最新法律ウオッチング

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最新法律ウオッチング―公職選挙法改正(2018年7月25日公布・2019年通常選挙に適用)

自治体法務

2019.09.10

最新法律ウオッチング 第96回 公職選挙法改正
(『月刊 地方財務』2018年11月号)

公職選挙法の一部を改正する法律(概要)

 本年(2018年)の通常国会において、参議院の選挙制度についての公職選挙法の一部改正法が成立した。
 参議院の選挙区選挙については、2015年の公職選挙法の改正により、鳥取県と島根県、徳島県と高知県をそれぞれ1つの選挙区とする合区が導入されたが、その改正附則では、19年の参議院通常選挙に向けた選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものと規定されていた。この規定を受けて、参議院では、各党の協議が行われてきたが、本年の通常国会の終盤においても、なお意見の隔たりがある状況であった。
 そのような状況を受け、自民党から、通常選挙が翌年に迫っている中で、通常国会中に公職選挙法の改正を行う必要性があるとして、参議院の定数6増と比例代表選挙制度の見直しを行う公職選挙法の改正案が参議院の議員立法として提出された。他党からも、参議院の選挙制度について、定数を維持し選挙区を11ブロックとする案(公明)、定数を1割削減し選挙区を11ブロックとする案(維新)、選挙区定数2増と比例代表定数2減の案(国民民主)、選挙区について福井県と石川県を合区する案(立憲民主・希望)が提出された。国会審議を経て自民党案が成立した。

公職選挙法の改正(詳細)

○参議院議員の定数の改正

 参議院議員の定数について、選挙区の定数を2人増加し148人とした上で、埼玉県の定数を2人増加し8人とした。これにより、選挙区選挙における議員1人当たりの人口の最大較差は、15年の国勢調査日本国民人口で2・985倍となり、17年の最高裁判決で合憲とされた16年通常選挙時の3・08倍から更に縮小された。また、比例代表の定数を4人増加し100人とした。すなわち、参議院議員の定数は、6人増の248人(19年と22年の通常選挙でそれぞれ3人増)となる。

○比例代表選挙制度の見直し
 
 参議院の比例代表選挙について、立候補の際に政党が届け出る名簿に候補者の当選順位をあらかじめ記載しない非拘束名簿方式を基本的に維持しつつ、全国的な支持基盤を有するとはいえないが国政上有為な人材や民意を媒介する政党がその役割を果たす上で必要な人材が当選しやすくなるよう、政党が、候補者の一部について、優先的に当選人となるようにあらかじめ名簿に当選順位を記載する拘束式の特定枠を設けることができるようにした。
 そして、特定枠の候補者の有効投票は、当該候補者に係る政党の有効投票とみなすものとし、また、同じ政党の候補者の間における当選順位については、特定枠の候補者を上位とし名簿記載の順位のとおりに当選人とし、特定枠以外の候補者はその得票数の最も多い者から順次に定めることとした。
 このほか、特定枠の候補者については、候補者個人としての選挙運動である選挙事務所の設置、自動車の使用、文書図画の頒布・掲示、個人演説会、街頭演説等は認めないこととした。選挙公報の掲載文に関しては、特定枠の候補者については、同じ政党の特定枠以外の候補者の氏名等と区分して、優先的に当選人となるべき候補者である旨を表示した上で、氏名、経歴や当選人となるべき順位を記載すること等により、候補者の紹介に努めることとした。投票所における候補者の氏名等の掲示に関しては、特定枠の候補者については、同じ政党の特定枠以外の候補者の氏名と区分して、優先的に当選人となるべき候補者である旨を表示した上で、特定枠以外の候補者の氏名の次に、氏名や当選人となるべき順位の掲示をすることとした。

○施行期日等

 この法律は、公布の日(18年7月25日)の3か月後から施行され、19年の通常選挙については、改正後の公職選挙法が適用される。

国会論議等

 国会では、自民党案について、改正の意義について質問があり、提出者から、選挙区について1票の較差を是正するとともに、合区が導入され、人口減少地域の民意を国政に届けることを求める声も高まっていることなどを踏まえ、一部拘束式の特定枠を導入し、各政党の自由な選択肢を広げるとの説明がされた。
 また、定数を6増とする理由について質問があり、提出者から、合区対象県を拡大せずに選挙区の較差拡大を抑制するために選挙区の定数を2増するとともに、4県2合区が導入され、人口減少県の民意を国政に届けることを求める声も高まってきていること、現代社会において民意の多様化が著しいことなどを踏まえ比例代表の定数を4増したとの説明がされた。
 参議院の委員会では、今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割・在り方を踏まえ引き続き検討を行い、また、定数の増加に伴い、参議院全体の経費が増大することのないよう、その節減について検討を行う旨の附帯決議が付された。

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