感染症リスクと労務対応

弁護士法人淀屋橋・山上合同

【労務】感染症リスクと労務対応 第8回 ウイルスへの対応による自主休業中の派遣料の扱いについて

NEWキャリア

2020.03.19

新型コロナウイルスに関連して、給料、休業補償、在宅勤務、自宅待機など、これまであまり例のなかった労務課題に戸惑う声が多く聞かれます。これら官民問わず起こりうる疑問に対して、労務問題に精通する弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同所属)が根拠となる法令や公的な指針を示しながら、判断の基準にできる基本的な考え方をわかりやすく解説します。(編集部)

ウイルスへの対応による自主休業中の派遣料の扱いについて

(弁護士 下川拓朗)

【Q8】

 ウイルスの関係で会社である部署を自主的に休業しました。そこで働いている派遣従業員にも休業を命じたところ、派遣会社から派遣料を支払うようにとの要請がありました。支払う必要があるでしょうか。

【A】

 派遣労働者が派遣先で業務に従事することができなくなった場合の派遣料金の処理については、一次的には、基本契約や個別契約でその処理について定めがある場合には、その定めに従い処理されることになります。たとえば、派遣労働者が、欠勤、遅刻、早退、年次有給休暇の取得、その他派遣先の帰責事由によることなく、個別契約に定める就業時間に就労しなかったときは、派遣元は、派遣先に対し、当該時間分の派遣料金を請求することができないという趣旨の条項が想定されます。 
 また、そのような定めがない場合には、原則として、民法の規定によって対応するよりほかありません。
 その場合、派遣元、派遣先の双方の責に帰することができない事由によって、派遣労働者が業務を履行することができなくなったときは、派遣先は、派遣料の支払いを拒むことができます(民法536条1項)。他方で、派遣先の責によるべき事由で就労できなくなった場合には、派遣料金が請求できることになります(民法536条2項)。


 いずれにせよ、派遣先が、ウイルスの関係で、会社のある部署を自主的に休業にし、そこで働いている派遣労働者にも休業を命じた場合、派遣先に帰責事由があると評価することができるかが問題となり、結局は個別具体的な事情から総合的に判断しつつ派遣先と派遣元とで協議する必要があります。
 たとえば、派遣先が、就労できる状況にあるにもかかわらず、新型コロナウイルス対策のために、自発的に派遣従業員の就業を禁止した場合には、その規模や状況、業務内容等によっては、派遣先の責に帰すべき事由で就労できなくなった場合に該当するといえる可能性がありますから、派遣会社は、派遣先に対して派遣料を請求できる根拠があるといえます。他方で、派遣従業員が新型コロナウイルスに感染している蓋然性が高い等の場合には、その緊急性から派遣元は、派遣先に対し、派遣料の請求ができないという結論になる場合が多いと思われます。
 この点、派遣会社が派遣従業員に対して、100%の賃金を補償しているのか、労働基準法26条に基づく休業補償をしているのか、全く補償していないのか、あるいは別途補助金のようなものを受けるのかという点も、事情としては重要であるといえます。なぜなら、今回のような非常事態においては、誰かが一方的に負担を強いられるというのではなく、なるべく協議によって負担を公平化し、困難を乗り切るという発想が重要だからです。
 以上より、状況に応じて、派遣先と派遣元との間で、十分に協議して妥当な解決を得ることが強く求められます。

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弁護士法人淀屋橋・山上合同は、あらゆる分野の法律問題について、迅速・良質・親切な法的サービスを提供している法律事務所。2020年3月現在64名の弁護士が所属。連載を担当したメンバーは、主に企業側に立って、雇用や労働紛争に係る相談対応、法的助言から裁判手続、労働委員会における各種手続の代理人活動等を行っている。

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