ガバナンスTOPICS【イベントレポート】
人気漫画『葬送のフリーレン』で地方議会を学ぶ/会見レポート
地方自治
2025.05.23
目次

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出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年5月号
【ガバナンス・トピックス】
人気漫画『葬送のフリーレン』で地方議会を学ぶ──三議長会が新たな主権者教育用リーフレットを発表
全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会(三議長会)は、若い世代の地方議会への関心を高めることを狙いに、人気漫画のキャラクターを起用した主権者教育用リーフレットを作成した。併せて、議会について楽しく学べる特設サイトも開設。3月14日には、都内で三議長会長が記者会見し発表した。
将来の地域を担う子どもたちに自分事として考えてもらうために
全国都道府県議会議長会(会長=山本徹・富山県議会議長)、全国市議会議長会(会長=坊(ぼう)恭寿(やすなが)・神戸市会議長)、全国町村議会議長会(会長=渡部(わたべ)孝樹・北海道厚真町議会議長)(以下、三議長会)は、2023年の地方自治法改正(地方議会の役割及び議員の職務等の明確化)を受け、地方議会への理解と関心を深め、多様な人材の参画を促進するため、地方議会が主体となった主権者教育の推進をしてきました。

このほど三議長会は、将来の地域を担う子どもにたちに、身近な課題を自分事として考え議論し、合意形成を図ることの重要性や、地方議会・議員の役割をさらに周知するため、人気漫画『葬送のフリーレン』を活用した主権者教育用リーフレットを作成した。
公表記者会見には、三議長会会長が出席。まず、会長らがリーフレットを作成にあたってのコメントを述べた。
新しくつくられたリーフレットを持つ三議長会会長(左から、渡部会長、山本会長、坊会長)。
リーフレット作成の経緯
渡部・町村議会議長会長は、「近年、地方議会議員選挙の投票率の低下傾向、住民の議会への興味関心の低下が指摘されている。特に町村議会は、全国的な人口減少や高齢化等の影響もあり無投票当選や定数割れが増加し、議員のなり手不足が深刻な課題となっている。議会は、住民の多様性を反映する合議体で、二元代表制をとる地方自治体で必要不可欠な機関だ。これまでの取り組みに加えて、これから地域を担う子どもたちが興味を持てる工夫をし、議員の役割や魅力を知ってもらうため、議会が主体的に行う主権者教育の素材としてリーフレットを作成した」と三議長会が主体となってリーフレットを作成するに至った経緯を説明。
学生にも地方議会への理解・関心を
坊・市議会議長会長は、「まずは議会がどのようなことをしているのかを知っていただくことが重要だ。地方議会は、地域の課題を執行機関とともに解決していくという役割を担っているが、多くの住民は執行機関が中心となって地域の課題の解決をしているという認識を抱いているのが現状だ。議会として積極的に役割などの周知に努めてきたが、議会報告会などの参加者の多くは成人。従来の手法では、議会の役割を理解してもらう機会が少ない小学生~大学生に特化してリーフレットを作成した。議員がリーフレットを携え学校に赴き、地方議会への理解を深めてもらい、自分たちの地域の未来への関心を高めてもらえれば」と話した。
学校教育でも使いやすく
最後に、山本・都道府県議長会長は「昨年都道府県議長会で行った投票率向上に向けた調査では、地方議会と連携した主権者教育を実施した小中高特別支援学校の割合は、全体のわずか3.9%にとどまっている。学校関係者からも地方議会のことをわかりやすく、子どもたちが親しみやすいリーフレットがあると現場で使いやすいという声をいただき、作成した」と述べた。
人気漫画を採用し、興味関心を
今回のリーフレットは、子どもたちに手に取ってもらい、開いてもらいやすくするために、イメージキャラクターに漫画『葬送のフリーレン』(原作/山田鐘人、作画/アベツカサ)を採用した。原作コミックスは累計部数2400万部を超え、テレビアニメ化もされている。また、受賞歴も多く、若者だけでなく中高年まで人気を博している。
話題性だけでなく、同漫画のストーリーが「仲間と議論しながら自分たちで課題を解決してくこと」「小さな人助けが未来を変えていくこと」などが描かれていること、「故郷を愛する人物の描写が多い」「過激な描写が少ない」などの理由から選定された。
2種類のリーフレット
左:小学生・中学生向けの「フリーレンたちと学ぶ地方議会」
右:高校生・大学生向けの「あなたと共に創る未来 ─フリーレンと行く、地方議会を知る旅路─」
リーフレットは、2種類作成された。小学生・中学生向けは、漢字にふりがなを振り、読みやすいよう配慮。キャラクターが疑問を投げかけることで、リーフレットを通して考え、議論しやすい雰囲気づくりを目指した。書体も教科書で使用されるサイズに合わせ、絵や図も多用しながら理解しやすさを意識した。
高校生・大学生向けは、「話し合い」「連携」「思いを伝える」などのメッセージが込められた漫画のシーンを載せ、議論への参加を促進するような構成とした。説明はコンパクトにして、自ら主体的に考えたり調べたりするきっかけになるよう心掛けたという。
特設サイト「あなたと議会」
また、リーフレットだけでは掲載できる情報に限界があるため、特設サイト「あなたと議会」も併せて開設した。リーフレット同様、『葬送のフリーレン』のキャラクターを用い、地方議会について紹介する。議会にまつわる事柄や立候補や投票など主権者としてできることを学ぶことができる「知恵の部屋」、トリビアを掲載した「議会の魔導書(まどうしょ)」、さらには3択クイズ「地方議会検定」などのコンテンツも用意し、楽しく学べるように工夫をしている。
*特設サイト「あなたと議会」 https://gikai.gichokai.gr.jp/
積極的な主催者教育を
リーフレットは、特設サイトから誰でもダウンロード可能。山本会長は「『葬送のフリーレン』は現代社会が抱えている課題に対して面白いメッセージを含んだ作品だ。教育委員会や選挙管理委員会などと連携しながら、地方議会はより一層主権者教育に取り組み、議員は熱意をもって子どもたちにその思いを伝えていくことが重要だ」と期待を込め、リーフレットを使った積極的な主権者教育を呼びかけた。
(本誌/浦谷 收)
※役職は取材時のもの。全国市議会議長会は、5月20日に丸子善弘・山形市議会議長が新会長に就任した。
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