最新法律ウオッチング

月刊「地方財務」

最新法律ウオッチング―水道法改正(2018年12月12日公布)

自治体法務

2019.09.09

最新法律ウオッチング 第97回 水道法改正
(『月刊 地方財務』2019年1月号)

水道法の一部を改正する法律(概要)

 昨年の臨時国会において、水道法の一部改正法が成立した。
 水道法により原則として市町村が経営するものとされている水道事業については、水道施設の老朽化が今後ますます進むと見込まれる一方で、人口減少に伴い、料金収入が減少するとともに、事業を担う人材も不足するなど、深刻な課題に直面しているといわれている。
 このような状況を踏まえ、水道事業の広域連携や多様な官民連携を進めるとともに、水道事業者等に対し水道施設の適切な管理を求めること等により、水道の基盤の強化を図るため、政府は、水道法の改正案を昨年の通常国会に提出した。
 法案は、昨年の通常国会では、衆議院で可決されたが、参議院で継続審査となり、昨年の臨時国会中の12月に成立した。

水道法の改正(詳細)

○水道の基盤の強化・広域連携の推進
 厚生労働大臣は、水道の基盤を強化するための基本的な方針を定めるとともに、都道府県はその方針に基づき、市町村の区域を超えた広域的な水道事業者等の連携等を進めるための水道基盤強化計画を定めることができることとした。
 また、都道府県は、市町村の区域を超えた広域的な水道事業者等の間の連携等の推進に関し必要な協議を行うため、当該都道府県が定める区域において、市町村、水道事業者等を構成員とする広域的連携等推進協議会を組織することができることとした。

○水道施設の適切な管理

 水道施設の老朽化等に対応し、水道施設等の適切な資産管理を進める観点から、水道事業者は、水道施設を良好な状態に保つため、これを維持し、修繕しなければならないこととした。 
 また、水道事業者は、水道施設を適切に管理するための水道施設台帳を作成し、保管しなければならないこととした。
 さらに、水道事業者は、長期的な観点から水道施設の計画的な更新に努めるとともに、水道施設の更新に要する費用を含むその事業に係る収支の見通しを作成し、これを公表するよう努めなければならないこととした。

○水道施設運営権の設定

 官民連携の手法の多様化を図る観点から、水道事業者等は、水道施設の運営等について、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)に基づく公共施設等運営権を有する者に行わせることができることとした。具体的には、地方公共団体が、水道事業者等としての位置付けを維持しつつ、厚生労働大臣等の許可を受けて、水道施設に関する公共施設等運営権(利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を地方公共団体が所有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式であり、コンセッション方式とも呼ばれる)を民間事業者に設定できる仕組みを導入することとした。

○給水装置工事事業者の指定の更新

 給水装置工事事業者の技術的水準等を確保するため、給水装置工事事業者の指定について、5年の更新制を導入することとした。

○施行期日

 この法律は、一部の規定を除き、公布の日(2018年12月12日)から1年以内に施行される。

国会論議等

 国会では、水道施設運営権を民間事業者に設定できるコンセッション方式の導入をめぐって、諸外国には、その導入により、水道料金の高騰や水質の悪化などの問題を招き、再公営化に至った事例が多数あり、また、災害時に民間事業者が責任を持って復旧の対応ができるか、地方公共団体における専門性や人材が失われても十分・適切な管理監督ができるか、民間事業者が水道事業の運営に失敗した場合に地方公共団体が再びこれを運営できるかなどの懸念が示された。これに対し、政府からは、水道の事業基盤の急速な悪化が懸念される中、民間企業の技術や経営ノウハウを活用できる官民連携は有効な対応策であり、現行制度では、地方自治体が水道事業の認可を返上した上で民間事業者が新たに認可を受ける必要があるが、不測のリスク発生時には地方自治体が責任を負えるよう、水道事業の認可を残したまま運営権の設定を可能としたとの説明がされた。
 このような議論を踏まえ、衆参の厚生労働委員会では、政府は、水道施設運営権の設定について、公共性・持続性に十分留意したものとなるよう、地方公共団体において検討すべき事項の具体的な指針を法施行までに明示すること、水道施設運営権の設定の許可に当たっては、地方公共団体においてその運営状況をモニタリングするための適切な体制が確保されているかについて厳格に審査を行うとともに、運営における公共性・公平性・公益性の確保を明確にするための具体的な指標等を示すこと等とする附帯決議が付された。

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