葉だけを言わない、⑧保護者からの要望をメモする、⑨教室の清掃を担任が行い保護者を迎える、等だ。資料を用意することを全教師で共有することができたため、質の高い面談を行うことができた。

家庭訪問

 子供がどのような家庭環境の中で育っているかを見るよい機会と捉え、家庭訪問を実施する学校がある。この学校側の論理が保護者に通じるだろうか。かつての勤務校で家庭訪問を実施するかどうかのアンケートを行った。9割以上の保護者が「必要ない」という意向を示した。「家庭訪問がなくも、個人面談等で話し合いはできる」「仕事を休まなくてはならない」等の理由を挙げていた。そこで、保護者の願いに応えたいと考え即座に中止した。なお、どうしても必要な場合は、夏休みに実施するよう担任に指導した。家庭訪問による授業カットは、学力向上のハードルにもなる。一度見直すことをお勧めする。

研究授業、研究協議会(授業反省会)

 校内研究は、教師のための重要な機会だ。だが、子供や保護者にとっては、関係のないことだ。だから実施に当たっては迷惑をかけてはならない。

 かつての勤務校は、年間60回以上の研究授業を行う学校であった。そうした中でも「授業カットをしない」「子供の早帰りはなし」を貫いた。研究授業は、水曜日の6校時(通常は5校時で下校)に該当学級だけプラス1時間増の時数の中で実施した。7校時に研究授業を行う場合もあった。研究協議会(反省会)は、30分以内のワークショップで終えた。時間がない場合は、10分で終える場合もあった。要は限られた時間内で終えるように工夫したことだ。長時間、研究協議会を行っても効果があるかどうかを疑問に感じたので、自校では短時間で実践した。この例を参考に各機関で検討していただきたい。

会合のお知らせ

 保護者に出席していただく個人面談や会合は、早め早めにお知らせするとよい。働く保護者は、学校の会合のための休暇申請を3か月前に出す方もいる。かつての勤務校では、7月の保護者面談日を4月には決定していた。学校や教師の都合で直前や1か月前にお知らせすることはほとんどなかった。保護者からは喜ばれていたと思う。

 保護者が多忙になっている現実を考えれば、保護者に寄り添う行事や会合等にすることだ。学校の都合や、以前からやっていたことだからというだけで行事や会合を行ってはならない。一度立ち止まり保護者目線で見直すと保護者や子供の信頼を得ると思う。

 

Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる!学力向上の処方箋』など。新刊『アクティブな学びを起こす授業改革』が好評刊行中

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清瀬富士見幼稚園長

東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。

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