リーダーのためのマナーアップ講座

美月あきこ

リーダーのためのマナーアップ講座[第5回]ビジネスシーンのメモ術

トピック教育課題

2021.03.26

リーダーのためのマナーアップ講座[第5回]
ビジネスシーンのメモ術

人財育成トレーナー 
美月 あきこ

『新教育ライブラリ Premier』Vol.5 2021年2月

ファーストクラスで目にした「メモするお客様」

 飛行機のファーストクラスを担当していた頃のこと。お客様の多くは、思い思いにお寛ぎのひとときを過ごされます。ゆったりと読書を楽しまれるお客様も多くいらっしゃいましたが、その中には、ペンと小さなノートを片手にしている方も多く見られました。また、初めてお会いになるお客様同士で会話を楽しまれる光景もたびたび目にしましたが、男性のワイシャツの胸ポケットにすっぽり入るサイズのカードを取り出してペンを走らせている方がいらっしゃいました。気になったので、ある時お客様に質問したところ、ヨコ7.5、タテ12.5cmの、ちょうど胸ポケットに収まるサイズの情報カードというものでした。それ以来、私も、お客様を真似して購入し、今でも愛用しています。そこでわかったのは、ファーストクラスで目にしたお客様方は、本や新聞から重要だと感じたり、覚えておこうと思った部分、会話をしていておもしろいと感じた部分や自分にとって有益な情報になり得ると判断した部分を、情報カードなどにメモをしていたのだということです。

 人間は、とにかく忘れる動物と言われます。「聞いた20分後には42%を忘れ、1時間後には56%を忘れ、1日後には74%を忘れる」とも言われています。忘れないうちに、大切なことをメモしておく習慣さえあれば、様々な知識や情報を自分のものにすることができます。他者への共有時にもメモがあればとてもスムーズです。機内でのお食事のオーダーや過ごし方をメモで指示してくださる方もいて、とてもスマートだと感じましたよ。メモをとる習慣は、ビジネスにおいては本当に重要なことです。

要注意! スマホのメモ機能の使い方

 前述の通り、メモ用に小さなカードやノートを使用している私ですが、いまはスマホのメモ機能もよく使っています。小さなノートを服のポケットやバッグに入れるのを忘れることがあっても、スマホは忘れないので、メモ機能はとても重宝しています。

 ただし、ここで注意をしなくてはならないことがあります。スマホのメモ機能は、目上の人や取引先の人の前では絶対に使わないでください。理由は、自分の目の前でスマホを使用しているのを良く思わない方が、特に年配の方に多くいるためです。スマホは、相手に画面が見えないため、一見すると何をやっているのかわかりません。ともすると、現在の用件とはまったく異なることをやっているようにも見えます。ゲームやアプリで遊んでいると勘違いする人も意外に多いようです。特に会議や打ち合わせの際などに誤解を受けないよう、スマホのメモ機能を使用する際には、十分に気を付けてください。

 反対に、ノートなどにメモしていると、相手は「自分の話に、とても熱心に耳を傾けてくれている!」と思い、印象がとても良くなります。さらに、頷きや相槌も適宜入れながらメモをすると、印象はますますアップします。ビジネスシーンにおいて、メモはコミュニケーションツールの一つであることを覚えておきましょう。

メモ術の発展バージョン

 このメモ書きから発展して私が実践しているのが、「スケジューリングメモ」です。毎朝4時30分に起きて、すぐの10分間にこれを行うのが日課です。

 やり方は、まず、A4用紙に縦三つの折り目を付けます。三つできたコーナーに、左から「本日のスケジュール」「本日やるべき仕事」「今週やるべき仕事」と題します。「本日のスケジュール」のコーナーには必ずスキマ時間ができるので、その右側に書いてある「本日やるべき仕事」をそこに入れていきます。それをどんどん入れていき、「本日やるべき仕事」が無くなったら、右端にある「今週やるべき仕事」も入れます。こうして、自分がいま抱えているタスクを「見える化」することで、効率よく仕事を進めることができるようになります。スケジュール機能のアプリと同じです。

 「本日やるべき仕事」が多い時は、それぞれの仕事に要する時間を見積もり、時間がなるべくかからないものから着手するのがコツです。やるべき仕事が減っていくと、心が軽くなっていくのを感じることができます。こうして、小さな達成感を積み重ねていくことが、仕事のモチベーションを保つ秘訣です。「本日やるべき仕事」がすべて片付いた時の爽快な気分といったら! どのみち、仕事はやらなくてはなりません。せっかくなら、楽しみながらやった方が良いですよね。

 メモ書きが習慣化すると、このような発展した利用法も見つかります。「スケジューリングメモ」以外にも、あなたオリジナルのメモ活用法をぜひ生み出してみてください。

メモ術の習得でより豊かな毎日に

 ファーストクラスのお客様を見ていて感じたのは、引き出しの多さは情報に対する敏感さ、意識の高さにある、ということでした。重要だと感じた情報は、とにかくメモをする。情報のヌケモレを防ぐ。これを徹底していました。

 また、メモ術は、自分のためだけでなく、相手の笑顔のためにも活用できます。何かを借りた、何かを手伝ってもらった、何かを教えてもらった等々、ちょっとした時に、口頭でお礼を伝えるだけでなく、メモに書いてデスクに置いたり、付箋に書いてパソコンに貼ったり、プレゼントに小さなカードを添えたり……。それだけでも、気持ちが伝わり、相手は笑顔になります。コロナ禍では、誰もが心に不安や恐怖を抱えながら生活しています。小さなことでも良いので気持ちを文字にしてみてはいかがでしょうか。備忘録のためのメモ、情報収集のためのメモ、他者へ気持ちを伝えるためのメモ……。メモ一つで、日々のビジネスシーンがより豊かなものになります。

 

Profile
美月 あきこ(みづき・あきこ)
人財育成トレーナー

 大学卒業後、日本航空入社。国際線客室乗務員として17年間国際線に乗務。人財育成トレーナーとして接客研修・コンサルティング業務に携わる。
著書にベストセラーとなった『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』『1分でうちとけ30分以上会話が続く話し方』『15秒で口説く エレベーターピッチの達人』など、韓国、中国、台湾、シンガポールなどで翻訳語版を多数出版。
 All About ビジネスマナーガイド。日本経済新聞『マナーのツボ』連載。

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人財育成トレーナー

大学卒業後、国際線客室乗務員として17年間国際線に乗務。人財育成トレーナーとして接客研修・コンサルティング業務に携わる。著書にベストセラーとなった『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』『1分でうちとけ30分以上会話が続く話し方』『15秒で口説く エレベーターピッチの達人』など、韓国、中国、台湾、シンガポールなどで翻訳語版を多数出版。AllAboutビジネスマナーガイド。日本経済新聞『マナーのツボ』連載。

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