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インクルーシブ教育時代の特別支援教育

NEWトピック教育課題

2019.09.09

全校種で展開する特別支援教育

 答申第8章5項「教育課程全体を通じたインクルーシブ教育システムの構築を目指す特別支援教育」には、以下の方向性が示されている。

〇障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくためには、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校において、子供たちの十分な学びを確保し、一人一人の子供の障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させていく必要がある。

〇その際、小・中学校と特別支援学校との間での柔軟な転学や、中学校から特別支援学校高等部への進学などの可能性も含め、教育課程の連続性を十分に考慮し、子供の障害の状態や発達の段階に応じた組織的・継続的な指導や支援を可能としていくことが必要である。

〇そのためには、特別支援教育に関する教育課程の枠組みを、全ての教職員が理解できるよう、小・中・高等学校の各学習指導要領の総則において、通級による指導や特別支援学級(小・中学校のみ)における教育課程編成の基本的な考え方を示していくことが求められる。また、小・中・高等学校の通常の学級においても、発達障害を含む障害のある子供が在籍している可能性があることを前提に、全ての教科等において、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援ができるよう、障害種別の指導の工夫のみならず、各教科等の学びの過程において考えられる困難さに対する指導の工夫の意図、手立ての例を具体的に示していくことが必要である。(※下線は筆者)

 以下、個別の教育支援計画と個別の指導計画、高等学校における通級による指導、交流及び共同学習、心のバリアフリー、教育課程全体を通じた特別支援教育の充実、となっている。

 小・中・高等学校の通常の学級においても発達障害を含む障害のある子どもが在籍している可能性がある、という現状は学校教育関係者には周知の事実である。したがって、全ての教職員が特別支援教育への理解を深め、全ての教科等において一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援を行う必要がある。

「学ぶことは楽しい」と言える授業

 では、教科等における一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援とは何か。筆者は小・中学校の現場に赴く機会が多々ある。その中で、素晴らしい授業実践に出会うことがある。子どもも先生も生き生きと活動し、学校全体が活性化され、確かな学校経営、学級経営が行われている。その基本は、授業である。

 授業とは、教科の本質と子どもの思考回路が同期した状態で初めてスムーズに展開するものである。「分かる」という実感が子どもの側に生まれることである。したがって、先生は「子どもが分かったのかどうか」を分からなくてはならない。そこで、新しい単元に入る前に、まず、本単元に関連する既習事項がどの程度定着しているのか、ベースラインを設定するために事前に評価する必要がある。

 図2は主体的な学習過程を促すことによって一人一人に確かな学力を習得させるためのプロセスを示している。単元構想を練る際に、事前の評価をもとに、一人一人の子どもの思考回路を思い描きながら、教科のねらいをどのようにしたら伝えられるのか、教材選定、授業形態、授業展開、評価法等を検討する。先生はねらいを明確化するとともに、子どもにとってのめあてを明示する。そして、指導の途中で形成的評価Aを行い、先生は子どもがどの程度課題を達成しているかを把握するとともに、子ども自身に結果をフィードバックする。そこで、めあてが達成されていれば発展的学習に進み、達成されていなければ補充的学習を受ける。そこでは、目的に応じたグループ別学習や個別学習も取り入れられるだろう。「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)が重要となる。さらに、形成的評価Bを行い、そこでもめあてが達成できなければ再度補充的学習を受ける。このように、子ども一人一人の達成度によって異なるプロセスで学習が進むことによって、学習に対する満足度が高まり意欲が喚起され続け主体的な学習が促進される。

 支援の充実は、新学習指導要領に掲げられた「主体的・対話的で深い学び」を通して、「何ができるようになるのか」をあらかじめ明確化することによって初めて達成される。個別の指導計画作成にあたっては、心理の専門家と連携し、学習・行動の基盤である認知・情緒面のアセスメントを的確に行うことが必要である。その結果に基づき、一人一人の教育的ニーズを適切に把握し個に応じた学習方略を検討する。全ての子どもたちが「学ぶことは楽しい」と言える学習環境を提供することが、学校教育関係者に求められている。

 

[引用文献]
・安藤壽子「改訂特別支援学校学習指導要領の基本的方向性」宮﨑英憲監修/『特別支援教育の実践情報』編集部・横倉久編『平成29年度版学習指導要領改訂のポイント 特別支援学校』明治図書、2017年、p.12

・中央教育審議会初等中等教育分科会「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」2012年

 

Profile
NPO法人らんふぁんぷらざ理事長
安藤壽子
あんどう・ひさこ 東京学芸大学大学院修了・博士(教育学)。専門はLD(読み書き障害)。横浜市立小学校等教諭・副校長、横浜市教育委員会課長、お茶の水女子大学教授・特任教授を経て現職。学校心理士、特別支援教育士スーパーバイザー(SENS-SV)。編著に『小学生のスタディスキル』、共著に『親子バトル解決ハンドブック』、『ELC 読み書き困難児のための音読・音韻処理能力簡易スクリーニング検査』(共に図書文化)など。

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