教育Insight

渡辺敦司

教育Insight 2022年度から小学校高学年に教科担任制の本格導入へ

トピック教育課題

2020.04.21

教育Insight

2022年度から小学校高学年に教科担任制の本格導入へ

教育ジャーナリスト 渡辺敦司

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.10 2020年2月

 中央教育審議会の初等中等教育分科会は12月26日、「新しい時代の初等中等教育の在り方論点取りまとめ」を公表した。4月の諮問が検討を求めていた「義務教育9年間を見通した教科担任制」については、2022年度を目途に小学校高学年から本格的に導入すべきだとしている。

●実現目指す学校教育の姿にイメージ

 初中分科会は同13日の会合で論点取りまとめ案を大筋で合意。分科会長の荒瀬克己大谷大学教授に修文を一任していた。

 正式にまとまった論点取りまとめは、「新しい時代を見据えた学校教育の姿(2020年代を通じて実現を目指すイメージ)」を▽子供の学び=多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、個別最適化された学びが実現▽子供の学びを支える環境=全国津々浦々の学校において質の高い教育活動を実現可能とする環境が整備――の二つの柱で整理して示し、これまでの学校の常識にとらわれず検討を行っていくことを提言した。

 その上で、各部会・ワーキンググループ(WG)等からの報告も踏まえ、①これからの学びを支えるICT(情報通信技術)や先端技術の効果的な活用②義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方③教育課程の在り方④教師の在り方⑤新しい時代の高校教育の在り方⑥幼児教育の質の向上⑦外国人児童生徒等への教育の在り方⑧新しい時代の特別支援教育の在り方――について、現段階でまとまった論点を示している。

 なお、これ以外の▽特定分野に特異な才能を持つ者に対する指導および支援の在り方▽義務教育をすべての児童生徒等に実質的に保障するための方策▽いじめの重大事態、虐待事案等に適切に対応するための方策▽児童生徒の減少による小規模校化を踏まえた自治体間の連携や小学校と中学校等の連携等も含めた学校運営の在り方▽チーム学校の実現等に向けた教職員や専門的人材の配置、首長部局との連携および学校や教育委員会におけるマネジメントの在り方――については、年明け以降に議論を行っていくとしている。

●デジタル教科書は24年度以降に

 このうち「これからの学びを支えるICTや先端技術の効果的な活用について」では、個別最適化された学びの実現には教師を支援するツールとしてのICT環境や先端技術が不可欠だと強調。それにより遠隔教育や、学びの知見の共有・生成、働き方改革の推進が可能になるとしている。

 一方で「現状の情報化の致命的な遅延や地域間格差」に憂慮を示し、「令和の学校のスタンダードの実現」に向け、ハード面とソフト面を一体で国の取組を早急に進めるべきだとしている。

 このうちハード面については、19年度補正予算から児童生徒1人1台端末や校内LAN整備など「国家プロジェクトとしての学校ICT環境整備の抜本的充実」(公私立学校は補助率2分の1、国立学校は定額補助)が始まる。それに応じてソフト面では、デジタル教科書や人工知能(AI)技術を活用したドリル等の整備や活用促進を進めるよう提言。これにより知識・技能定着の授業時間が短縮でき、探究的な学習などに時間をかけることが可能になるとしている。

 特に、デジタル教科書は新学習指導要領の下で2巡目の教科書改訂サイクルを迎える小学校24年度、中学校25年度を見据え、20年度内を目途に方向性を示すとした。

●中学年まで基礎・基本を確実に

 「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方」では、児童の発達段階や外国語教育などを踏まえ、22年度を目途に「小学校高学年からの教科担任制を本格的に導入すべきである」と明記した。

 そのためには教員定数をはじめ養成・免許・採用・研修、教育課程などの9年間を見通した一体的な検討が必要だと強調。具体的には、▽義務標準法の在り方も含めた教科担任制に必要な教員定数の在り方▽小学校での教師間の分担の工夫、中学校での担当授業時数や部活動指導等を踏まえた教師の在り方や小中の行き来▽小規模校でも高学年段階の教科担任制が実現可能となるような仕組みの構築――などを検討するとしている。

 その上で、小学校中学年までに基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させるための方策を含め、教育課程の在り方の検討を行うべきだとした。これに関しては今後、教育課程部会と、各部会・WG等の司令塔役である「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」が連携して検討を行うという。

●読解力向上は新指導要領で

 「教育課程の在り方について」では、全国学力・学習状況調査(全国学調)で全国的な学力の底上げが図られてきていること、PISA(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)の18年度調査結果では数学や科学のリテラシーが引き続き世界トップレベルである一方、読解力ではデジタル時代における情報への対応などの課題もみられたことを指摘。こうした課題にも対応する新学習指導要領を着実に実施していくことが求められるとした。

 また、Vol.8本欄で既報したSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育に関しては、STEAMのA(Arts)を「芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲」で定義するよう正式に提言。その意味で共通点の多い高校の「総合的な探究の時間」や「理数探究」の着実な実施が重要だとした。

 「教師の在り方について」では、▽免許状を持たない社会人が活躍しやすくするような特別免許状の指針の見直しや制度の弾力化▽免許状更新講習や認定講習、教職大学院等を接続する仕組みの構築▽Society5.0に対応した教員養成を先導する「フラッグシップ(旗艦)大学」と教員養成に関わる大学全体のシステム構築――を論点に挙げている。

 「新しい時代の高等学校教育の在り方について」では、どのような生徒を受け入れ、どのような資質・能力を身に付けさせて卒業させるか、そのための教育をどのように実施するか等の教育理念・学校経営方針の下、教職員が一丸となってPDCAサイクルを回し、学校が主体的に進化する学校運営を実現する方策を検討するとしている。

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