公務員のための人材マネジメント

高嶋直人

「目標は部下に決めさせる」――『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)より

キャリア

2019.11.20

「目標は部下に決めさせる」

 (株)ぎょうせいはこのほど、『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)を公刊いたしました。人材育成を推進する管理職だけでなく、基本を学んでステップアップしていく若手層にも役立つ内容です。具体例を交えつつ軽快な語り口で解説する本書から、内容を一部抜粋してお届けします。(編集部)

目標を間違って設定すると

 目標を正しく設定することは、部下のモチベーションを引き出す上でとても大事です。正しく目標を設定すると、達成感を感じさせモチベーションを引き出すことができます。しかし、間違って設定すると、目標が逆にモチベーションを下げてしまいます。
 最近は、新たな人事評価制度が導入されています。人事評価制度の多くは、業績評価と能力評価の二つから構成されています。そして業績評価は、MBO(目標管理)という方法を用いて行われるのが主流です。目標管理による業績評価は、評価期間前に目標を決め、評価期間中にその目標がどれだけ達成できたかを軸に評価する方法です。目標は評価される部下が事前に人事評価シートに書き込み、上司に提出しそれを基に期首面談で決定します。上司は人事評価制度のルールに則り、組織の目標と職員の目標が整合的か、検証可能か、現実的か、期限内に達成可能かなどさまざまな点をチェックし、必要な場合は部下に修正を求め、再提出させるというのが一般的なプロセスです。
 この過程の中で最も大事な点は、「目標はあくまで部下自身が決める」という点です。実は上司が一方的に修正を指示したというケースは少なくありません。しかし、人事評価制度のそもそもの目的を思い起こす必要があります。人事評価制度はモチベーションを引き出す手段です。

目標をノルマにしない

 もう一つ、モチベーションを左右する重要な要素は「自律性」です。
 そもそも、MBO(目標管理)とは「目標だけで管理する」という意味です。自律が前提です。MBOは、Management By Objectivesを省略したものですが、ドラッカーはその後にand self-controlと続けています。そもそもドラッカーの提唱したMBOはノルマ主義とは正反対の概念です。「目標を管理する」のではなく、「目標だけで管理する」のが、本来のMBO(目標管理)です。
 日本ではMBOが「目標管理」と訳され、その後、人事評価制度に取り入れられました。特に、公務組織では人事評価制度として導入され、部下への管理を強化してしまう結果を作ってしまっています。本来、MBOは管理を強化するのではなく、管理を弱めて自発的に仕事ができる環境を作り出そうとしたものです。管理を強化して部下のモチベーションを下げてはいけません。そうしないためには、「目標をノルマにしない」ことが大事です。目標は決して「押し付けず、部下に決めさせ」ましょう。
 目標まで管理し、管理を強化すると、部下から自律性を奪いモチベーションを下げます。裁量を与え自律性を確保することが何より大事です。目標は必ず部下に決めさせ、ノルマにしないように心がけましょう。

「目標は部下に決めさせる」POINT

・目標管理の本来の趣旨は、「目標だけで管理する」ことである。
・上司が一方的に目標を決めてしまうと、ノルマとなり、部下のモチベーションを下げる。
・目標は必ず部下に決めさせ、自律性を確保し、モチベーションを引き出そう。

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新人時代に教えるべき公務員の基本から、将来的なキャリアを考えさせる方法まで

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公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法

2019年10月 発売

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高嶋直人

人事院 公務員研修所客員教授

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。人事院公務員研修所主任教授、財務省財務総合政策研究所研修部長などを経て現職。人事院、財務省、国土交通省、自治大学校、市町村アカデミー、マッセOSAKA、東北自治研修所、全国の自治体などにおいて「マネジメント」「リーダーシップ」「働き方改革」「ハラスメント防止」等の研修講師を務める。月刊『ガバナンス』に「人財を育てる“働きがい”改革」連載中。

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