マイナンバー・ICTが拓くセキュアで豊かな社会
第24回(最終話) カフェ発 スマホがロックされて ── え?ウイルスってこんなところにも
ICT
2019.06.26
第24回(最終話) カフェ発マイナンバー・ICTが拓くセキュアで豊かな社会
スマホがロックされて
── え? ウイルスってこんなところにも
スマホが勝手にロックされる?
ある日の午後、都内の文教地区、文田区にあるカフェデラクレ(Café de la clé)。外はとても冷たい風が吹き荒れ、今にも雪が降りそうな空模様だった。
カランカラン♪
「う~、さむさむ。」
アルバイトの緑川絵美の同級生、市倉雅史が入ってきた。
「いらっしゃい。」
絵美が拭いていたグラスを置き、水をいれながら、声をかけた。
「竹見先生、いる?」
市倉は、常連の竹見がいるかどうかを絵美に聞いた。竹見は、近くの帝都大学の教授を定年退職しており、IT系の専門家である。
「今日はまだ見てないな。最近忙しいみたいで。竹見先生に相談事でも?」
絵美は、水をおきながら言った。
「僕じゃないんだけど、友達がスマホに不正なロックかけられたみたいで。」
と話しながら、カウンター席に腰かけた。
「本当は市倉君のことなんじゃないの?」
市倉はとある事件で容疑者(注1)となって以来、絵美からは若干信用されていない。
「いやいや、本当だって。僕のスマホは、ほら、ちゃんと動いているだろ。」
と、スマホを見せた。デラクレをSNS上でチェックインしたことがわかる画面だった。
「プライバシーとか気になるけど、お店の宣伝になったり、いい効果もあると思って。特に、このお店にはお世話になっているしね。」
色々言い訳がましく絵美に話をしていた。
カランカラン♪
「いらっしゃいませ。あ、先生、ちょうどいいところに。」
噂の竹見が現れた。
「おや、噂をされていたのかね。」
竹見がカウンターに向かってきた。
「そうなんです。僕の友達が困っていて。」
市倉は言った。
「ほぅ、絵美ちゃん、いつものをくれるかね。」
今日は絵美一人で働いていた。
「かしこまりました。ところで市倉くんは?」
「あ、ごめん、僕も同じで。」
絵美はうなずくと、コーヒーのドリップポットに手をかけた。市倉は少しでも早く竹見に話したいようだった。
「竹見先生、実は、僕の友達が、スマホが勝手にロックされたと言っているんです。画面上には暗号化されたというメッセージが英語と日本語が混ざって出ているらしくて。」
「あぁ、ランサムウェアかね?」
「それは、前に新聞にのっていたやつ(注2)ですよね。企業が被害を受けたという。」
市倉は、新聞で同じ大学の豊原の名前を見つけていたことを思い出した。
「でも、PCじゃなくて、スマホなんです。」
「おや、市倉くん、スマホだってPCと同じだよ。スマホがウイルスなどに感染してランサムウェアが何かの弾みに入ってしまったんじゃないかな。」
竹見はさも当たり前、というように答えた。
(注1) 第5回 トロイの木馬:大学生が犯行予告? 月刊「自治体ソリューション」2016年8月号
(注2) 第14回 ランサムウェア再び 対策遅延で被害が甚大(後編) 月刊「自治体ソリューション」2017年5月号