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算数の教科指導の価値を資質・能力から問い直す [算数]〈小学校〉 齊藤一弥(横浜市立六浦南小学校長)

NEWトピック教育課題

2019.05.22

『新教育課程ライブラリ』Vol.12 2016年

算数科指導の改善のポイント

 昨年8月の中教審教育課程企画特別部会の論点整理にも示されているように、今回の基準改訂では、子供たちを近未来のよき問題解決者に育てていくために必要な算数科ならではの資質・能力が明確にされた。まず、活用可能に活性化し、体系化された知識・技能、それを活用して未知の文脈でも課題解決を推し進める算数ならではの思考力・判断力・表現力等、そして、この二つの力を活躍させて問題解決に自ら立ち向かい、粘り強く学び進もうとする姿勢および態度の三つである。新学習指導要領では、この三つの柱で示された資質・能力の育成に向けて、数学的な見方・考え方を働かせた数学的な活動を充実させていくことが強調されるであろう。これまでの内容ベイスでの算数科の指導観を転換し、資質・能力ベイスで算数科指導の価値をとらえ直し、質の高い算数科の問題解決学習の実現を目指そうとしているのである。

 特に、算数科の学習過程と育成する資質・能力との関係を明確にするために、これまでの算数的活動を発展・充実させて「数学的な活動」と中学校・高等学校のそれと名称を統一して、算数科らしい問題解決の実現を目指そうとしている。

 また、今回の改訂では、算数科・数学科の系統性の強い教科特性を踏まえて、幼児教育をスタートとして小学校、中学校、そして高等学校教育における育成すべき資質・能力および教科目標が一貫性や連続性が担保されて示された。今後、これらを丁寧に分析しながら資質・能力ベイスでのカリキュラム編成を進めていくことも必要になってくる。


「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」より

算数科の特性に応じた「見方・考え方」

 新学習指導要領では、資質・能力ベイスによる基準およびアクティブ・ラーニングの重視といった改訂のねらいを実現するために、全教科等において「教科の総括目標」「知識・技能に関する目標」「思考力・判断力・表現力等に関する目標」「学びに向かう力・人間性に関する目標」の四つで目標が示されるが、算数科の総括目標には、資質・能力の育成に向けて「数学的な見方・考え方」を働かせた数学的な活動を推進することが明記された。

 「数学的な見方・考え方」については、算数・数学ワーキンググループにおいて、事象を数量や図形およびそれらの関係などに着目してとらえることを算数科ならではの特徴的な見方とし、また、根拠を基に筋道立てて考え、統合的・発展的に考えるという思考の枠組みを算数科の考え方として整理され、これらを働かせた数学的活動を組織することを重視するとした。「数学的な見方」として、着目する視点として数学的な概念やきまり、特徴や関係、構造などが例示されており、それらに着目することで児童が主体的に問題解決に取り組むことが可能になる。また、「数学的な考え方」として、論理的に考える、統合的・発展的に考える、さらには関係や対応を考えるなど算数科で大切にすべき思考の仕方が例示されており、これらの思考を重視していくことで数学的活動の質的向上を目指していくことになる。これまでの算数教育において使用されてきた「数学的な見方・考え方」とは異なる視点であり、今後、その差異を丁寧に確認しながら算数の授業づくりを進めていく必要がある。


算数・数学ワーキンググループ第6回配付資料より

算数科の授業づくりに求められること

 まず、三つの柱の資質・能力の育成に向けた資質・能力ベイスの授業では、学習のまとめを変えていく必要がある。内容ベイスの授業では、何を知っているか、または何ができるかが学習のまとめに位置付くことが多かったが、それらをいかに使えるようになったのか、さらには使うことで新たにできるようになったことを明確にしていく必要がある。このように学習のまとめが変わるということは、授業の入口の課題やめあての見直しも求められてくるであろう。

 次に、問題解決学習の質的転換、つまり数学的活動を充実させることである。そのためには、教師が児童と問題解決のコンテクストを生起することが大切になる。「数学的な見方・考え方」を働かせる必然や数学的活動の方向を自覚するとともに、それによって得た知見の価値を実感するためにもコンテクストを丁寧に描くことが必要である。

 さらに、算数科としてオーセンティックな学習場面を設定することや「数学的な見方・考え方」を明示的に繰り返して指導することも求められる。それらによって、児童が自分事として算数という文化を創造したり、算数で学び得たことで自らの姿勢や構えをよりよくしたりすることになるが、これらもこれからの算数の教科指導が目指す価値として極めて大切なことと言える。

 

横浜市立六浦南小学校長
齊藤一弥
Profile
さいとう・かずや 東京生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。平成15年から横浜市教育委員会事務局。授業改善支援課首席指導主事、指導部指導主事室室長として横浜版学習指導要領策定、横浜型小中一貫教育推進にあたる。平成24年より横浜市立小学校長。現在、中央教育審議会教育課程部会算数・数学ワーキンググループ委員。

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特集:見えてきた新学習指導要領─各教科等の検討内容

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