聞いて! 我ら「ゆとり世代」の主張 [最終回] 探究・振り返りを大切にした深い学びへ 〜子どもがつながる・子どもをつなぐ授業をめざして〜

トピック教育課題

2023.05.08

聞いて! 我ら「ゆとり世代」の主張
[最終回] 探究・振り返りを大切にした深い学びへ 〜子どもがつながる・子どもをつなぐ授業をめざして〜

滋賀県守山市立中洲小学校教諭
岸本和旭

『教育実践ライブラリ』Vol.6 2023年3

 

 わたしは、教員になって「こんなに奥深い職」に出会えたことを誇りに思っています。授業を通して子どもたちの成長が感じられることや、子どもたちの表情が生き生きと輝く瞬間に出会えることの喜びを常々感じています。子どもや保護者から「先生の授業は楽しい」と言ってもらえた時が、「頑張ってきてよかった」と思える瞬間であり、「もっと頑張りたい」と邁進する活力をもらえる瞬間でもあります。

「逆向き設計」を意識した単元構想

 子どもが、国語科における1つの単元を学び終えた時、どのような資質能力が身についているのか、学習指導要領の指導事項と目の前にいる子どもの実態を基に、つけさせたい力はどのようなものなのかを授業者である教師自身が明確に持つことで、めざすべきところがぶれない指導を心がけています。

 「三年とうげ」(光村図書 三)の学習は、学習指導要領では「〔思考力、判断力、表現力等〕のC読むこと(1)エ 登場人物の気持ちの変化について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像することができる」と位置づけられています。児童の実態を踏まえて、読書経験が少ないと思われる世界の様々な国の民話というテーマで読書活動を行い、物語のおもしろさを紹介することにより、物語の世界に浸る楽しさを味わい、これからの幅広い読書生活へとつなげるようにしていきたい。また、起承転結が分かりやすいという物語の特徴を生かし、話の組み立てを捉えることであらすじをわかりやすくまとめられることにも気づかせたい。という指導観を明確にします。そこから単元終了時の子どもの姿を「話の組み立てを捉えて、世界の民話のおもしろかったことや、心に残ったことを紹介することができる」と明確にして、一時間ごとに到達地点の設定や探究活動の構想へと進みます。最後に、「子どもがしたいこと」と「教師がさせたいこと」がすり合わせられるような魅力的な導入を設定するというサイクルで単元構想を行います。

 このように、単元終了時の子どもの姿→各時間の学習終了時の子どもの姿→各時間の探究活動→単元の導入と「逆向き設計」を意識した単元構想を行うことで、学びのゴールに到達するための一貫した発問や指導の手立て、子どもへの支援を行うことができると考えます。

「子どもがしたいこと」と「教師がさせたいこと」をすり合わせる単元の導入

 単元の導入時には、子どもたちとともに単元のゴールイメージを明確にしていきます。この際、「主体的・対話的で深い学び」の実現のために「子どもがしたいと感じること」と「教師が学ばせたいと思うこと」をつなげることを意識します。物語の範読後、学んだことをどのような形で誰に発信したいかを話し合います。

 「こまを楽しむ」(光村図書 三)の学習は、学習指導要領では、「〔思考力、判断力、表現力等〕のC読むこと(1)ア 段落相互関係に着目しながら、考えとそれを支える理由や事例との関係などについて、叙述を基に捉えることができる」と位置づけられています。子どもたちには、この学習を通して自分たちが伝えたいことの「よさ」を相手に分かりやすく伝えるこつを学ぶことを伝えました。子どもたちは「誰に」「何を」伝えたいかを話し合います。自分たちの生活を振り返って、本校に伝わるルールである「4つのあ」(いさつ、るき方、としまつ、ったか言葉)の意識が低いということに気づき、全校に向けてルールを守るよさについて伝える紹介文をつくり、昇降口に掲示することに決まりました。その後、紹介文を書くためには、この文章からどんなことを学べばよいのかを話し合います。「はじめ・中・終わり」には、どのようなことを書くとよいのか、「中」のそれぞれの段落では、どのようによさを伝えるとよいのか、を学ぶ必要があるということになり、学習計画を子どもとつくりました。

 このように、「子どもがしたいこと」と「教師がさせたいこと」をすり合わせることで、子どもが目的意識を持ち、単元終了時まで思考を止めず、見通しを持って主体的に学習を進めることができました。

子どもがつながる・子どもをつなぐ授業をめざして

 このような授業をめざすきっかけとなったのは、学習中、自分の考えを発表する児童は全体の7割〜8割いるのに対し、友だちが発表した意見に対して自分の考えを発表する児童が1割程しかいなかったことが挙げられます。

 この実態から、学習中に友だちの考えに共感したり、質問・反論したりしながら探究活動を進められる発表の仕方を児童が身につけることができれば、主体的・対話的で深い学びが実現できるのではないかと考え、子どもが友だちの意見を主体的に聞き、考えをつなげ、深めていく手立てとしたハンドサインを使った学習方法「発表の達人」を活用しました。


ハンドサインを使った学習法「発表の達人」

「できた」「わかった」が実感できる授業を

 「発表の達人」を使って学習することで、子どもたちが課題意識を持ち、本文の叙述を基にした話し合い活動を通して教材文の読みを深めることができました。取組みをはじめた6月と取組み中の12月に実施したアンケートでは、指名されたとき、先生にではなく、友だちに向かって発表している(47%→95%)。友だちの発表の中で、分かりにくいところや疑問があったので、質問したことがあった(39%→65%)。振り返りに書いた分かったことを次の時間に活かせたことがあった(52%→65%)。と、6月に比べて多くの児童が友だちや次時とのつながりを意識した学習を行っていることが分かりました。

 今後も、子どもたちが学ぶ目的を持ち、対話を通して多様な意見に触れる楽しさを感じ、資質・能力を獲得できる授業づくりをしていきたいと考えます。そのために、さまざまな研修の場に足を運んだり、先輩教員の方から学んだりしたいです。そして、目の前の子どもたちが「できた」「わかった」「次も挑戦してみたい」と実感できる授業をめざします。

 

 

Profile
岸本和旭 きしもと・かずあき
 1993年生まれ。小学校時代から高校時代まで、学習になかなかついていくことができず、勉強に興味が持てなかったが、予備校時代に初めて「勉強が分かる楽しさ」を教えてくれた国語講師に憧れ、教師を志しました。2017年、滋賀県草津市立玉川小学校から教師生活をスタートさせ3年間勤務した後、守山市立中洲小学校に転任し、現在教師生活6年目。現在は、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、探究活動において子どもが友だちの考えを主体的に聞き、考えをつなげ、深めていく学習方法の確立、そして、子どもが学びを確かにして次時や他教科、日常生活へとつなげる振り返りを行うことのできる学習方法の確立に迫る国語科の授業づくりに力を入れています。
●モットー
楽しくて力のつく学習をめざして

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