公務員のための人材マネジメント
「本物のスペシャリストに育てる」――『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)より
キャリア
2019.11.18
「本物のスペシャリストに育てる」
(株)ぎょうせいはこのほど、『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)を公刊いたしました。人材育成を推進する管理職だけでなく、基本を学んでステップアップしていく若手層にも役立つ内容です。具体例を交えつつ軽快な語り口で解説する本書から、内容を一部抜粋してお届けします。(編集部)
ジェネラリスト?スペシャリスト?
「ジェネラリストとして育てるべきかスペシャリストとして育てるべきか。」研修でよく問われる質問の一つです。私の答えは明確です。それは「スペシャリスト」です。その理由は二つあります。専門性が求められないとなれば、職員は自分のキャリアを前向きに捉えることができず自己啓発に励みません。そしてもう一つの理由は、現実にジェネラリストと呼ばれている職員の多くは、「結果としてのジェネラリスト」であって、「何でも屋」に過ぎないからです。「何でも屋」集団は差別化ができず、競合他社に勝ち抜くことができません。今の百貨店業界の不振ぶりを見ても明らかです。
「何でも屋」が必要とされたのは、役所が情報を独占し、役所内部で全て仕事が完結していた時代でした。百貨店に例えるならば、各地域の百貨店が情報発信の唯一の拠点だった時代です。
管理するスペシャリスト
しかし、今や知識情報は役所の外にも存在し、さまざまな組織や住民と協働してやっていかなければ行政が展開できない時代です。高度に専門的な情報が役所の外に溢れている時代に、専門性の欠如により職員がその情報を理解できず、他者と協働することができないという事態は避けなければなりません。
AIの登場にも影響されます。AIでは処理できないような高度で専門的な人材が、これから必要とされる職員の姿です。
「全員スペシャリストに育成すべき」との主張に対して、「管理職は必要ないのか?」との反論があります。しかし、管理職は文字通り「管理するスペシャリスト」であり、「人に成果を出させるマネジメントのスペシャリスト」であるはずです。
これまでは、管理職は経験さえ積めば誰でもできるように思われ、また、人事部門も高い専門性が必要な部門とはみなされてきませんでした。しかし、人事は本来極めて専門性の高い業務です。
部下にダントツの専門性を身につけさせ、本物のスペシャリストに育てる。時代は間違いなくその方向に向いています。
「本物のスペシャリストに育てる」POINT
・「何でも屋」を意味するジェネラリストの時代は終焉を迎えている。
・管理職もマネジメントのスペシャリストでなければならない。
・AIにとって代わられない「本物のスペシャリスト」に部下を育てよう。