Q&Aスクール・コンプライアンス

菱村幸彦

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選 Q55 私立学校を受験するため学校を欠席する児童の出欠の扱いはどうすべきでしょうか。

学校マネジメント

2020.12.17

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選
第2章 教育指導のコンプライアンス

菱村 幸彦
国立教育政策研究所名誉所員

『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選』2020年10月

Q55 私立学校を受験するため学校を欠席する児童の出欠の扱いはどうすべきでしょうか。

◯指導要録上の「出席扱い」

 学校では、児童生徒が学校の教育計画に基づく授業を受けた場合を「出席」とし、受けなかった場合を「欠席」としています。しかし、指導要録上はこれと若干違った扱いをしています。というのは、授業を受けなかった場合、「欠席」の他に「出席扱い」と「公欠扱い」を認めているからです。

 まず、指導要録に関する文部科学省通知「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」(平成31年3月29日)は、学校の授業を受けなかった場合でも、学校外で一定の学習活動を行っている場合は、校長の判断で指導要録上「出席扱い」とすることを認めています。

 具体的には、①学校の教育活動の一環として運動や文化にかかわる行事などに参加した場合、②不登校児童生徒が公的な適応指導教室や民間の相談・指導施設において学習指導を受けている場合、③不登校児童生徒が自宅においてITを活用して学習活動を行っている場合、④病院や自宅等で療養中の病気療養児に対して同時双方向型授業配信を行った場合、⑤一時保護を受けている児童生徒が児童相談所において学習指導を受けている場合(平成27年から)が、これに該当します。

◯指導要録上の「公欠」

 次に、指導要録通知は、校長が「出席しなくてもよい」と認めた場合は、指導要録上、欠席日数にカウントしない措置を定めています。これを「公欠」(「公認欠席」の略)と呼んでいます。公欠は、社会通念上妥当とされる事由により授業に出席できない場合、欠席として取り扱わない措置です。

 指導要録通知は、「出席停止・忌引等の日数」について、「出席しなくてもよい日数」として、指導要録上「出席しなければならない日数」から除外することとしています。その範囲は、次のとおりです。

 第1は、出席停止による欠席。学校教育法35条は、性行不良で他の児童生徒の教育に妨げがある者に対する出席停止の措置を定めています。

 また、学校保健安全法19条は、感染症に罹患した児童生徒に対する出席停止の措置を定めています。これらの出席停止は、学校の命じた欠席ですから、公欠扱いとなります。

 第2は、臨時休業による欠席。学校保健安全法20条は、感染症の予防上必要があるとき、学級閉鎖を行うことを定めています。学級閉鎖は、学校の方針で授業が行われないので公欠扱いとなります。

 第3は、忌引による欠席。不幸があった場合、葬儀などによる欠席は公欠扱いとなります。忌引の範囲は、公務員の忌引に関する規定を参考にして、教育委員会又は学校の判断で決めています。

 第4は、非常変災などによる欠席。地震、水害、火災などにより授業に出られない場合、校長の判断で公欠扱いができます。一時保護所で学習指導を受けていない児童生徒もこの扱いとなります。

 第5は、その他とくに教育上必要な場合。指導要録通知は「その他教育上特に必要な場合で、校長が出席しなくてもよいと認めた日数」を公欠扱いとしています。就職試験や入学試験の受験などがこれに該当します。設問のケースは公欠の扱いとなります。

 

 

Profile
菱村 幸彦(ひしむら・ゆきひこ)
京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課 長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等 学校長などを歴任。現在、国立教育政策研究所名誉所員。
著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ 教育法規』(教育開発研究所)、『管理職のためのスクール・コンプライアンス』(ぎょうせい)、『戦後教育はなぜ紛糾したのか』(教育開発研究所)、 『はじめて学ぶ教育法規』(教育開発研究所)、『やさしい教育法規の読み方』 (教育開発研究所)など多数。

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最新 Q&Aスクール・コンプライアンス120選 ハラスメント、事件・事故、体罰から感染症対策まで

2020年10月 発売

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国立教育政策研究所名誉所員

京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等学校長などを歴任。著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ教育法規』『はじめて学ぶ教育法規』『やさしい教育法規の読み方』(いずれも教育開発研究所)など多数。

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