
政策課題への一考察
地域で共創して育み自走するエリアマネジメントの展開方法とポイント|政策課題への一考察 第116回
NEW地方自治
2026.01.08
目次
出典書籍:『月刊 地方財務』2025年12月号
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【政策課題への一考察 第116回】
地域で共創して育み自走する
エリアマネジメントの展開方法とポイント
野村不動産株式会社
事業創発本部エリアマネジメント部推進二課課長代理
竹内 幹太郎
※2025年11月時点の内容です。
1 はじめに
国土交通省が2024年11月に設置した「都市の個性の確立と質や価値の向上に関する懇談会」による中間とりまとめ「成熟社会の共感都市再生ビジョン(1)(2025年5月国土交通省)」では、「エリアマネジメントは、エリアの質や価値の向上のために不可欠な活動である」という認識のもと、エリアマネジメント団体は、自ら活動を実施するだけではなく、主体的に地域に関わり合い、地域の活動を支えながら、居住者や来訪者等と新たな価値や営みを共創し、地域全体を経営する存在へと進化する必要があること、また、そのうえで活動団体の採算性の確保や担い手・人材の育成が必要であることなどが述べられており、社会経済情勢の変化によって都市再生や公有地利活用におけるエリアマネジメントの必要性はさらに高まっている。
〔注〕
(1)国土交通省(2025年)「成熟社会の共感都市再生ビジョン(2025年5月)」『都市の個性の確立と質や価値の向上に関する懇談会中間取りまとめ』
エリアマネジメントに関しては、これまで複数のマニュアルやガイドラインが策定され、そのプロセスや進め方が整理されている(2)(3)(4)。一方で、地域でのエリアマネジメント活動をどのようにステークホルダーと共創して活発化させていくか、また、採算性等を確保しながらどのように自走させていくのかの方法についてはまだ十分に蓄積されていない。
〔注〕
(2)国土交通省(2008年)『エリアマネジメント推進マニュアル(2008年3月)』
(3)東京都(2016年)『市街地整備におけるエリアマネジメントの手引(第2版)(2016年3月)』
(4)竹内幹太郎「持続可能なエリアマネジメントの形成プロセスとポイント」『地方財務(2020年10月号)』2020年10月、ぎょうせい。
そこで、本稿では地域でステークホルダーとの共創により活動を育むための展開方法と、地域主体の自走へとつなげるポイントについて考察する。
2 エリアマネジメントの動向
2016年に設立された全国のエリアマネジメント団体で構成する「全国エリアマネジメントネットワーク」においては、現在、54のエリアマネジメント団体が加盟している(2025年10月時点)。
エリアマネジメント団体の展開エリアは、開発・再開発地区から既成の市街地・住宅地などさまざまである。
「成熟社会の共感都市再生ビジョン」によると、エリアマネジメントは、地域経済の衰退やコミュニティの希薄化に対する事業創出や公共空間でのサービス提供に加えて、ブランディングやプロモーション、美化・清掃・防犯活動など、地域の状況に応じてさまざまな活動が進められてきた。そして、近年では、社会課題の複雑化や価値観の多様化に応じて新たな局面を迎えており、デジタル技術等を活用したまちづくりDX、良質な緑地の保全や気候変動に対応した環境改善に資するまちづくりGX、スタートアップへの支援、防災力の向上、健康増進、子育て環境の構築に向けた活動など、これまで以上に幅広い取組が期待されている。一方で、持続的なエリアマネジメントを実現していくうえでは、活動団体の採算性の確保や担い手不足、人材の育成が長らく課題となっていると述べられている。
このような状況から、エリアマネジメントにおいては、地域のステークホルダーとの共創や地域主体による自走へとつなげていくことが重要になっていると考える。
3 野村不動産におけるエリアマネジメント「Be ACTO」の取り組み
野村不動産では、街への愛着や誇りが、やがてわが街をよりよく育んでいこうと考える「シビックプライド」の醸成へとつながっていく街づくりの考え方のもと、ハードとしての街づくりに加え、個人や団体、学校や企業など多種多様なプレイヤーによるソフトとしての連携基盤を有する街づくりを目指す「BE UNITED構想」を2018年10月に掲げた(5)。
〔注〕
(5)野村不動産ホールディングス株式会社ニュースリリース「『BE UNITED構想』発表(2018年10月)」
本構想に基づくエリアマネジメントを「Be ACTO」という名称で、横浜市日吉、江東区亀戸、品川区西五反田、さいたま市武蔵浦和の4物件で展開している。以下、本物件等の展開を通じて得た知見に基づき、第4章にて地域での共創によるエリアマネジメントの展開方法、第5章にて地域主体のエリアマネジメントの自走に向けたポイントをそれぞれ考察する。
4 地域での共創によるエリアマネジメントの展開方法
(1)エリアマネジメントを行う場を準備する―まちの共用部
エリアマネジメントを展開するうえで、その拠点となる場を確保することは、地域の住民・来訪者にとって日常的な目的地になるとともに、活動したい主体等にその機会を提供することにつながる。
例えば、マンション建設時には、居住者向けの共用部が準備されるが、マンション居住者のみならず、地域住民や来訪者、地域の団体等が利用できるまちの共用部のような場を準備することで、地域のコミュニティが醸成され、エリアマネジメントが展開される場を創出することができる。
場としては、地域のニーズや課題に応じて、屋内・屋外などで人々の憩い・交流・賑わい創出につながる機能・用途を設定することが求められる。
図表1 地域での共創によるエリアマネジメントの展開方法

(2)活動を起動・推進できる主体を配置する―現地運営法人
場を確保したうえで、住民・来訪者のやりたいことの後押しや、地域の主体・関係者との連携の具体化には、それを企画・運営・支援する役割を担う人材、つまりは地域のやりたいことをカタチにするために活動を起動・推進できる主体を確保することが重要となる。
この主体が現地運営法人として上記の場の運営を行うことで、日常的に地域のさまざまな主体・関係者に関わる接点を作りながら、地域の課題・ニーズを収集して、その対応に資する活動を起動・推進することができる。さらに、現地運営法人が地域の特性に応じた主体が担うことで、画一的ではない、その地域ならではの活動を創出することにつながる。
(3)地域で活動したい人を増やす―プレイヤー・パートナー・サポーター
地域でさまざまな活動を拡げて持続的に展開していくにあたり、現地運営法人など特定の主体による活動に依存するのではなく自分の趣味を活動にしたい地域の住民や、地域に根付いた活動をしたい事業者などの希望をサポートすることで、地域での活動量を増やすことができる。
また、地域の利用者・活動者が集まるコミュニティが形成されれば、1つの小さなマーケットと捉えることもできるため、企業のプロモーション・テストマーケティング・実証実験に関する取り組みの展開や、地域貢献・CSRの観点からの支援を得ることも可能となる。野村不動産では、企業・団体等と連携するプラットフォームとして「オフィシャルサポーター制度」を各Be ACTO物件において展開している。
図表2 企業と団体等と連携するプラットフォーム「オフィシャルサポーター制度」

(4)まちの共用部を基点に地域としての活動へとつなげる―街区外活動
上記の3つの取り組みを通じて、まちの共用部での活動が活発化していくことで、地域のエリアマネジメントの観点からは、地域の“やりたい”を実現できる拠点の創出につながる。そのうえで、さらにまちの共用部で生まれた活動を地域の他の場所で展開したり、地域内の他活動と連携・連動(例えば活動等の同時開催、回遊プログラムの展開など)をしたり、まちの共用部に隣接する公共空間(公園、道路、水辺)等を活用したりなど、街区外活動を展開することで、地域としての活動へと拡げていくことができる。
5 地域主体によるエリアマネジメントの自走に向けたポイント
(1)収益性のある活動を仕組み化する
活動の継続には安定的な財源の確保が不可欠であり、その収入源としては多岐にわたるが、一方で、エリアマネジメントの活動は地域貢献性が高いことから、収益を得られるものか否かが曖昧になりやすい。
そのため、収益活動と還元活動を見極めて、収益活動を仕組み化して増やしていくことが重要である。その際に、利益の獲得方法は、活動によりエリマネ主体が直接的な利益を得る方法もあれば、利益を享受する者から利益を得る方法もあり、活動の目的や目標、需要等を応じて設定する必要がある。
そして、収益を得る活動を増やすことで、それを原資として、次の収益活動や還元活動に投資していくことができる。
図表3 収益性のある活動の仕組み化

(2)自走に向けてはステップを考える
エリアマネジメントを推進するにあたっては、「①活動の自走」、「②事業性の自走」、「③組織の自走」それぞれ段階的に自走を達成して持続性を高めていくことが考えられる。
第1ステップの「①活動の自走」は、地域でエリアマネジメントに資する活動を起こすことであり、前章でも述べたとおり、特定の主体だけではなくさまざまなステークホルダーによって、まちの共用部等で活動が行われることで、地域ならでは多種多様な活動が活発になり、賑わい等まちの魅力になる活動量を生み出すことにつなげていく。
第2ステップの「②事業性の自走」は、「①活動の自走」の過程を経ながら、前項の「収益性のある活動を仕組み化する」ことを通じて、各種活動の採算性を確保することで、よりエリアマネジメントの持続性を高めることにつなげていく。
第3ステップの「③組織の自走」は、上記までを通じて、活動・事業の持続性を担保したうえで、人材確保・育成、知見ノウハウの蓄積等、組織運営の安定化を図ることで、自走できる組織として成熟していく。
図表4 エリアマネジメントの自走ステップ

6 おわりに
本稿では、地域でステークホルダーとの共創により活動を育み、地域主体の自走へとつなげるエリアマネジメントの展開方法について考察した。
エリアマネジメントは、一般的な民間企業の組織活動とも、行政が取り組む事業とも異なり、地域の魅力向上・課題解決につながる公益性のある活動を事業採算性も確保しながら自立的に展開する必要があるため、人材面・財源面等含めて難しさがあり、その効果の発現も一定期間を要する。しかし、地域に関わるさまざまな人々の愛着や満足感の醸成に寄与するものであり、今後の都市再生、まちづくりにおいてその重要性は益々高まると考えられる。そのため、行政や企業等関係者による支え・応援を受けながらも、全国各地のさまざまな場所で今まで以上に展開されることを期待したい。
*政策コンテンツ交流フォーラムは、株式会社日本政策総研、神戸シティ法律事務所が連携ハブとなり、国・地方自治体・民間企業のメンバーを架橋し、政策的課題を多面的に検討するネットワークです。本コラムを通じて、フォーラムにおける課題認識、政策創造の視点等をご紹介します。
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