公務員が読みたい今週の3冊

ガバナンス編集部

公務員が読みたい今週の1冊【著者インタビュー編】──「『みんな』って誰?」

NEWキャリア

2025.02.10

今週、何読む?

読書の習慣をつけたいと思いながら、まだ始められていない…。
日々読書を嗜んでいるが、そろそろネタ切れ…「次は何を読もうか」検討中。
そんな公務員の方はいませんか?

「公務員なら読んでおきたい」業務に役立つ必携図書や、「公務員の皆様が楽しく読める」おすすめ図書をガバナンス編集部がピックアップ。

公務員が読みたい今週の3冊」では毎週2~3冊をご紹介。
特別編「公務員が読みたい今週の1冊」ではたっぷりの著者インタビューとともに、おすすめの1冊をじっくりとご紹介します。

「今週読みたい図書」の選定にぜひお役立てください。

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災害に見舞われた人々はどう活力を取り戻していくのか

「「みんな」って誰?災間と過疎をのびのび生きる」の表紙画像

「みんな」って誰?

災間と過疎をのびのび生きる

宮本 匠・著
世界思想社/1,700円+税

 

著者プロフィール

宮本 匠氏の写真

宮本 匠(みやもと・たくみ)
大阪大学大学院人間科学研究科准教授

1984年大阪府東大阪市生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。2004年新潟県中越地震の被災地でのアクションリサーチをはじめとして、内発的な災害復興はいかに可能かという問いをもちながら、東日本大震災や熊本地震などの被災地で支援活動を通した研究を行っている。共編著に、『現場でつくる減災学』(新曜社、2016年)、近著に「人口減少社会の災害復興の課題─集合的否認と両論併記」(『災害と共生』、2019年)がある。特定非営利活動法人CODE海外災害援助市民センター副代表理事。

 

「みんな」って誰? 災間と過疎をのびのび生きる

── 著者インタビュー

 

 災害前もなく災害後もない。繰り返し起きる災害と災害の間にくらしがある。2024年に能登半島を襲った二度の大きな災害は、私たちが「災間」の時代に生きていることを痛感させる出来事だった。

 「災間」の時代を、どう豊かに歩んでいくか。本書は、人々の間にある心や、集団の力学を探究する心理学(グループ・ダイナミックス)の視点から、この問いに対する答えを丹念に探る。新潟県中越地震の被災地など、過疎が進む地域の復興現場を主に取り上げているが、災害復興に限らず、様々なことが「右肩下がり」となっている時代における個人のあり方、共同体のあり方まで、視野は広い。

 2004年、著者の宮本匠さんが大学2年の時に中越地震が発生。ボランティアとして中越を訪れた際、村民が鍬や鋤をふるい、自力で道路を直す姿に衝撃を受けた。

「過疎が進む村と聞いて、お年寄りたちが絶望して過ごしていると思っていた。ところが行ってみると全然違う。とにかくたくましいし、明るい。またこの人たちに会いたいと心から思った」

と宮本さん。

 中越に通うようになり、大学4年の時に移住。この体験を原点として、長期的な復興に関わりながら、内発的な復興や支援者の役割などに着目した研究を続けてきた。

 

 本書では、被災地の住民たちと共に過ごした経験をたどったエスノグラフィを軸に、支援者の関わり方、地域や集団の内発的な変化、復興が進まない背景など、多面的にひも解く。

 書名の「みんな」とは、集団を包む空気のこと。本書では、「裸の王さま」を例に挙げて、「裸だ!」というひと言をきっかけに空気が転換していく構造をわかりやすく説明する。人々の間で一緒に過ごして話を聞き、かけがえのなさに気づき、言葉にし、空気を動かし力に変えていくという支援や復興のありようを、具体的にイメージすることができる。かけがえのなさとは、珍しい野草かもしれないし、小さな生物かもしれない。過酷な環境下でも、その人なりの何かを大切にすることで、尊厳をもって一歩を踏み出せるのではないだろうか。

「本を通して読者と対話をしたくて、研究書と見られないよう工夫した」

と宮本さん。

 その一つがほのぼのとしたカバー絵だ。「被っているのは菅笠です」。中越では菅笠が重宝されているという。さらに、カバー絵と同じ人物が腕組みしているイラストが本文各所、ひと呼吸おいて読者に考えてほしいところに登場する。これも対話の仕掛けだ。自治体職員の人数が減る中、従来どおりの役割分担では立ち行かない。

「様々な人たちがテーブルを囲めるような場を作っていくことが大切。『われわれごと』としてのガバナンスに取り組むにはどうしたらいいか、本書を通して考えていただけたら」

と宮本さんは力をこめた。

 

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