感染症リスクと労務対応

弁護士法人淀屋橋・山上合同

【労務】感染症リスクと労務対応 第6回 会社内でウイルスの集団感染!会社の法的責任が問われる可能性は?

NEWキャリア

2020.03.19

新型コロナウイルスに関連して、給料、休業補償、在宅勤務、自宅待機など、これまであまり例のなかった労務課題に戸惑う声が多く聞かれます。これら官民問わず起こりうる疑問に対して、労務問題に精通する弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同所属)が根拠となる法令や公的な指針を示しながら、判断の基準にできる基本的な考え方をわかりやすく解説します。(編集部)

会社内でウイルスの集団感染!会社の法的責任が問われる可能性は?

(弁護士 高 芝元)

【Q6】

会社内でウイルスの集団感染が生じた場合には、会社が法的責任を問われる可能性はありますか。

【A】

可能性はあります。ただ、その可能性は相当程度低いものと考えられます。

安全配慮義務及び損害賠償請求との関連

 労働契約法5条は、安全配慮義務について定めているところ、使用者は、本連載「Q5」で述べたように、会社内で従業員がウイルスに感染していることがわかった場合には、保健所に告知・連携し、経路や接触者の範囲を確認のうえ、消毒作業や他の従業員に対する周知などの「必要な配慮」をとらなければならないと考えられます。
 そして、この安全配慮義務は、労働契約上の義務であると同時に、不法行為法上の注意義務をも構成すると解されています(電通事件・最高裁判所平成12年3月24日判決(最高裁判所民事判例集54巻3号1155頁)参照)。
 したがって、上記義務の不履行とウイルス感染との因果関係が認められる場合には、会社において、債務不履行に基づく損害賠償責任や不法行為に基づく損害賠償請求などの法的責任を問われる可能性があります。ただ、その可能性は相当程度低いものと考えられます。

 損害賠償請求のためには、安全配慮義務違反や因果関係につき、自ら主張・立証しなければなりませんが(航空自衛隊芦屋分遣隊事件判決・最高裁判所昭和56年2月16日判決(最高裁判所民事判例集35巻1号56頁)参照)、特に因果関係の立証は相当難度の高いものと考えられます。
 なぜなら、社会的にウイルスが蔓延している状況下においては、いつどこでウイルス感染したかについて明確に立証できず、会社の安全配慮義務違反が必ずしも従業員のウイルス感染と関連するとはいえないためです。
 以上より、会社が損害賠償請求などの法的責任を問われる可能性は低いと考えられます。

 しかし、法的責任を問われる可能性をできる限りなくすことや、企業イメージの向上、事業を持続させる必要などから、集団感染を避けるために上記のような「必要な配慮」を会社内で行うことが、企業が社会から求められる役割と考えられます。

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弁護士法人淀屋橋・山上合同は、あらゆる分野の法律問題について、迅速・良質・親切な法的サービスを提供している法律事務所。2020年3月現在64名の弁護士が所属。連載を担当したメンバーは、主に企業側に立って、雇用や労働紛争に係る相談対応、法的助言から裁判手続、労働委員会における各種手続の代理人活動等を行っている。

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