「学校経営マンダラート」で創る教育目標と連動した教育活動

学校マネジメント

2019.08.05

[特集]学校の教育目標を考えてみよう~学校目標から学級目標まで~ ■case 1■

高知県本山町立嶺北中学校で開発した
新しいカリキュラム・マネジメント

高知県高知市立城東中学校長
大谷俊彦

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.1 2019年5月

 

「カリキュラム・マネジメント」の一丁目一番地は、「学校教育目標」にあり

 学校教育目標について、学習指導要領第1章総則に、「教育課程の編成に当たっては、学校教育全体や各教科等における指導を通して育成を目指す資質・能力を踏まえつつ、各学校の教育目標を明確にするとともに、教育課程の編成についての基本的な方針が家庭や地域とも共有されるよう努めるものとする。その際、第5章総合的な学習の時間の第2の1に基づき定められる目標との関連を図るものとする」(下線は筆者)と示されている。

 そして、「カリキュラム・マネジメント」について、この分野で先行研究してきた大阪教育大学の田村知子教授は、「各学校が、学校の教育目標をよりよく達成するために、組織としてカリキュラムを創り、動かし、変えていく、継続的かつ発展的な、課題解決の営み」(田村2011)と定義しており、カリキュラム・マネジメントを推進するうえで、「学校教育目標」が適切に定められていることが前提にあることを謳っている。

 昨年度、高知県中部教育事務所管内の小・中学校114校の「学校教育目標」をキーワードで調査してみると、「たくましい」や「心豊かに」といったワードが1位、2位を占めた。また、今年度、愛媛大学の藤原一弘准教授にご協力いただき、愛媛県内の小・中学校402校の学校教育目標を調べてみると、1位「心豊かに、豊かな心」、2位「たくましい」、3位「自ら学び」となっている。

 決してこの目標が良くないとケチをつけているわけではないのだが、果たして1位や2位にある「たくましさ」や「心の豊かさ」について、各学校はどう見取り、何をもって評価しているのだろうか。この目標が有名無実化してないか、お題目で終わっていないか、定期的に「評価・点検」が行われているのか、今、見直す時期にきているのではないだろうか。

 確かに、学習指導要領に則り、「知・徳・体」を目標に掲げるのは当然といえば当然なのだが、どの学校も、金太郎飴のように「知・徳・体」となるのはいかがなものであろうか。学校教育目標には、国や都道府県の方向性を受けつつ、地域や児童生徒の実態から、もっと独創性や個性が出ていいのではないだろうか。

 各県の教育委員会主催の研修会や各地の校長会・教頭会主催の研修会などに呼ばれてこの話をすると、毎回同じ質問が出される。それは、「学校開校以来、長年の歴史がある学校教育目標だから私の代で簡単に変えられない」という校長からのお悩み相談である。そんなとき私は、「目標に不易の部分も確かに必要です。今までの歴史や伝統のある学校教育目標ならば、いっそのこと『校訓』や『校是』に格上げして、今の時代に合った学校教育目標に作り替えてみてはどうでしょうか?」「先輩校長が作ったもの、人から与えられたものは、なかなか自分のものになりにくいのではないでしょうか。ぜひ、あなたが校長のうちに、新しい目標を作り、学校に新たな足跡を残してみてはどうでしょうか?」と答えるようにしている。時代の変化を見据えて、学習指導要領も10年に一度改訂されるのだから、学校教育目標も少なくとも10年に一度は、これからの時代に求められる資質や能力とは何なのかを明確にし、時代に合ったものにリニューアルしていくことが必要なのではないだろうか。

学校のベクトルをそろえる

 また、一般の教員対象の研修会で、「学級目標を決めるときに、学校教育目標を意識して決めていますか?」と尋ねると、意識して決めているという教員は100人中2~3人手が挙がれば上々で、自信を持って手を挙げる教員はほとんどいない。

 では、学級目標は、どうやって決めているのだろうか。私の経験から考えると、学校教育目標などは考えに入れず、学級の子供たちの主体性や担任の思いで決めているのが実態なのではないだろうか。これが学校という組織の弱点でもあり、学校の現状なのである。

 しかし、一般企業において、こうした勝手が許されるだろうか。企業などでは、収益を上げなければ社員の給料も払えないし、企業を維持していくことはできない。企業は生き残りをかけて、それぞれが収益目標を立て、営業や企画、人事といった各部署において、企業の目標達成に向けて一丸となった取組を行っているのである。「目標達成に向かって努力しない」企業は、決して存続していくことはできない。こうした部分において、営利を目的としない組織である学校や教育機関の甘さがあるのではないだろうか。

 企業の構図を学校に当てはめて考えた場合、各部署というのは各教科の授業や学級会、生徒会、部活動などがこれに当たる。学校教育目標を達成するための現場の最前線は、それらの場に他ならない。授業づくりを中核とした研究主題や学級目標が、学校教育目標と連動しているか、下位目標になっているのか、今すぐにでも確認してほしい。

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