公務員のための人材マネジメント
「公務員の基本を理解させる」――『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)より
キャリア
2019.11.13
「公務員の基本を理解させる」
(株)ぎょうせいはこのほど、『公務員のための 人材マネジメントの教科書 部下を育て活かす90の手法』(高嶋直人/著)を公刊いたしました。人材育成を推進する管理職だけでなく、基本を学んでステップアップしていく若手層にも役立つ内容です。具体例を交えつつ軽快な語り口で解説する本書から、内容を一部抜粋してお届けします。(編集部)
公務員らしい公務員?公務員らしくない公務員?
公務員の中にも「公務員らしくない公務員」を肯定的な言葉として使う人が多いという現状をどのように受け止めるべきでしょうか。「公務員らしい」という言葉に込められた悪い意味を公務員の間でも共有している。これは、残念な事態と言わざるを得ません。この風潮によって、新人研修において、これから公務員として頑張ろうとしている新人に対し最初から「民間に倣え」という内容の研修を実施し、しかもそのことに誰も違和感を持たない状況が一部にあります。
また、このような風潮は、現場の上司に新人教育に関する悩みを抱かせます。自分が思う公務員像を教えていいのだろうか。言い換えるならば、「公務員らしい公務員」に育てるべきか、それとも「公務員らしくない公務員」に育てるべきか迷うのです。
公務組織に改革は必要です。しかし、その組織の一員となることを目指し努力し、ようやく夢が叶い、希望に満ちた新人公務員に対し、いきなり組織を否定するような教育をすることには疑問があります。
「公務の専門家」であるために
公務員は「公務の専門家」でなければなりません。それには、公務を考え、公務員としての基本を理解させる必要があります。自分の仕事と組織に誇りが持てるような動機づけをすることが公務員の新人教育の一番の目的であるべきです。
つまり、肯定的な意味で「公務員らしい公務員」に育てるべきです。全ての職業にはその職業ならではの専門性が求められます。公務員も決して例外ではありません。「公務の専門家」として高度なレベルの専門性が求められます。
厳しい公務員批判が長く続いたせいで、自分の職業、組織についてこれだけ自虐的である集団は公務組織の他にないかもしれません。自分達を客観視して謙虚に現状を改革する姿勢は大事ですが、公務員になった新人の教育をいきなり逆説的な戒めからスタートすることには疑問があります。
新人には、公務員批判を早く教えて、組織改革の担い手となることを期待したくなります。しかし、それも公務員としての基本を理解して初めて正しく理解できます。研修も、そして現場の上司が行うOJTも、新人公務員に対しては正攻法で、公務員の基本をしっかりと教え込むことからスタートしましょう。
「公務員の基本を理解させる」POINT
・肯定的な意味で、「公務員らしい公務員」を育てる。
・公務員批判を謙虚に受け止め、改革を図ることは必要である。
・しかし、新人公務員には正攻法で、まず公務員の基本を教えよう。