教師生活が楽しくラクになる魔法の作戦本部 [第1回] 異動先の相性の悪い同僚に、無理して合わせなくてOK
トピック教育課題
2022.08.05
教師生活が楽しくラクになる魔法の作戦本部
[第1回] 異動先の相性の悪い同僚に、無理して合わせなくてOK
明治大学教授
諸富祥彦
「教師を支える会」の経験から
こんにちは。諸富祥彦といいます。明治大学教授で、学校カウンセリングや臨床心理学が専門です。心理カウンセラーの実務家でもあり、23年ほど、中学や高校のスクールカウンセラーをしています。また、1999年から、「教師を支える会」というサポートグループを月に1回ほど開催し続けています。
今回から6回にわたって、これまでお聞きしてきた教師のみなさんの悩みをもとに、みなさんが教師という仕事を、楽しんで続けていくための心得のようなことをお話ししたいと思います。
今この原稿を書いているのは4月の末、まだ新年度が始まって間もない、あわただしいシーズンです。
この時期の先生方の定番の悩みの一つがこれ。「新しい学校に異動になりました。異動した先の学校で、どうもうまく人間関係がつくれません。毎日、学校に行くのがおっくうで、おっくうで……」というものです。
聞けば、「私、子どもの頃から、あまりよく知らない人と関係をつくるのが苦手だったんです。クラス替えのたびに、友だちづくりがうまくいかずに、学校がつらくなっていました。新しい担任に慣れるのにも時間がかかって……。一度、不登校になりかけたこともあります」とおっしゃいます。
「だから私、教員になっても、異動がとても苦手なんです。いっぺんにたくさんの同僚に囲まれて緊張するし、管理職の先生と親しくなるのにも、時間がかかります。けれども今回は特に……同じ学年に、やたらと内面に踏み込んでくる15歳年上の男性の先生がいて、ことあるごとに、『先生は、どうしてそうされるんですか?』とたずねてくるんです。いちいち相手をするのに、すごく疲れてしまって……。生徒たちは可愛いんですけど、その男性教員とうまくやっていく自信がありません。もう疲れちゃって……」というのです。
みなさんも、ありませんでしたか? これと似たこと。異動先、「どうも苦手な先生」がいて、どうかかわっていけばいいか、困ってしまったことです。
無理して相手に合わせなくていい
私からのアドバイスは「無理して相手に合わせる必要はない」です。このタイプの方は、こちらが調子を合わせると、ますます無神経にこちらに寄ってきます。
「すみません。今、〇〇が忙しくて、お話ししている余裕がなくて……」と伝えて、うまく「距離」を取りましょう。繰り返していると、そのうち、相手もあまりかまってほしがらないようになるでしょう。
「同僚同士、みなで仲良くしなければ」などと思わないこと。もちろん仲良くなれればそれにこしたことはありませんが、中には「無理な人」がいます。素っ気ない態度を取り続けることで自然と「距離」をつくっていきましょう。それでいいのです。
Profile
諸富祥彦 もろとみ・よしひこ
明治大学文学部教授。教育学博士。日本トランスパーソナル学会会長、日本教育カウンセラー協会理事、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事。気づきと学びの心理学研究会アウエアネスにおいて年に7回、カウンセリングのワークショップ(体験的研修会)を行っている。教師を支える会代表、現場教師の作戦参謀。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラー、ガイダンスカウンセラー、カウンセリング心理士スーパーバイザー、学校心理士スーパーバイザーなどの資格を持つ。単著に『教師が使えるカウンセリングテクニック80』(図書文化社)、『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)ほか多数。テレビ・ラジオ出演多数。ホームページ:https://morotomi.net/を参照。『速解チャート付き 教師とSCのためのカウンセリング・テクニック』全5巻(ぎょうせい)好評販売中。