水道管 老朽化問題|上下水道管の耐用年数は?【管があぶない】

地方自治

2025.03.21

管があぶない 疲弊する上下水道を救え

管があぶない 疲弊する上下水道を救え 編著者名:玉真俊彦
販売価格:1,572 円(税込み)
電子書籍のみ
詳細はこちら ≫

上下水道管は何年もつか

(1) ばらつきのある実際の耐用年数

 いったん埋設された上下水道管は、どの位の長きにわたって問題なく使えるのか。上下水道管がわが国の上下水道施設の資産価値に占める割合は7割を占めるだけに、その長短によっては、今後の資産の維持に必要な費用が大きく変わってくる。

 平均的な耐用年数は、資産の減価償却年数が目安となる。管の種類によって多少前後するものの、わが国では水道管が40年、下水道管が50年とされている。しかし、明治時代に煉瓦で造られた馬蹄形や卵形の下水道管が仙台市や神戸市で現在でも使われている。またヨーロッパでは、たとえばパリの中心市街地に埋設された下水道管の骨格は19世紀に造られたもので、現在でもそのまま引き継がれている。

 こうした例だけみると、実際にはかなり長く使えるのではないかという感じもするが、管の材質や継ぎ手・接合部の構造、管径、管を腐食させやすい土壌、路上の交通から受ける荷重、管内を流れる水道水や下水の性状、さらには水道水により管が受ける内圧とその変動といった条件によって実際の耐用年数は大きく変わってくる。一般的にいえば、管外からの土圧に加えて水道水の内圧も受ける水道管の方が下水道管よりもストレスを多く受けるため、水道管の耐用年数は短いことが多い。

(2) 管材の改良による長寿命化

 自治体が運営する上下水道事業で一般に用いられている資産の法定耐用年数(減価償却年数)は、地方公営企業法施行規則に定められたものである。この法定耐用年数は、1952(昭和27)年の地方公営企業法の制定に合わせて、当時の管材の材質に基づいて定められている。このため、その後改正はなされているものの、今日までの進歩を十分反映しきれていない部分もある。

 たとえば、水道用配水管の法定耐用年数40年(各管種一律)について、メーカーの団体であるダクタイル鉄管協会では、水道用高機能ダクタイル鉄管の法定耐用年数を40年から60年とするよう関係機関に提言している(2004(平成 16)年)。この高機能ダクタイル鉄管であれば、きわめて腐食性の強い土壌に埋設される場合であっても、現行の40年の1.5倍以上(60年以上)は使えるという技術的判断に基づくものである。さらに、後述するが、2010(平成22)年には100年以上の耐用年数をキャッチコピーとする新しいダクタイル鋳鉄管も登場した。

 また、同じくメーカーの団体である塩化ビニル管・継手協会では、実際に埋設・使用されている水道用硬質塩化ビニル管のサンプルを採取し、内圧クリープ試験や材料疲労試験に基づき長期的な寿命を予測した結果、耐用年数は50年以上と評価している。

 このように、最近の管になればなるほど、実際の耐用年数は法定耐用年数よりも長いと考えてよいだろう。このことは、上下水道管の経年劣化、とりわけ高度成長期に急ピッチで敷設された水道管が軒並み法定耐用年数の40年を経過しており、すぐにでも大量更新に取りかからなければ大変なことになるという切迫度を緩める意味で、一つの救いの要素といえるかもしれない。なお、下水道管の方は整備のピークが水道管より15~20年程度遅れているため、大量更新の時代はまだ少し先になる見通しである(図1-3)。

図1-3 上下水道管の年代別敷設延長と法定耐用年数に従った要更新延長 図1-3 上下水道管の年代別敷設延長と法定耐用年数に従った要更新延長
資料:各年度版水道統計(日本水道協会)、下水道統計(日本下水道協会) 注1:耐用年数は水道管40年、下水道管50年とした。 注2:水道管は1965年以前の敷設延長集計データが、下水道管は1977年以前の発注延長データが入手できないため、それぞれ2004年以前、2027年以前の耐用年数を超える延長は推定である。


 この高度成長期に大量に埋設された水道管、つまり現時点で30~40年以上を経過したような管をどうするか、これが目下の大問題である。管の敷設条件が良ければ、法定耐用年数を超えて長持ちしそうだというのは既に見たとおりであるが、管を腐食させやすい気候風土や頻発する地震被害など、上下水道管にとっては厳しい条件となるわが国特有の敷設環境は、メーカーのいう長寿命の実現を阻む可能性もある。

 当面は、耐震性に劣る鋳鉄管や耐震対応でない旧タイプの継ぎ手を持つ塩化ビニル管(TS形継ぎ手)、同じくダクタイル鋳鉄管(A形やK形継ぎ手)に重点を絞り、これに管の重要度(幹線など)、埋設管周辺の土質や路上の交通量などを加味して、どうしても必要なところの優先順位をつけて順次更新していくことになろうが、それにしてもその数量は膨大である。

 そこで次には、わが国特有の悪条件がいかに上下水道管に影響を与えうるかを見ていこう。

「管があぶない 疲弊する上下水道を救え」では、他にも次のような解説をしています。

・管があぶない ~上下水道管路の現状~
 - 上下水道管は老朽化するとどうなるか  - 管路の劣化を早めるわが国の水と土壌の特性  - 計画的な更新の難しさ ・破綻に至るシナリオ ~上下水道問題の理由~
・上下水道管の問題を深く理解するための基礎知識

管があぶない 疲弊する上下水道を救え

管があぶない 疲弊する上下水道を救え 編著者名:玉真俊彦
販売価格:1,572 円(税込み)
電子書籍のみ
詳細はこちら ≫

アンケート

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中