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こんなときどうする!?知っておきたい危機管理術

酒井明

高齢運転者による交通事故をいかに減らすか

NEWキャリア

2019.04.15

知っておきたい危機管理術第35回 高齢運転者による交通事故をいかに減らすか

『地方財務』2017年12月号

 高齢化により、高齢者の交通事故が増えている。なかでも、高齢者が加害者になるケースが増えている。平成28年末の警視庁の統計によると、平成28年の都内における交通事故の総件数は約3万2000件で、平成19年の約6万8000件と比べ半減している。

 一方、65歳以上の事故発生率は、平成28年は総件数の約22%を占め、平成19年と比べて約1・7倍と急激に伸びている。

 交通事故発生件数は減少しているが、65歳以上の高齢運転者の交通事故は右肩上がりである。

連日報道される高齢運転者の事故

 自動車事故といえば、以前は「若者のスピード違反」「不注意による事故」と決まっていた。

 しかし最近では、「高齢者が高速道路を逆走した」「アクセルとブレーキを踏み間違えた」「電車の線路上を走った」等々、メディアで毎日のように報じられている。高齢者が引き起こす自動車事故が社会問題化しているが、一向に減っていない。

 警察庁の平成27年度の運転免許全国統計によれば、65歳以上の高齢者の運転免許保有者数は約1700万人。全体の約8200万人のうち20%を超え、そのうち75歳以上は500万人を超える。

認知症検査の効果に注目

 警察も手をこまねいている訳ではない。2017年3月に改正道路交通法が施行された。

 75歳以上の高齢運転者は免許更新時に認知症の検査が義務づけられた。「認知症の疑いがある」と判定された場合は、医師の診断が義務づけられる。認知症検査で適性検査に合格しない場合や診断で認知症とされた場合は、運転免許は取り消される。

 読売新聞のアンケート調査によると、「認知症の疑いがある」75歳以上の高齢運転者は約6万5000人にも上るとされている。

 この法改正によって高齢運転者の交通事故がどの程度減少するのか注目される。

衰えを自覚できない高齢者

 高齢運転者は、自分では安全運転を心掛けているつもりでも、客観的にみると安全運転とはいえない場合がある。加齢に伴う動体視力の衰えや反応時間の遅れなどの身体能力の低下は受け入れざるを得ない。しかし、高齢運転者は過信運転しがちである。

 警視庁の統計によると、事故を回避する自信のある割合は意外にも70代後半の運転者が最も高く、70代前半と続く。長年、車を運転しているため、過度な自信につながるのであろう。

 高齢者は、自分にとって都合の悪い情報は聞き入れない、身体の衰えを認めようとしない傾向があるといわれる。ここに実態と認識の大きなずれがある。

 警視庁の2017年の統計によると、65歳以上の運転者による交通事故の主な要因は安全不確認(37%)、交差点安全進行(22%)、前方不注意(13%)、動静不注視(7%)となっている。

 トップの安全不確認は、右折・左折の際に対向車や後方の確認をしないで発進してしまうことなどである。安全確認は運転者のみならず、歩行者にも必要な基本的な事故対策である。

簡単ではない免許証の返納

 究極の事故対策は高齢者に運転させないことであるが、免許証を取り上げれば良いという単純な問題ではない。高齢者の自尊心の問題や免許がなければ生活できない高齢者の切り捨てにならないかを検討しなければならない。

 高齢運転者はどのようなときに免許証を返納するのか。警視庁のアンケートによると、80%が身体的な衰えを自覚したときと答えている。

 しかし、自覚したときでは遅いと思われる。高齢になるにつれ、気づかないうちに視力、聴力、判断力、反射神経等の身体機能はだんだんと低下する。

家族の協力で早めの対応を

 家族等は高齢者が車を運転するとき、「センターラインを超える」「カーブをスムーズに曲がれない」「車庫入れに失敗する」「車間距離が異常に近い」等、以前にはなかったことが出てきたときは、自尊心を傷つけないように免許の返納を勧めるべきである。高齢者も他人から指摘されたら返納する勇気を持つことが重要である。

 高齢者は「動体視力の低下がある」「視野が狭くなる」「夜間、対向車のライトで目が眩み、回復するまで時間がかかる」等の症状を自覚したら、できるだけ早く返納を考えるべきである。

 事故はほんの一瞬である。自分一人が死ぬのならまだいいが、他人の命さえも奪ってしまう可能性があることに思いをはせるべきである。

 そして地方自治体は、車がないと生活できない人へのフォローとして、免許を返納した人にバスなどの無料・割引サービスが受けられる等に取り組んでほしい。

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酒井明

東京福祉大学特任教授

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