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相手を動かす話し方

八幡紕芦史

相手を動かす話し方 第4回 企画が通る上手な提案のしかた

NEWキャリア

2019.07.26

相手を動かす話し方
第4回 企画が通る上手な提案のしかた

(月刊『ガバナンス』2008年7月号)

 最近、田中君は会議でも積極的に発言できるようになり、職場での存在感も大きくなってきた。ある日、上司から、職場環境を改善する方法について、企画を立てて提案するよう指示された。職場を見渡すとデスク上に書類が散乱しており、住民の目に触れることもある。書類の整理を徹底しなければならない。

 田中君は、この件については、日頃から問題意識をもっていただけに、自信をもって企画を書き上げた。1週間後、上司に企画を提案した。ところが、話し終わったとたん「これじゃダメだな」と却下されてしまった。

 

企画が通らない理由は?

煮詰まってしまった若手会社員

 企画を説明するとき、内容の是非はともかく、企画そのものが理解されないことが原因で却下されることがある。ひょっとすると、田中君の企画の内容が良くないのではなく、企画そのものが上司に理解されなかった可能性がある。よほどのことがない限り、人は理解できないことに「イエス」と言わないものだ。

 たとえば、あなたが企画の内容を説明するとき、まず、企画立案に至る背景を述べ、現状の問題を説明するだろう。続けて、「そもそも問題とは…」などと、そもそも論を展開したとしよう。そうすると、相手は欠伸をかみ殺すのに忙しくなる。もし、それが延々と続くと、途中で本当に眠ってしまう。たとえ、目を開けて聞いていても、頭の中は昏睡状態かもしれない。

 たぶん、あなたは、話のはじめに「きちっと、前提を共有しておかなければ、話は続かない」とか、「問題点を確認しておかなければ、内容は理解してもらえない」などと思っている。しかし、相手にとって、それは本当に聴きたいことだろうか。「そんなことは百も承知だ」と思うことをぐだぐだ説明されると、「わかり切っているのに、さらに何が言いたいのか」と、相手は別の意図があるのではと誤解する。

 これまでも繰り返しお話ししてきたが、聴きたいことが話されないと、相手は話の内容を理解する努力を放棄してしまう。前提が長い話は、最初のうちは、「何のことだろう?」と相手の好奇心をかき立てる。けれども、それが続くと嫌になり退屈する。そのうちに、最初の好奇心が怒りに変わる。

 つまり、理解されないのは、自分の都合で話を組み立て、相手が聴きたいことを話していないからだ。聴きたいことが最初に話されると、相手はあなたの話に興味をもつ。そして、もっと知りたいと思う。そうすれば、あなたは相手を自分の話に引き込むことができる。

最初に企画の効果を述べる

 では、相手が聴きたいこととは何だろうか。きっと、あなたの企画を実行したときに、どのような効果が得られるか、まず、それを知りたいはずだ。企画に至る背景や、問題の確認、あるいは、そもそも論は、その後でいいと思っている。

 あなたが企画を提案する場合は、最初に、「これから説明します企画を実行すると、職員のデスクはいつもクリーンな状態に保つことができます」とか、「この企画の目的は、職場環境を改善し住民に好印象を与えることです」などから話し始めることだ。

 つまり、企画がもたらす効果から話していく。さらに、その効果には、相手の利益がなければならない。たとえば、「この企画の目的は、私が気持ちよく仕事ができるよう職場の環境を整えることです」などと、目的が単なる自分の利益であれば、相手は聴く意欲をなくしてしまう。「勝手にやれば…」と思うだろう。もし、話の冒頭で相手の聴く意欲を高めることができれば、あなたが言いたい企画の背景や経緯も好意的に聴いてくれる。

 相手に理解をさせたいなら、このように、自分が話したい順番と逆に話を組み立てることだ。たとえば、問題解決の企画を説明するとき、おそらくあなたは、「問題→原因→解決策」の順番で話をするだろう。「まず、現状はこんな問題が発生しています」と説明し、「この問題の原因は…です」と述べ、そして、最後に「このようにすれば、問題が解決します」と話を展開する。

 なぜなら、この組み立てはあなたにとって話しやすいからだ。どうして話しやすいのだろうか。それは、あなたの思考プロセスと同じ順番だからだ。頭で考えた通りに話せば、話しやすいのである。

 しかし、相手はあなたの思考の結果を知りたいと思う。つまり、解決策とその効果だ。そこで、伝えるプロセスは「解決策→問題→原因」の順番にする。「今後は、このように実行します」と解決策を示し、「なぜなら、このような問題があるからです」と問題を説明する。そして、「その問題の原因は、このように考えます」と話を展開する。つまり、逆立ちをして、相手に伝えると理解されやすいわけだ。

効果の実現を証明し合意を得る

合意形成のイメージ

 冒頭で企画の効果を述べると、相手は「なぜ、そうなるのか?」と、その理由を知りたくなる。そこで、あなたは、その効果がなぜ実現できるかを説明する。

 たとえば、「職員が住民の立場に立って職場を見直す」、「整理整頓の仕方を職員で共有する」、「整理整頓をルーチンの仕事にする」などと理由を述べて効果が実現できることを証明する。そして、「よって、職員のデスクはいつもクリーンな状態に保つことができます」と再度企画の効果で話を締めくくる。そうすれば、相手はあなたの企画を理解し、ゴー・サインを出す可能性が高い。

 しかし、理解することと、合意することは別のものだ。たとえば、「キミの言うことはわかった。だけどねえ…」とか、「なるほど、よくわかった」と言いつつも、しばらくして、「あの件だけど…、やっぱりダメだね」などと、合意してくれないこともある。

 世の中には唯一無二の正解は存在しないから、何事にでもいくつかの方法論がある。ところが、あなたは、企画を立てる際に、「これだ!」と思って、ひとつのアイデアに飛びつく。そして、飛びついたアイデアを肉付けしながら企画書を書く。自分ではベストと思っていても、相手は別の理由で、あなたの企画を却下することもある。

 理解されただけでは不十分だ。理解され、合意されなければ、あなたの努力は水の泡。合意されるためには、他の選択肢をつぶしておかなければならない。A案もあれば、B案もある。さらにC案もあるだろう。これらをあらかじめ多面的に検討しておくことが必要だ。

 そして、企画を提案する席では、「この問題を解決するには、A案とB案とC案があります。効率性の観点から総合的に検討すると、B案が一番良いと思います」などと話す。そうすれば、相手は、「よし、それでいこう!」と、あなたの企画に合意し行動してくれる。

 

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。日本におけるプレゼンテーションの先駆者。著書に『パーフェクト・プレゼンテーション』『自分の考えをしっかり伝える技術』『脱しくじりプレゼン』ほか多数。

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