直言 SDGs×学校経営 ~ニューノーマル時代のビジョンと実践~ [第5回]SDGsが自分ごとになっていますか?

トピック教育課題

2023.03.27

直言 SDGs×学校経営 ~ニューノーマル時代のビジョンと実践~
[第5回]SDGsが自分ごとになっていますか?

学校法人湘南学園学園長 
住田昌治

『教育実践ライブラリ』Vol.5 2023年1

SDGsが大切にしていること

 「どうすれば我々の社会を安心・安全にし、住みよい世界に変えることができるのだろうか?」

 2023年を迎えた今、世界中の多くの人が考えていることだと思います。戦争が始まってしまえば、終わらせることは難しいですし、自らの命は自らが守らなければなりません。自然を破壊してしまえば、もはや元には戻りませんし、その影響や被害は世界の多くの人に及びます。気候が変わってしまえば、災害が増えますが、荒れる自然に対して、打つ手はなく、抗うことなく適応していくほかありません。SDGsで大切にしていることは、「誰一人取り残さない世界をつくる決意」です。今こそ、自分自身および自分たちの幸せを実現するのは勿論のこと、国や世界、80億人の幸せを願い、すべての人が自分にできることを考える「自分ごと」にして行動を起こすことが求められています。

 なぜ今、持続可能性が話題になっているのか、こんなにSDGs達成に向けた取組が盛んに行われているのか、小学校の教科書にまで登場するようになったのか、考えてみる必要があります。持続可能性の問題は、突然始まったわけではありません。ずっと昔から、次の世代に自然や資源、文化や経済などを繋いでいくために世界中で持続可能性の教えが引き継がれてきました。では、なぜ今、こんなに騒がれているのでしょう。それは、「もう限界が来ている」「今何もしなければ手遅れになる、タイムリミットが来ている」からです。「我々は、すべての人々のためによりよい未来をつくる決意をする」「我々は、貧困を終わらせることに成功する最初の世代になり得る」「同様に、地球を救うチャンスを持つ最後の世代にもなるかもしれない」とも言われています。

 私たちは、2015年に国連で決議されたSDGsを、持続可能な社会創りという視点から自分ごととして捉え、考え、試行錯誤しながら行動していかなくてはなりません。そして、2002年に国連で決議されて世界で取り組むことになったESDは、地球社会を持続不可能にしつつある価値観や行動、ライフスタイルに影響を与えてきた旧来の教育の在り方自体を変えていくことだと言われてきました。

 SDGsは、もうすぐ半ばを迎えます。時々SDGs/ESDをテーマにした研修会や講演会をすることがありますが、こんな質問をすることがあります。「SDGsは2030年までに達成できると思いますか?」皆さんは、どのように答えられるでしょうか? これまで、校長、教頭、教職員、経営者……様々な大人に聞きましたが、皆さん無言でした。小学生に聞かれた時も、同じ答えをしますか? 小学生には「SDGsを達成するために自分にできることを考えて行動しましょう」と教えている先生は、どのようにお考えでしょう。子どもに「先生は、SDGs達成に向けて何かやっているんですか?」と聞かれたら、何と答えるのでしょう。大人は「どうせ無理」と決めつけて動き出していない人が多いのかもしれません。「SDGs/ESD? ああいうのは嫌なんだよね」と、いまだに言っている先生もいますが、「SDGs/ESDをやらない」選択肢は、もうないのです。

 「何かを始めるのに大人になるまで待たなくていい」と、多くの若者が立ち上がり、子どもたちも一緒に動き始めています。私は、長年ESDに関わってきましたので、そんな若者の話を聴く中で、その考え方と行動力に感銘を受け、若者から学ぶことが多くありました。SDGsは、年齢に関係なくパートナーシップで実現していくものでもあります。お互いをリスペクトし合い、話し合い、共に課題解決に向けて行動を起こすことが肝要です。

 若者たち、子どもたちは言います。「一人一人が行動を変えればまだ人類の未来は救えるかもしれない。まずは自分が変わるということ。SDGsはそれを私たちに呼び掛けている」。

 昨年度、学校法人湘南学園小学校4年生と環境活動家でラッパーの神澤清さんが、協賛企業の協力を得て作り、YouTubeで発信した「未来への風」の歌詞には、素敵な言葉がちりばめられています。この歌詞は、子どもたちが活動してきた中で感じたこと考えたことを言葉にして繋いだものです。コロナ禍で、子どもたちが参加して作品に仕上げることは大変なことだったと思いますが、大人社会に大きな影響を与えました。

 今、学校経営においても、学校教育においても、若者、子どもたちの声に耳を傾け、子どもたちの意見を取り入れていくことがSDGs達成には欠かせないのです。持続可能な社会は、持続可能な学校から、そして、子どもたちの参画によって強靭なものになるのです。「未来への風」のミュージックビデオは、下のQRコードを読みとってYouTubeでご覧ください。

「未来への風」Kiyoshi Kanzawa(with湘南学園小学校)

 ねえ先生なんで?尋ねてみる 笑ってたはずの海が泣いてる 原っぱに咲いてた花 地球の声僕に語りかけた 閉じた教科書飛び出た教室 今日は怖いけど勇気出し前を見る 見えない怪獣燃える町中 ゴミで埋まっちゃいそうな世界地図 目の前に立つ黒い波が 大きく見えてしまってたんだ 七夕サンタに神様 願っても叶わなかったんなら 今君と動くのさ 手と手繋いで希望が見えたら “また今度”ってなカラクリを越えて大人になるのも待たずにいこう

 未来に向かって吹かしてく風 どこまでも遠くへ遠く 未来の先の先まで届けよう

 未来の海もどこまでも青く光るように 本気で叫んでる人たちの声を聞いて

 僕は今何を思う? 正義ばかりじゃないこの世の中で 平和思う気持ち子どものまま

 この世界で一番の教科書は just do itで動く大人の背中

 集合だ嵐を巻き起こせ! 小さな愛こそが台風の目 鏡の自分指さす革命

 痛いけど見つめる 自分の弱さと可能性 まだこの星を守れるなら

 Ah 今何が出来るのかな? 1人じゃない この風はあなたの元に届きましたか?

 未来に向かって吹かしてく風 どこまでも遠くへ遠く 未来の先の先まで届けよう

 100年後の歴史の教科書 あれは確か令和の初期のころ 立ち上がり出す世界の若者

 先走る大人たちとの共創 海と森は輝き取り戻し 他の生き物たちとも笑い合い

 未来への風はここまで届きスペシャルで普通の日が続くように

 

 

Profile
住田昌治 すみた・まさはる
 学校法人湘南学園学園長。島根県浜田市出身。2010〜2017年度横浜市立永田台小学校校長。2018〜2021年度横浜市立日枝小学校校長。2022年度より現職。ホールスクールアプローチでESD/SDGsを推進。「円たくん」開発者。ユネスコスクールやESD・SDGsの他、学校組織マネジメント・リーダーシップや働き方等の研修講師や講演を行い、カラフルで元気な学校づくり、自律自走する組織づくりで知られる。日本持続発展教育(ESD)推進フォーラム理事、日本国際理解教育学会会員、かながわユネスコスクールネットワーク会長、埼玉県所沢市ESD調査研究協議会指導者、横浜市ESD推進協議会アドバイザー、オンライン「みらい塾」講師。著書に『カラフルな学校づくり〜ESD実践と校長マインド〜』(学文社、2019)、『「任せる」マネジメント』(学陽書房、2020)、『若手が育つ指示ゼロ学校づくり』(明治図書、2022)。共著『校長の覚悟』『ポスト・コロナの学校を描く』(ともに教育開発研究所、2020)、『ポストコロナ時代の新たな学校づくり』(学事出版、2020)、『できるミドルリーダーの育て方』(学陽書房、2022)、『教育実践ライブラリ』連載、日本教育新聞連載他、多くの教育雑誌や新聞等で記事掲載。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

特集:評価から考える子ども自らが伸びる学び

おすすめ

教育実践ライブラリVol.5

2023/1 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中