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山口 利恵

第24回(最終話) カフェ発 スマホがロックされて ── え?ウイルスってこんなところにも

ICT

2019.06.26

アプリで被害が拡大しやすいスマホの特性

「理屈としてはわかりますが、スマホのウイルスとかって、あんまり聞かないですし。」

 市倉は、少し不思議そうな顔をしながら言った。

「最近増えてきたんだ。ここ数年特に問題になっていてね。お、絵美ちゃん、ありがとう。」

 絵美がコーヒーを二人の前に出したところだった。

「海外で最初に発見されて、数年前日本語にもなったりしていてねぇ。アプリのマーケットも対策しているし、一気に増えたというよりは、じわじわ増えている感じかなぁ。」

 竹見がやれやれ、というように首を振りながら言った。

「原因はどういうことですか?」

 市倉は竹見に尋ねた。

「PCと一緒だよ。メールに添付されていたものを実行したり、Web表示とかだね。ただ、PC以上に問題なのは、ユーザーが手軽に新しいアプリをどんどんインストールすることかな。」

「確かに。スマホには新しいアプリをすぐに入れますね。」

 絵美が言った。

「確かに、ゲームアプリとか入れちゃうなぁ。」

 市倉も同調した。

「どうせエッチな動画みるやつでしょう。」

 絵美が冷めた目で見つめていた。

「いやぁ、そんなことないって。」

 市倉は多少ムキになって言った。

「で、友達の話だけどね。」

 市倉は多少強引に会話を戻した。

「詳しく聞いてみないとわからないけど、スマホをそこまで使っていなかったんだよ。」

「そういう成人向けのアプリ以外にも、単にWebを見ているとき、システムアップデートに見せかけた表示が出たりする事例もあるようだしねぇ。」

 竹見が言った。

「そういう意味では、なかなか深刻なんだ。」

「でも、ちょっとすっきりしました。あいつのスマホ、直るかなぁ。」

「セーフモードで起動して、アプリを消したら直るんじゃないかな。PCと一緒だよ。」

「なるほど。一緒に試してみます。」

 市倉は言った。

「いわゆる情報セキュリティ関連の問題は、ソフトウェアの脆弱性によるものだからね。基本的には同じことだよ。あと、人がついつい普段してしまう行動がきっかけになることも同じだ。」

「我々が気をつけないといけないんですね。」

 市倉が強く言った。

「難しい。」

 絵美はつぶやいた。

「そうだねぇ。情報セキュリティ関連も、報道される時には技術的な攻撃方法が話題になるけれど、本当のきっかけの人は簡単なミスのことが多いんだよね。」

「振り込め詐欺とかも、結局人の良さにつけ込まれるみたいなことですしね。」

 絵美は考え込んでいた。

「そうだね。このあたりは難しいね。」

 竹見は、ほうっと息をついた。

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山口 利恵

山口 利恵

東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センター特任准教授

2003年津田塾大学理学研究科数学専攻修士課程修了。2006年東京大学大学院情報理工学系研究科博士後期課程修了 博士(情報理工学)、独立行政法人 産業技術総合研究所 研究員。内閣官房情報セキリュティセンター員兼務を経て2013年から現職。主な研究テーマである「ライフスタイル認証・解析」に関する各種講演やセミナーの登壇者として、また、「Society5.0を見据えた個人認証基盤のあり方懇談会」構成員を務めるなど、多方面で活躍中。

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