時事問題の税法学 第20回 滞納対策

NEW地方自治

2019.07.26

時事問題の税法学 第20回

滞納対策
『月刊 税』2017年6月号

地方税の滞納問題

 憲法第14条が定める平等原則は、税の領域では、われわれの税負担は公平かという理念にいきつく。租税公平(平等)主義の論理である。かつてゴルフ場利用税の前身である娯楽施設利用税がゴルフ場利用者に課せられることが争点となった事例(本連載平成28年5月号)や寡夫控除の所得制限が議論された事例(同平成29年5月号)では、担税力すなわち経済力により税負担に差が出ることは、合理的な差別というのが司法判断であった。俗にいえば、金持ちが、税金を多く払うことは差別ではないということだろう。

 確かに極論ではあるが、ゴルフ場に行かなければ課税はないし、寡夫家庭でも、現在では福祉制度も改善されてきた。税制とはいえ、納税者自身の対応や福祉政策により不公平感も緩和される。

 しかし明らかに平等原則に反しているにも関わらず、納税者が司法に救済を求める術がないものとして、税の滞納問題がある。真面目に納税している者からすれば、正直者がバカを見るという感覚に陥る事態といえる。申告漏れとか所得隠しと報道される事案では、税法の解釈と適用という領域で課税当局と納税者の見解の相違が発生する可能性も否定できない。ところが滞納は、納税者自身も認識している確定した租税債権に関わることであるから悪質といえる。とくに応益負担とされる地方税の場合は、問題が大きい。

 平成27年度に滞納された地方税のうち全国の自治体が「回収不能」と判断した額が1237億円に達したと報じられた(日経新聞4月18日)。これは自治体が抱える地方税の滞納額全体の約1割にあたるという。自治体が回収できないと判断し、決算に損失として計上した不納欠損額の合計をまとめた結果とされる。全国的な自治体の欠損額の公表は初めてだそうだ。法人向け課税が多い都道府県分は369億円、個人向けが多い市区町村分が867億円だった。回収不能かどうかの全国的な統一基準はなく、自治体の運用に委ねられている。回収不能の背景には、倒産企業からの回収、生活保護世帯や低所得世帯の回収が難しくなっていることが挙げられている。しかし、財政健全化と徴税業務を効率化するため、不良債権化させずに積極的に損失処理している自治体があるという報道にも気になる。

租税債権

 まさか積極的に損失処理をするとは、時効を待たずに機械的に処理手続を執行しているとは思わないが、業務の効率化の解釈に混乱があるかもしれない。

 一般企業において、例えば法人税法では債権に対する貸倒損失の計上について課税庁の判断は厳しい。債権確定後における債務者との交渉過程は重視される項目である。それ以前に債権回収は企業の死活問題につながる。

 このことは租税債権でも同様のはずである。確かに自治体には、財政健全化に対する累積赤字の解消のために、不良租税債権を切り捨てても、「親方日の丸」という連帯保証人の存在があるから、倒産はしない。企業と異なり、債権回収を怠ったという経営責任も問われることはない。納税義務を果たした者の不公平感が残るだけである。結局、滞納者のごね得であり、債権者である自治体の根負けといえる。本来、課税から徴収のプロセスは税務行政の根幹という論理からすれば行政の怠慢であり、放棄といわざるを得ない。

 もっとも、まさしく受益者負担である国民健康保険、学校給食、公立保育園などに係る費用すらも滞納する者がいるぐらいであるから、税など滞納することは平気なのかもしれない。

 そうはいっても、滞納徴税の強行策も弊害がある。滞納者がいわば逆ギレして、市役所に放火した事件(平成25年7月兵庫県宝塚市・平成27年12月東京都稲城市)なども出現している。福島県では、生活再建の足を引っ張るとして、県税滞納者の差押えを控えるという報道もあった(読売新聞平成25年12月28日)。また、差押禁止財産である児童手当が振り込まれた県税滞納者の預金債権を差し押さえた鳥取県の処分を違法と指摘した裁判所の判断も忘れてはならない(広島高判平成25年1月27日)。

 滞納対策は、悩ましい問題である。

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