保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

吉永公平

保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します! 第11回 ⑧新型コロナウイルス関係

NEWぎょうせいの本

2022.08.05

連載 保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

弁護士・春日井市総務部参事
吉永公平

第11回 ⑧新型コロナウイルス関係

まだ続く新型コロナ禍の中で

 今回は、保育園において法律が関係する場面として第1回でご紹介した①~⑨のうち、⑧新型コロナウイルス関係を解説します。現在は第7波の真っただ中であり、「最前線」の一つである保育園での問題をどのように考えればいいのか、弁護士としてお伝えできる限りでお伝えします。なお、「法的責任」の意味については、第4回をご参照ください。

感染症対策と園児との関わり

 新型コロナ禍との付き合いが長くなったためか、「感染者を一人も出してはいけない。感染者が一人でも出たら大問題である」という考え方は薄れました。その一方で、新型コロナ禍とはいえ、園児への保育の重要性は少しも低下することはなく、保育園の現場では保育士のみなさんの創意工夫のもと、「少しでもいい保育を」と取り組んでいただいています。法的にもそれがベストです。保育士のマスク着用・(消毒・)換気といった基本的な感染予防策を講じていれば、仮にクラスターが発生したとしても、保育園に「法的責任」は生じないと考えられます。

 なお、消毒をカッコに入れたのは、消毒が不要だと述べる趣旨ではなく、接触感染に関する専門家の見解が徐々に変わってきているように思われる点を踏まえたものです。筆者は公衆衛生の専門家ではありませんので、接触感染対策がどの程度重要かについては、言及できません。

園児のマスク着用

 厚生労働省は令和4年2月に、2歳以上の園児につき、可能な範囲でマスク着用を推奨し始めました。しかし、厚生労働省は同年5月に、2歳以上の就学前児につき、他者との距離にかかわらず、マスク着用を一律には求めないとして、方針転換をしました。筆者は公衆衛生の専門家ではないものの、方針転換後の見解に理解を示します。

 ここでの教訓は、いったん厚生労働省等から「お達し」が出ても、その「お達し」をどう受け止めるかというものです。筆者は、方針転換前の見解が出た後・方針転換後の見解が出る前のタイミングである同年4月刊行の拙著『ズバッと解決! 保育者のリアルなお悩み200 園児の呼び方から送迎トラブル、園内事故まで』p.257において、方針転換前の見解に加えて、5歳以下の子どもは必ずしもマスク着用にこだわらなくていいというWHOの見解にも触れながら、「筆者はマスク着用に関する科学の素人ながら、低年齢児へのマスク着用には疑問を感じます。このように、2歳以上の園児に関するマスクの取扱いにつき、現在のところ『絶対の正解』はなく、園の判断が尊重されると思います」と述べました。「お達し」を踏まえながらも「園の判断」をしていくことの大切さを実感する一例でした。

 ただし、日本における「空気」(「空気感染」の意味ではなく、「空気を読む」の意味です)の力は強く、「お達し」に反する独自の方針を取ることの現実的な困難さも、よくわかるところです。

各保育園の判断の限界

 「園の判断」が大切だとはいっても、たとえば保護者から「新型コロナは実在しない。国の発表は噓である。新型コロナ対策は不要である」といった主張をされた場合、ここまで大きな「根本的な問題」について各保育園が独自に判断することは困難です。各保育園は公衆衛生の科学的な知見を有しているわけではなく、日本や他の国家、国際機関等が採用している科学的知見の正しさをチェックする能力がないからです。

 このような場合は、各保育園としては、「日本や他の国家、国際機関等が採用している科学的知見が絶対に正しいとは断言できない」ものの(ただし、そのように保護者に伝えると、保護者対応はより複雑化しますので、伝えない方がいいでしょう)、「日本や他の国家、国際機関等が採用している科学的知見を否定する能力を保育園が有しているわけではないため、多数の専門家が採用している見解に基づいて保育園も対応します」という説明で十分でしょう。一般論としても、世の中の問題を全てゼロから自分で判断することは不可能です。そのため、専門家等の見解を参考にしているはずです。

 なお、2歳児以上の園児に関するマスクの取扱いについては、令和4年2月の時点においても、多数の専門家が可能な範囲でマスク着用を推奨していたとはいい難く、保育園としても判断が難しかったケースだったといえます。

 次回は、最終回として⑨その他について解説します。

 

[著者プロフィール]

吉永公平(よしなが・こうへい)
名古屋大学法学部卒業、名古屋大学法科大学院修了後、2012 年弁護士登録。法律事務所にて勤務した後、2014 年春日井市入庁。現在、総務部参事。職員からの法律相談や職員研修、庁内報の発行、要保護児童対策地域協議会(実務者会議)への参加等を主な業務としている。兼業として、中京大学総合政策学部(地方自治法)・名古屋学院大学法学部(情報法)・名古屋大学法学部(法曹養成演習Ⅳ実務)非常勤講師や、他の自治体や劇場での研修講師も務める。愛知県弁護士会行政連携センター運営委員会委員。1児の父として約3か月の育児休業を取得。

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(発行年月: 2022年4月/販売価格: 2,310 円(税込み))

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