コロナ禍で変化する言葉とローマ字表記 ―「令和3年度 国語に関する世論調査」の調査結果発表を受けて
トピック教育課題
2022.09.30
2022年9月30日、文化庁は「令和3年度 国語に関する世論調査」の調査結果を発表しました。それを受け、当社は調査結果をまとめた『令和3年度 国語に関する世論調査 ローマ字表記・言葉の使い方』を刊行しました。ここでは、本書の制作・編集担当者がその内容の一部を紹介します。
「国語に関する世論調査」とは
「国語に関する世論調査」をご存じだろうか。新聞やテレビ、クイズ番組の解説などでその名を耳にしたことがある人も多いのではないだろうか。「国語に関する世論調査」は、国語施策の立案に資するとともに、国民の国語に対する興味・関心を喚起することを目的として、平成7年度から毎年、文化庁が実施しているものである。変化する社会における日本人の国語に対する意識の現状を捉えるため、その年ごとに調査内容を少しずつ変えている。今年は、《ローマ字表記・言葉の使い方》をメインテーマに、「日本語をローマ字で書き表すことがあるか」「情報機器における日本語入力でのローマ字入力の使用」「ローマ字表記の使い方」などについて調査している。
コロナ禍を機に使われ始めた言葉
コロナ禍も気が付けば3年目。混乱の中、感染予防対策が重視された1年目と比べ、2年目以降は感染予防をしつつ日常生活を送る、新たな日常への創意工夫が各所で見られたように思う。
今回の調査では、昨年度に引き続き、コロナ禍を機に使われ始めた言葉の印象について調査している。調査した言葉は「人流」「黙食」「ブレークスルー感染」「ブースター接種」「ワクチンパスポート」「ニューノーマル」「エアロゾル」「おうち時間」の八つ(ちなみに昨年度は「コロナ禍」「ソーシャルディスタンス」「3密」「濃厚接触」「クラスター」「不要不急」「ステイホーム」「ウィズコロナ」の八つ)。回答の選択肢は、昨年度と同じ「この言葉をそのまま使うのがいい」「この言葉を使うなら、説明を付けたほうがいい」「この言葉は使わないで、ほかの言い方をしたほうがいい」の三つである。
「この言葉をそのまま使うのがいい」の割合が高かった言葉は、高かった順に「おうち時間」(69.1%)、「黙食」(64.9%)、「人流」(50.2%)、「ワクチンパスポート」(44.9%)という結果であった。「ブレークスルー感染」「ブースター接種」「ニューノーマル」「エアロゾル」の四つについては、「この言葉をそのまま使うのがいい」と答えた人の割合が10%台にとどまる結果となった。
コロナ禍は、生活様式やコミュニケーションの在り方に大きな変化をもたらしただけでなく、これまで使われてこなかった言葉にスポットが当たる機会でもあった。コロナ禍を機に使われ始めた言葉やコロナ禍で新たに生まれた言葉とどう付き合っていくかも、ウィズコロナ、アフターコロナの課題かもしれない。
ローマ字での表記~「会津」は「Aizu」? 「Aidu」?~
「『会津』をローマ字で書いてください」と言われたら、どんな表記で書くだろうか?
今回の調査では、ローマ字表記について複数の質問で調査している。「ふだん、日本語がローマ字で書き表されているのを見ることがありますか」という質問には、82.7%の人が「ある」と回答。グローバル化に伴い、ローマ字表記を見かける場面が増えていることが読み取れる。
年代別にみても、「ある」と答えた人の割合に大きな差は見られなかった。どの年代においても「ある」と答えた人の割合は高く、一番高い年代は20~29歳で89.9%。一番低かった70歳以上でも73.8%という結果だった。
さらに今回の調査では、「明石(あかし)」「宇治(うじ)」「愛知(あいち)」「厚木(あつぎ)」「岐阜(ぎふ)」「五所川原(ごしょがわら)」「御宿(おんじゅく)」「抹茶(まっちゃ)」「丹波(たんば)」「田園(でんえん)」「会津(あいづ)」など、複数の表記方法が考えられる語について、どのような書き表し方をするかも調査している。「会津」の表記についての質問には、「Aizu」と答えた人が87.8%、「Aidu」と答えた人が10.9%だった。どのような表記を使っているか周りの人と話してみると、意外な発見があるかもしれない。
『令和3年度 国語に関する世論調査 ローマ字表記・言葉の使い方』の刊行
当社は、「令和3年度 国語に関する世論調査」の調査結果をまとめた『令和3年度 国語に関する世論調査 ローマ字表記・言葉の使い方』を刊行しました。毎年、テレビ・新聞・ニュースで話題になる世論調査の結果を収録した唯一の書籍です。ここではその内容の一部を紹介してきました。本書では、他にも国語や言葉への関心、気になる言葉、慣用句等の意味・言い方など全ての調査項目と結果を収録しています。国語教育に関わる学校教育関係者にとって、活用シーンの多い一冊です。