書評『イチからわかる!“議会答弁書”作成のコツ』

NEWキャリア

2019.03.27

『イチからわかる!“議会答弁書”作成のコツ』(林誠/著、ぎょうせい、2017年)

『地方財務』2018年2月号
(以下、鍵括弧は引用部)

いい答弁書がいい議論をつくる

 年が明けたと思えば、もう年度末が目前である。

 今年度採用された職員は、しばらくすると後輩ができるわけだ。一方で、この年度末で定年を迎えるベテラン職員もおられるだろう。いずれにせよ、ことさら感慨深い時期である。

 それとともに忘れてならないのが議会だ。2~3月は、翌年度予算が議案となり、執行部の答弁を作成する事務方にとっては、とりわけ緊張を強いられる時期だろう。

 著者は、現役の自治体職員である。

 昭和40年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本電気株式会社に入社。その後、所沢市役所に入庁。市役所では、総務、財政、政策企画、商業振興の各部門を経験。現在は財務部財政課長の任にある(平成29年11月時点)。最初に配属された庶務課では議会担当であったそうだ。

 著者は、「いい答弁書が準備されていれば、いい議論につながることが期待できます。いい議論ができれば、それがいい政策につながることも期待できます。/いい政策が実現されれば、いいまちづくりにもつながります」と、答弁書作成の意義や重要性を説く。

 しかし、答弁書の作成については、概ね「習うより慣れよ」式で口伝され、体系的に教授されることは殆どないのではないか、という問題意識のもと、本書では、「答弁書作成の流れ」「答弁書の書き方の工夫とコツ」「パターンに合わせた答弁の書き方」などを整理し、答弁書への向き合い方、作成のプロセスなど、答弁作成者が共通してマスターしておくべき最低限のフォームなどを平易に解説する。

 そのうえで、仏作って魂入れずにならないよう、「質問の意図をくみ、的確に答えながら、よりよい議論につなげていくのが答弁書の役割であるということを肝に銘じ、いろいろなことを想像しながら、心を込めて書くべき」であり、「踏まえるべき基本は踏まえつつ、思いや魂も込めていかないと、いい答弁書にはなりません」と、答弁書の作成で最も重要となる精神をも伝える。

 コラムで紹介されている、片山元鳥取県知事の、殆どの自治体議会は「八百長と学芸会」をやっているという指摘は、有権者がなんとなくイメージしていそうであるが、著者は、「こうした声を恐れるあまり、議員と執行部が事前に意見を交換し合うことまでやめてしまうのはもったいない気がします」と問題提起するのだ。

 その意図は、やらせの質問や、一字一句すり合わせた文章を読み合うなどは問題外だが、議場での議論を深めるために、答弁に至る過程も大事にすべきであるということで、「議会と執行部の双方が、緊張感を持ち合いながら、『ちょうどいいところ』を探るしかないのだと思います」という言葉には、諭されたような気分である。

 「議会の主役は、あくまでも議員であり、執行部側は質問に答える立場」だが「意味のある議論を行い、行政を前に進めるためには、いい答弁が行われなければな」らない。また、執行部側にとっては、「意思や思いを伝えるチャンスでもあ」ると著者は言う。

 「執行部は、質問があるかないか複雑な思いで待ち、あれば短い時間に総力を挙げて対応し、なければほっとしながらもどこか複雑な思いを持」ち、事務方は議会という「真剣勝負の場を、いい答弁原稿を作ることで支え」る。

 議会対応が好きでたまらず答弁書作成が得意という職員は、多くはないかもしれないが、議会答弁はまちづくりの肝と成り得る。本書により、答弁書作成を苦としない事務方が増えることを期待したい。平易かつ具体的な記述は理解を助け、コラムは息抜きでありつつ濃い内容である。

 「備えられないからこそ不意打ちなのですが、大切なのは、『とにかく何か言う』ということ」であるとか、「一般質問は議員の見せ場ですから、執行部側が答弁によっておいしいところを『持っていく』のもどうかと思います」や「聞いている側は、『考えております』が少々続いたところで、それほど気になりません。小細工して文脈がおかしくなってしまうくらいなら、続けて問題ないと思います」など、現場当事者からの声が満載である。

 評者には地方公務員の経験はないが、本書は、社会人にとって必要となるスキルを再考する点で、参考となった。議会対応が必要な職員はもとより、教養として多くの方にお読みいただければと思う次第である。

 本書の構成は以下のとおりである。

  • 第1章 答弁書を知る
  • 第2章 質問を受けたら
  • 第3章 書き方の工夫とコツ
  • 第4章 パターン別 答弁書の書き方
  • 第5章 現場の声
  • 第6章 答弁作成はじめて物語
  • 資料 答弁書作成のポイント

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