公務員のための人材マネジメント

高嶋直人

「自分の代役をさせてみる」――『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)より

キャリア

2019.11.19

「自分の代役をさせてみる」

 (株)ぎょうせいはこのほど、『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)を公刊いたしました。人材育成を推進する管理職だけでなく、基本を学んでステップアップしていく若手層にも役立つ内容です。具体例を交えつつ軽快な語り口で解説する本書から、内容を一部抜粋してお届けします。(編集部)

幹部への説明

 有名な山本五十六の言葉があります。
 「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け承認し、任せてやらねば人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず」という言葉です。
 今でも部下育成の箴言として語り継がれる言葉です。冒頭の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて」の部分は、OJTの要素が順序正しく示されています。上司の仕事を代わりに部下にやらせてみることは、この山本五十六の言葉を具現化した行動と言えます。大変効果の高い部下育成方法です。
 幹部への説明は貴重な育成機会です。まず何度か部下を帯同させ、どのように幹部に説明するかを上司が手本を示します。次に、幹部に説明してもらう機会をいずれ用意する旨を伝えます。そして、準備方法やコツを教えます。一人で行かせるのではなく上司も一緒に行き、部下の説明に立ち合います。終わったら、よかった点を褒めてから改善点をフィードバックします。手柄は部下のものにして自信を与えます。

自分は光らず、部下を光らせる

 頻繁に部下を帯同させるが、一度も代役をさせない。そんな上司の対応は、せっかくの育成機会を無駄にします。「やってみせ、言って聞かせ」た後は「させてみる」必要があります。
 「全部を任せる」ことも時には大事です。管理職研修の参加者に、「今一番育成されているのは、皆さんではありません。上司がいない中で代わって仕事をしている皆さんの部下です。」と話すことがあります。怪我で欠場した選手に代わって出場した選手が急速に成長し、レギュラーの座を射止めるケースは珍しくありません。
 一度任せた以上は、引き取らない覚悟を持ちましょう。部下の前で上手く仕事をさばき、「悦に入る」上司になってはいけません。自分は光らず、部下を光らせましょう。
 「能ある鷹は爪を隠す」という言葉があります。部下の前で上司は、「爪を隠す能ある鷹」でありたいものです。

「自分の代役をさせてみる」POINT

・自分の代役をさせることは、部下に成長の機会を与え、飛躍のきっかけを作る。
・「やってみせる」に終わらず、「やらせて」みよう。
・部下の前で上司は、「爪を隠す能ある鷹」を目指そう。

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新人時代に教えるべき公務員の基本から、将来的なキャリアを考えさせる方法まで

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公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法

2019年10月 発売

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高嶋直人

人事院 公務員研修所客員教授

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。人事院公務員研修所主任教授、財務省財務総合政策研究所研修部長などを経て現職。人事院、財務省、国土交通省、自治大学校、市町村アカデミー、マッセOSAKA、東北自治研修所、全国の自治体などにおいて「マネジメント」「リーダーシップ」「働き方改革」「ハラスメント防止」等の研修講師を務める。月刊『ガバナンス』に「人財を育てる“働きがい”改革」連載中。

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