新技術にどう対応していくか

NEWキャリア

2019.04.05

知っておきたい危機管理術 第36回 新技術にどう対応していくか

『地方財務』2018年2月号

 Fintech、AI、IoT……、これらは今台頭してきている、今後の私たちの日常生活を大きく変えていくであろう新たな技術です。今回は、新たな技術に対して我々はどう対応するのか、していくべきなのか、といった観点で考えてみたいと思います。

イノベーションの波

 そもそもを振り返ると、世の中を変える新技術は、50~60年周期で登場してきました。経済学者のシュンペーターは、長期の景気循環を示すコンドラチェフ・サイクル(約50年周期で景気は上昇・下降を繰り返すというもの)の波と、技術上のイノベーションの波とを結びつけて示しています。

 第一のイノベーションの波は19世紀前半の紡績業を中心として起こった産業革命とその浸透、第二の波は19世紀後半の鉄道の建設を軸とした蒸気機関と鉄鋼業の進展、第三の波は20世紀前半の電気・化学そして自動車の時代。そして第四の波は、第2次世界大戦後の1950年から2000年代にかけて生じた、高分子化学やエレクトロニクス技術を核としたイノベーションです。これらの技術がコンドラチェフの第四の景気波動の上昇期をもたらしたといえるでしょう。

 景気の波のピークとイノベーションの波のピークは重ならず、常に反対です。つまり、新技術のピークには景気波動は谷底、新技術の萌芽期に景気波動はピークを迎えます。

新技術の登場

 1970年代後半から1980年代前半にかけて、半導体やコンピュータを含めたエレクトロニクス、バイオテクノロジー、新素材の三大先端技術は実用化の勃興期を迎え、更に1990年代にはインターネットが生まれました。Fintech等の技術は、2000年前後のIT革命の延長で登場しましたが、ここに至るまで、世界は時代のあだ花といいたくなる痛い経験をしました。

 1980年代にロケット・サイエンティストをはじめとする優秀な科学者たちが金融の世界に大量に入り、金融工学を作り出しました。そしてデリバティブ(金融派生商品)開発を加速させ、リスクを切り売りしてコントロールすることに一旦は成功し、人々はマネー資本主義を謳歌しました。しかし、CDSという金融工学を駆使した金融商品に端を発するサブプライムローンの崩壊、2008年にリーマンショックが起こったのでした。

仕事への影響は?

 さて、Fintechを例に、新しい技術が社会や我々の仕事にどう影響を与えていくのかを見てみましょう。

 FintechはFinance(ファイナンス‥金融)とTechnology(テクノロジー‥技術)を組み合わせた造語です。その普及の背景にはスマートフォンやSNSといった新たな社会インフラの構築が進んだことと、それを使いこなすミレニアル世代(アメリカでいえば1980年代~1990年代に生まれた、最初からネットの中で育っているデジタル・ネイティブ)といわれる若い世代の存在及びその行動様式に合致していることがベースとしてあると考えられます。それこそ150年の歴史を持つといわれるクレジットカード社会のアメリカでは、現金を持たずに多様な決済や取引が出来るFintechの浸透は当然のことです。現金志向の強い日本でも、Fintechの活用により、旧来の金融機関の規制的な送金をはじめとする手数料が下がっていくことなどにより、金融機関自体も効率化が進み淘汰されていくといわれています。

 オックスフォード大学のオズボーン氏とフライ氏の2013年の論文では10年後には総職種の49%がコンピュータリゼイションの影響(消滅等)を受けるとしていますが、FintechやAI技術によりそのスピードは加速されていくでしょう。ブロックチェーンという技術でビットコインなどの仮想通貨が実現し、価値のデジタル化は現金を消滅させるだけでなく多様な仕事で効率化・省力化をもたらしていきます。

楽観的に眺める

 こうした新技術の進歩や社会の変革に対して怖いと考えるか、むしろわくわくするかは、年齢によっても差が生じるでしょう。しかし、今台頭している新たな技術も、本稿の前半で紹介したシュンペーターの「イノベーションの波」であると正面から見つめ、その「波」に乗ってサーフィンするような感覚で楽観的に眺めるのが大切ではないでしょうか。「知らない・未知だから怖い」と思うリスクは、「知っているから怖くない」リスクに認知を変えていきましょう。音楽メディアだって、レコードからCD、CDからネット配信へと代わってきましたが、レコード盤の音を大切にして生きることも可能です。

 新技術に対して最も大事な危機管理術は、自分の心構え・スタンスを明確にすることにあるといえるのではないでしょうか。

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