
政策課題への一考察
単なる“営業時間変更”で終わらせない窓口開庁時間短縮のすゝめ─全国179事例の調査結果を踏まえた考察|政策課題への一考察 第119回
NEW地方自治
2026.04.09
目次
出典書籍:『月刊 地方財務』2026年3月号
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【政策課題への一考察 第119回】
単なる“営業時間変更”で終わらせない
窓口開庁時間短縮のすゝめ
─全国179事例の調査結果を踏まえた考察
株式会社日本政策総研研究員
松田 睦己
※2026年2月時点の内容です。
1 はじめに
近年、自治体において窓口開庁時間(以下「開庁時間」という)を短縮する動きが全国的に広がっている。背景として、恒常的な超勤の是正、業務の標準化や内部統制の強化、オンライン申請・コンビニ交付等の普及を踏まえた窓口機能の見直しなど、複数の政策課題が重なっていることが挙げられる。一方で、住民にとって窓口は行政サービスへの主要な接点であり、開庁時間の変更は住民生活に直接影響し得るため、住民・議会・職員の間で論点が先鋭化しやすいテーマでもある。
実務上しばしば見落とされるのは、開庁時間短縮が「開庁・閉庁時刻を変更する」ことだけで完結しない点である。開庁時間短縮は単なる“営業時間変更”ではなく、住民・事業者との接点改革や代替手段の整備を含む 総合的な改革として検討される必要があると筆者は考える。
本稿では、公表資料から収集した自治体の開庁時間短縮事例の調査結果をもとに全国的な傾向を概観し、開庁時間短縮を機能させる運用設計の検討ポイントを整理する。
2 開庁時間短縮事例の全国的な傾向
(1)調査方法
本稿の執筆にあたり、全国の開庁時間短縮事例について、自治体の公式ウェブサイトに掲載されている公表資料(2026年1月24日時点)を筆者が調査し、本運用・一部実施(一部の窓口で実施等)・試行の179件の事例(※今後実施予定の自治体含む)を収集した。なお、本稿の対象は基礎自治体に限定し、広域自治体(都道府県)は含めていない。
(2)調査結果
① 実施区分・試行実施の有無・実施開始時期
実施区分を「本運用」「一部実施(一部の窓口で実施等)」「試行」に分類し、集計した。結果は、本運用が114件(63.7%)、一部実施が17件(9.5%)、試行が48件(26.8%)であった(図表1)。「本運用」が大半を占める一方、「試行」が約4分の1を占めている。さらに別の切り口として「試行実施の有無(現在試行実施している事例・現在本運用しているが過去に試行実施した事例の合計)」をみると、「あり」が55件(30.7%)となっている(図表2)。開庁時間の短縮は制度として一気に固定するよりも、試行したのち広げるという進め方が多くの自治体で採用されている。
図表1 実施区分

図表2 試行実施の有無

図表3 実施開始年

(出典) 調査結果をもとに筆者作成
また、実施開始年をみると、把握できた事例のうち最も早くから取り組んでいる自治体が広島県熊野町(2010年)、次いで滋賀県大津市・徳島県阿南市(ともに2020年)、広島県安芸高田市(2022年)となっている。以降、2024年以降から徐々に実施自治体数が増加しており、特に2025年に入ってからは急増している。
② 都道府県ごとの実施自治体数
都道府県ごとに実施自治体数をみると、件数ベースでは愛知県(25自治体)が最も多く、次いで千葉県(21自治体)、兵庫県(13自治体)となっている。都道府県間の規模差を調整するため、実施市町村数を都道府県の市町村総数で除した実施市町村割合でみると、滋賀県(52.6%)が最も高く、次いで愛知県(46.3%)、千葉県(38.9%)、となっている(図表4)。一方で、実施している市町村が存在しない都道府県も散見される。比較的早期に開庁時間短縮を実施した大津市が位置する滋賀県の実施市町村割合が高いことなど、近隣自治体の動向を参照しつつ開庁時間短縮を検討する動きが一定程度存在すると考えられる。
図表4 都道府県別の窓口開庁時間短縮実施市町村割合(実施市町村数/市町村総数)

(出典) 調査結果をもとに筆者作成
③ 開庁時間短縮パターン
休日窓口の開庁時間短縮の例外ケースを除き、開庁時間の短縮パターンを集計した。開庁時間短縮後の窓口開始時刻をみると、「9時(72.3%)」が最も多く、次いで「8時45分(14.1%)」「8時30分(11.9%)」となっている(図表5)。短縮後の窓口終了時刻は、「16時30分(39.5%)」が最も多く、次いで「17時00分(30.5%)」「16時(18.6%)」「16時45分(6.8%)」となっている(図表6)。いずれの事例も、短縮後の窓口開始時刻は3パターン、窓口開始時刻は4パターンにおおむね収れんしている。
図表5 短縮後の窓口開始時刻

図表6 短縮後の窓口終了時刻

図表7 窓口短縮時間

(出典) 調査結果をもとに筆者作成
また、短縮後の窓口開始時刻と窓口終了時刻から短縮時間を計算・集計したところ、最大値で120分、最小値で15分となった。15分刻みで短縮時間の分布をみると、「61分~75分(27.3%)」が最も多く、次いで「31分~45分(19.3%)」「46分~60分(17.6%)」「91分~120分(15.9%)」となっている。
3 開庁時間短縮事例の集計結果を踏まえた分析
集計結果から窓口開庁時間短縮は、開始時刻・終了時刻が特定パターンへと収れんし、短縮幅も「61分~75分」が最多であるなど、時間帯そのものは一定の型に収束しつつあることを確認した。他方で、実施区分では本運用が多数でありながら、その前段階では試行実施の方法が採用されている。以降は、この点に着目し、「試行実施」を掘り下げようと思う。
試行実施の背景として、住民・議会向け説明や庁内合意形成に向けたエビデンス収集という側面が大きいと考えられるが、開庁時間の短縮を単なる“営業時間変更”で終わらせず、開庁時間短縮を起点としたDXを含めた職員の業務効率化、住民との接点見直しによる市民サービスの向上を実現する総合政策に位置づけるべきと筆者は考える。特に、十分に試行が実施されないと、窓口が閉まる時間帯に用事がある人や、窓口以外の手段が使いにくい人、問合せが電話に移るケースなど、運用上の“しわ寄せ”が発生する可能性が高まる。
以上を踏まえ、本運用を見据えた試行の位置づけが重要であるというスタンスから、窓口短縮実施の目的設定、試行実施時の検証ポイント、そして本運用設計のポイントを以降で整理する。
(1)開庁時間短縮の目的設定
実施区分(本運用・一部実施・試行)にかかわらず、まずは開庁時間短縮の目的を設定する必要がある。収集した事例をもとに開庁時間短縮の目的パターンを図表8のとおり整理した。
図表8 開庁時間短縮の目的パターン

(出典)筆者作成
開庁時間短縮の目的パターンを、実施目的の記載がない事例を除く、計176件に当てはめ、集計した(図表9)。なお、複数の目的パターンに該当する場合は、該当するすべての目的パターンに計上した。このため、目的パターン別の該当事例数の合計は、分析対象事例数と一致しない。また、割合は各該当件数を対象件数(176件)で除した数値である。結果をみると、「労務是正・働き方改革(72.7%)」が最も多く、次いで「市民サービス向上(65.3%)」となっている。一方で、件数は少ないものの「施設運営・体制最適化(9.7%)」「経費削減(6.8%)」を目的とする自治体も確認された。
図表9 目的パターン別集計結果(※複数該当あり)

(出典)調査結果をもとに筆者作成
上記のとおり、窓口短縮を実施している事例のうち大半(72.7%)が「労務是正・働き方改革」を掲げているが、「短縮で生まれた時間を何に使うか」を政策として明示することが重要である。開庁時間短縮を「削減」ではなく「再設計」するという立場で以下のとおり、庁内視点・住民視点の双方から検討することがポイントである。
① 庁内視点:短縮により確保した時間の使途
例:後段処理の平準化、書類審査の集中実施、オンライン化の整備、相談対応の質向上、企画・改善業務等。
② 住民視点:住民側の負担を増やさないための条件
例:代替手段の周知、受け皿の設定、対象範囲の明確化、予約・可視化の導入、支援が必要な住民への配慮等。
(2)試行実施時の検証ポイント
前述のとおり、短縮を「営業時間変更」で終わらせないためには、試行段階で、短縮によって生じ得る影響を把握し、必要な対応策を組み込んだうえで本運用に移行することが望ましい。試行実施時に検証すべき論点は、次の4点である。
① 窓口短縮に伴う業務負荷の波及先
第一に、業務負荷の波及先の把握である。開庁時間を短縮すると、来庁のタイミングが特定の時間帯に集中する可能性があるほか、問合せが電話に移る可能性もある。試行では、窓口混雑の時間帯変化、電話・問合せの増減、当日処理できない事案の発生状況等を確認し、窓口外の負荷が過度に増えないかを検証する必要がある。
② 受け皿(例外導線)の必要性と水準
第二に、受け皿(例外導線)の必要性と水準である。開庁時間短縮による影響を受けやすい層(勤務時間等で時間内に来庁できない住民等)への対応として、延長窓口・休日窓口・繁忙期の臨時対応等を設ける自治体も存在する。受け皿が不足すると利用者の不満が顕在化する可能性が高まる一方、受け皿を過度に厚くすると職員負担が残り、短縮の狙いが弱まる可能性がある。試行は、受け皿の「必要量」を見極める機会として位置づける必要がある。
③ 開庁時間短縮実施場所の整合性
第三に、開庁時間短縮実施場所の整合性の把握である。短縮の実施場所を本庁舎の窓口だけに限定するのか、支所・出張所・関連施設まで含めるのか、電話受付時間も併せて変更するのかなどにより、住民の満足度、職員の業務負担は変わる。試行では、対象範囲の抜け漏れが住民の混乱につながっていないか、庁内の連携(取次ぎ、回付、担当課対応)が滞らないかなどを確認する必要がある。
④ 代替手段(来庁しない導線)の整備
第四に、代替手段(来庁しない導線)の整備である。オンライン申請、コンビニ交付、郵送、予約制、発券・混雑可視化等が十分でないまま、開庁時間だけ短縮すると、特定時間帯に住民が押し寄せる可能性がある。試行では、代替手段の利用実績や詰まりどころ(手続きがオンライン化されていない領域、本人確認・添付書類で止まる領域等)などを把握し、本運用までに補うべき事項を整理することが重要である。
(3)運用設計のポイント
前項の内容を踏まえ、開庁時間短縮を機能させるための運用設計のポイントを次の4つの観点に整理した。
① 受け皿の設計(延長窓口・休日窓口)
窓口短縮に伴う住民の窓口サービスへのアクセシビリティ低下を緩和する手段として、延長窓口や休日窓口を設ける自治体がある。例えば、平日の基本線を短縮しつつ、週1回の延長、月1回の休日窓口などを組み合わせる設計である。
この観点の論点は、(a)受け皿を設ける目的(勤務者配慮、繁忙需要対応等)を何に設定するか、(b)受け皿の対象業務を限定するか(全業務か特定業務か)、(c)受け皿の設置を通年とするか、繁忙期のみとするかである。なお、この場合、結果として開庁時間短縮前より職員の業務時間の総量が増加するような設計は回避すべきと考える。
② 開庁時間短縮の適用範囲の設計(全庁・一部・拠点横断・電話受付等)
開庁時間短縮を全庁一律で行う自治体もあれば、一部窓口で先行し、将来的に全庁へ広げる前提で実施する自治体もある。また、本庁だけでなく、出張所・連絡所・保健センターなど複数拠点を対象に含める例や電話受付も同時に変更する例もみられる。
この観点の論点は、(a)住民からみた分かりやすさ(「どこが何時までか」)を優先するか、(b)庁内運用(担当課への引継ぎ、回付、照会)を優先するか、(c)一部先行とする場合の評価軸と移行条件を事前に定めるかである。
③ 時間短縮の工夫(曜日別・半日化・昼休み対応等)
時間短縮といっても、「毎日同じ時間に開ける」以外の設計もあり得る。曜日によって窓口機能を変える、午前中心に集約する、昼休みを閉める等の実施方法も考えられる。
この観点の論点は、(a)需要の少ない時間帯・曜日をどのように把握するか、(b)住民にとっての分かりやすさを確保できるか、(c)職員側のシフト・内部事務時間の確保と整合するかである。なお、「①受け皿の設計(延長窓口・休日窓口)」と同様に、結果として開庁時間短縮前より職員の業務時間の総量が増加するような設計は回避すべきと考える。
④ 代替手段・さらなる業務効率化の検討(オンライン申請・コンビニ交付・予約制・発券制等)
開庁時間短縮を起点にDXを含む業務効率化へつなげる場合、代替手段の整備が中核となる。オンライン申請やコンビニ交付の拡充・利用促進に加え、予約制・発券制の導入、待ち時間の可視化、事前案内(必要書類の事前確認)の徹底など、混雑や問合せ抑制につながる取り組みを併せて検討することが重要である。さらに、窓口の受付と内部処理を切り分け、後段の処理を集約することなども検討することが望ましい。
この観点の論点は、(a)オンライン化の対象範囲をどこまで広げるか、(b)予約対象を限定するか(マイナ関連など特定業務のみ等)、(c)発券の導入・混雑の可視化が混雑緩和に寄与するか、(d)後段事務の集約が可能な業務を見極められるかが挙げられる。
4 おわりに
窓口開庁時間の短縮は、単なる“営業時間変更”ではなく、住民・事業者との接点改革や代替手段の整備を含む総合的な改革として検討されるべき段階に入っている。今後は、各自治体が横並びの時間帯選択をするのではなく、
①どの手続きを窓口に残し、どこまでをオンライン申請・郵送・コンビニ交付等へ移すのか、
②予約・発券・混雑可視化等のさらなる効率化に向けた取り組みをどこまで実施するのか、
③支所・関連窓口・電話受付まで含めて住民に分かりやすい「窓口地図」をどう描くのか
といった設計判断が重要になる。とりわけ試行を通じて開庁時間短縮に伴う業務負荷の波及先(混雑・電話問合せ等)や代替手段の有効性を把握し、改善しながら本運用へ移行できるかが実装上の分岐点になるだろう。
なお、今回の調査結果(一次データ等)の情報提供含め、本取り組みの検討において筆者が力になれることがあれば気軽にご連絡いただきたい。
*政策コンテンツ交流フォーラムは、株式会社日本政策総研、神戸シティ法律事務所が連携ハブとなり、国・地方自治体・民間企業のメンバーを架橋し、政策的課題を多面的に検討するネットワークです。本コラムを通じて、フォーラムにおける課題認識、政策創造の視点等をご紹介します。
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