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地域における対日直接投資拡大の戦略と課題|政策トレンドをよむ 第36回

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2026.04.08

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    【政策トレンドをよむ 第36回】
    地域における対日直接投資拡大の戦略と課題

    EY新日本有限責任監査法人FAAS事業部
    コンサルタント
    小畑 進太郎

    ※2026年2月時点の内容です。

     日本政府は対日直接投資について、海外から高度な人材・技術・豊富な資金を呼び込むことでイノベーションを創出し、日本経済の持続的成長に寄与するものと位置づけている。2025年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」において、日本政府は2030年の対日直接投資残高の目標を100兆円から120兆円に上方修正し、さらに2030年代前半のできるだけ早期に150兆円を目指す方針を示した(1)。経済安全保障の観点から、対日直接投資の審査高度化は重要性を増しているものの、成長戦略の一環として従前以上に強力に対日直接投資の拡大に取り組むこととしている。

    〔注〕
    (1)https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/decision0613.html

     特に、地域への海外活力の取り込みは、少子高齢化や人口減少に直面する地域社会の持続性を支える上でますます重要になっている。2025年6月に日本政府が策定した「対日直接投資促進プログラム2025」では、対日直接投資の拡大に向けて、今後重点的に取り組むべき事項とその具体的な政策対応が5本柱・32施策で示されている。その中の「新規投資・二次投資の促進」の柱では、地域への波及効果が大きい工場等を誘致し、関連する産業・企業を集積させるため、地方自治体を含めた官民一体での誘致活動に対して、府省横断で支援を行うことが盛り込まれている(2)

    〔注〕
    (2)https://www.cao.go.jp/invest-japan/committee/index.html

     しかし、海外企業の投資先は東京都に集中しており、地方都市にはなかなか及んでいないのが現状だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、2024年の対日グリーンフィールド投資案件を東京都とそれ以外に分けると、東京都が117件、東京都以外は58件と、東京都への投資案件が約7割を占めている。さらに東京都以外の案件を地域別にみると、関西が23件、東京を除く関東が10件、九州が8件、中部が7件、北海道が5件、東北が4件、中国が1件となっており、地域ごとの差が大きい(3)。地域にも海外活力をより取り込むためにはどのような施策を検討すればいいだろうか。本稿では
    ①エコシステムとネットワーク形成、
    ②インセンティブ強化と情報発信、
    ③人材確保と生活環境の整備
    の3つに着目し、自治体が取り得る対応策を考察する。

    〔注〕
    (3)ジェトロ対日投資報告2025
    https://www.jetro.go.jp/news/announcement/2025/2a7cf11cfda9d9bf.html

     まず、「エコシステムとネットワーク形成」について、地域産業の強みを活かし、海外企業が参入しやすいエコシステムを構築することが重要だ。例えば、千葉県柏の葉では大学や研究機関、インキュベーション施設等が集積する利点を活かして独自のエコシステムを形成し、「柏の葉スマートシティ」を推進する中でライフサイエンス等の分野において革新的な技術開発の機会を海外企業に提供している。ネットワーク形成については、国際展示会等への参加を通して、自治体の強みを活かした取り組みを積極的に発信し、中長期的な視点で海外企業へのアプローチを行うことが効果的だ。

     次に、「インセンティブ強化と情報発信」について、企業誘致に係る自治体のインセンティブを強化し、海外企業にとって魅力的な投資環境を整備することが重要である。特に、補助金や税制優遇措置は初期投資の負担を軽減する上で効果的だ。例えば、福岡市では国家戦略特区制度を活用し、必要な条件を満たすスタートアップ企業を対象に、法人税の軽減措置を導入している。国税の軽減措置に合わせて自治体独自の軽減措置を行うのは、福岡市が全国で初めての自治体となる。こうした自治体のインセンティブについて、セミナーやデジタルマーケティング等を活用して海外企業に多言語で発信することが、自治体の認知度を高め、海外企業の投資意欲の喚起につながるだろう。

     最後に、「人材確保と生活環境の整備」について、地域社会の一員として多様性を受容して活躍できる人材を呼び込み、地域に定着させることが重要だ。例えば、大分県では、立命館アジア太平洋大学(APU)の留学生向けに就職・起業支援を実施し、地域への定着と雇用創出を促進している(4)。また、地域への人材の長期的な定着のためには、多文化共生に向けて生活面全体を支える環境整備も不可欠だ。自治体は多言語での行政サービスや、医療・教育といった生活関連情報の提供に加えて、地域住民との交流機会づくりなど、多角的な受け入れ体制の整備を進めることが求められる。

    〔注〕
    (4)外国人材の定着が地域経済を支える―優良事例から学ぶ自治体・企業の実践戦略後編
    https://www.ey.com/ja_jp/insights/government-public-sector/retention-of-foreign-talent-supports-the-regional-economy-part2

     技術・人材等の流入によるイノベーション促進や雇用創出など、対日直接投資が地域社会にもたらす影響は大きい。地域の特性や特長を活かした誘致戦略を検討し、投資環境を整備することが、地域の持続的な成長につながるだろう。

     

    #3:イノベーション・科学技術政策策定・事業運営支援
    https://www.ey.com/ja_jp/industries/government-public-sector/science-technology-and-innovation-policies

    #6:外国人材の受入れ・共生・活躍促進支援
    https://www.ey.com/ja_jp/industries/government-public-sector/immigration-policy

    #8:地域の人材確保・育成に向けた戦略策定・実行支援
    https://www.ey.com/ja_jp/industries/government-public-sector/secure-and-develop-regional-human-resources

     

     

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