絶対満足できる!新しい英語授業

菅正隆

新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第4回]4年生が危ない! つまずく可能性の高い4年生をケアする

トピック教育課題

2019.09.29

目次

    新教育課程実践講座Ⅰ
    絶対満足できる!新しい英語授業

    [第4回]4年生が危ない!
    つまずく可能性の高い4年生をケアする

    大阪樟蔭女子大学教授
    菅 正隆

    『リーダーズ・ライブラリ』Vol.4 2018年8月

     移行期間に入り1学期が終了した。様々な地域で、“Let’s Try!”や“We Can!”のテキストを使用しての外国語活動及び外国語の授業に関する課題を多く耳にする。「“We Can!”は難しい」「語彙が多すぎて指導しきれない」「『読む』『書く』の指導が分からない」「評価が定かでない」など、前途多難に見える。この多くは、国からのテキスト配布が授業開始直前であり、授業時間確保の問題や短時間学習の軌道修正、カリキュラム作成もままならない状況下での授業開始が原因と思われる。しかし、これらは移行期間であることを考えると当然のことかもしれない。先生方がこの約3か月間で得た経験から、今後、カリキュラムの変更や、指導方法や評価の在り方を再構築するチャンスでもある。

     そこで今一度、現3年生から6年生までが、今後年度を追って、どのようなテキストや教科書を使用することになるのか確認したい。そこから、子供たちの負担感や指導の方向性が見えてくる。

     

    1.第3学年

     この学年は、最も効率の良い学年である。3年生の授業開始時から英語導入期に使用される外国語活動テキスト“Let’s Try! 1”を用い、高学年では、“Let’sTry!”終了後に使用されることを想定した検定教科書を用いることになり、教科にスムーズに移行することのできる学年である。ただし課題としては、本年度3年生の時間数が15時間であった場合、“Let’sTry! 1”は35時間分のテキストであることから、20時間もの積み残しがあることになる。したがって、来年度“Let’s Try! 2”を指導する際に、その積み残しを解消しておく必要がある。つまり、5年生で新検定教科書に入る前に、“Let’s Try! 1”と“Let’s Try!2”の内容をある程度取り扱っておく必要があるということである。

     

    2.第4学年

     この学年には特に注意を払う必要がある。テキストと教科書の難易度を考慮しないと、「英語嫌いの子供」や「つまずく子供」を生み出すことにもつながりかねない。初めに4年生の導入期を考えてみる。この学年には、すでに“Let’s Try! 2”が配布されているが、このテキストは導入期に使用するものではなく、“Let’s Try! 1”を履修した後に使用するものである。したがって、“Let’s Try! 1”よりは難しめである。初めて英語に触れる子供たちにとって、階段を一段目から上るのではなく、階段の2、3段目から上がり始めるようなものである。子供によっては、負担感を感じていることが想定される。しかも、年間授業時間が15時間では、前述の3年生同様、20時間もの積み残しがある。そして、5年生では“Hi, friends! 1”&“We Can! 1”の合本が配布される。“Let’s Try! 2”を学習した子供にとって“Hi, friends! 1”は簡単であり、“We Can! 1”は積み残した子供にとっては難度が高い。仮に、積み残しがあるからといって、“Hi, friends! 1”を重点的に学習するとすれば、6年生で配布される新検定教科書はかなり高度であることが予想される。つまり、この学年は中途半端なテキストからスタートし、年ごとに難しいテキストや教科書を扱うことになり、指導内容やレベルに連続性がなく、難易度も極端に異なることから、困難をきたす子供があらわれることが想像される。それを解決するためには、カリキュラムや使用するテキスト、教科書に工夫を施すことが必要である。例えば、“Let’s Try! 2”に加えて、“Let’s Try! 1”や5年次に配布される“Hi, friends! 1”、または6年次に配布されている“Hi, friends! 2”を活用してカリキュラムを作り直すことである。そして、5年次には“We Can! 1”を使用し、6年次から使用される新検定教科書に備えるべきである。そのためにはあまり時間がなく、急いで対応する必要がある。

     

    3.第5学年

     この学年は、上記から分かるように、中学1年生では、まだ現行の検定教科書を使用することから、5年生及び6年生でどのテキストを使用したとしても、中学校では指導内容をリセットし、ゼロベースから指導することになる。したがって、5年生及び6年生では、しっかりと基礎基本を定着させたいものである。仮に、“We Can!”を使用したとしても、中学校ではゼロベースから指導することになり、子供によっては、中学校入学当初から教科書の内容が“We Can!”よりも易しいと思い、中学校の英語を軽視することにもつながりかねない。あまり無理をしないことが得策である。

     

    4.第6学年

     この学年も第5学年と同様、中学校ではゼロベースから指導することになる。したがって、残り半年をどのような指導内容にするか。例えば、“We Can! 2”で指導する過去形は、中学校の現行検定教科書では、中学1年生の3学期または中学2年生の1学期に学ぶ文法事項である。無理に6年生で取り扱わなくも十分に中学校で対応できる。したがって、この学年も無理せずに、昨年の“Hi, friends! 1”の続きとして、“Hi, friends! 2”をしっかりとこなし、中学校に送り出すことである。無理に“We Can! 2”に手を出して、「英語嫌い」をつくっては本末転倒である。

     以上のことから、各学年とも、カリキュラム及びテキストの見直しを至急にすべきである。ここでのポイントは、どの子供も「英語嫌いにさせない」「英語につまずかせない」ことである。移行期間は無理しないこと、先生方の指導力を磨くことが鉄則である。

     では、実際に4年生の授業をどのように構築すればよいのか。左頁の指導案のとおり、“Let’s Try! 2”を参考に考えてみたい。取り扱う単元をUnit5の“Do you have a pen?”「おすすめの文房具セットをつくろう」とする。ここでは、個数を尋ねる“How many?”を使用するが、この“How many?”は“Let’s Try! 1”のUnit3にある表現である。そこで、“Let’s Try! 1”のテキストを利用しながら指導を図ることを考える。また、“Let’s Try! 1”のUnit8にある“What’s this?”の表現も多用していくことで、内容の充実も図りたい。

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    菅正隆

    菅正隆

    大阪樟蔭女子大学教授

    岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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