玉置崇の教育放談 [第1回] 「どうですか?」「いいで~す!」の教室文化への疑問

トピック教育課題

2022.08.09

玉置崇の教育放談
[第1回] 「どうですか?」「いいで~す!」の教室文化への疑問

岐阜聖徳学園大学教授 
玉置 崇


『教育実践ライブラリ』Vol.1 2022年5

「どうですか?」「いいで〜す!」という教室文化

 小学校の授業で見られる光景です。

 発言の最後に「どうですか?」と付け加えることがルールになっている教室はありませんか。これに呼応して、全員で「いいで〜す!」と応えることが日常化している学級はありませんか。

 授業について指導助言を求められる立場ですので、年間、かなりの数の授業を参観しています。その中で、未だにこのような教室に出合うことがあるのです。皆さんの勤め先の学校ではどうでしょうか。

 一見、全員が授業に参加していて、とても活発で良い授業のように見えます。級友の「どうですか?」に対して、全員が授業に集中していて声を揃えて反応するわけですから、理想的だと考えて、自分の学級でもこのような状況にしたいと思う教師がいるようです。

 しかし、はたして本当に良い状況なのでしょうか。

 「いいで~す!」と声を出している子どもたちからは、発言へ同意の気持ちがほとんど感じられません。合言葉の一つだと思っている子どもが多いように思うのです。他ごとをしながら、みんなと合わせて「いいで〜す!」と声を出している子どもがいます。発言が終わるやいなや、挙手をして「いいで〜す!」と言っている子どもがいます。そこには、級友の発言をつなげていこうなどといった意思は見られません。決まりだから声を出しているだけなのだと感じます。

 はたして、こうした教室では、正しい言語活動がされているでしょうか。私には、一人一人の考えを大切にした学級づくりがされているとは思えないのです。

 こうした教室文化が見られた学校での講演では、学級を特定することはしませんが、先生方に、「どうですか?」「いいで〜す!」作法について疑問を呈することにしています。

 「職員会議で教頭先生からの『どうですか?』という問いかけに、先生方が一斉に『いいで〜す!』と言われますか。このようなことをしたら、『人を馬鹿にするな!』と思われることでしょう。社会でやらないことは学校でもやらない方がいいと思うのです」

 このように伝えています。

不適切な教室文化を排除したい悩みに応える

 上記の講演後、私のところへ初任教員が相談にやってきました。小学2年生の担任です。次のような悩みがあっての相談です。

 「先生の『どうですか?』『いいで〜す!』という教室文化はおかしいというご指摘は、とても納得しています。しかし、先生がご覧になられたように私の学級は、まさにそのとおりなのです。4月早々の授業から、あのような教室文化なのです。

 私自身、これはおかしいと思いながら、この時期まで来てしまいました。1年生のときの担任の先生があのような指導をされていて、子どもたちにすっかり定着しているのです。明日からでも止めたいと思うのですが、1年生のときの担任の指導を否定するようで、どうしたらよいかと困ってしまい、相談に来ました」

 このような話でした。苦しい心境がとてもよく伝わってくる相談でした。そこで、次のように助言しました。

 「気持ちはよくわかりました。確かに1年生から継続してきたことを止めましょうと子どもたちに伝えることは気が引けますね。こう話してはどうでしょうか。みなさんはとても成長してきました。話し合いもできるようになってきました。そこで、大人の世界にもう少し近づけましょう。『どうですか?』『いいで〜す!』というやりとりは、大人の世界では行っていないのです。だから、これから少しずつ減らしていきましょう」

 今を否定せず、さらに成長しようと子どもたちに投げかける提案に、相談者はなるほど!と言ってくれました。

 もちろん発言者の方に体を向けて聞くこと、その発言に対して頷いたり、つないで発言したりすることは大人の世界でも行っていることですから、大いに奨励するとよいことも確認しました。

ハンドサインによる意見表明も疑問

 社会で行っていないことは学校でも行わないと考えると、自分の考えをグー(賛成)とか、パー(違う)などで意見表明するハンドサインにも、私は違和感があるのです。ハンドサインが有効であれば、職員会議でも採用されているはずです。しかし、そのようなことがされている職場はないでしょう。ハンドサインは全員参加を促す手法だという方もありますが、全員に手を挙げさせることで見た目だけの全員参加授業を作り出しているのではないでしょうか。

 このように、現状を疑って考えてみることをお勧めします。

 

 

Profile
玉置 崇 たまおき・たかし
 1956年生まれ。愛知県公立小中学校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、教頭、校長、愛知県教育委員会主査、教育事務所長などを経験。文部科学省「統合型校務支援システム導入実証研究事業委員長」「新時代の学びにおける先端技術導入実証事業委員」など歴任。「学校経営」「ミドルリーダー」「授業づくり」などの講演多数。著書に『働き方改革時代の校長・副校長のためのスクールマネジメントブック』(明治図書)、『先生と先生を目指す人の最強バイブルまるごと教師論』(EDUCOM)、『先生のための話し方の技術』(明治図書)、『落語流教えない授業のつくりかた』(誠文堂新光社)など多数。

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