仕事がうまく回り出す!公務員の突破力

安部浩成

【仕事がうまく回り出す!公務員の突破力】附属機関を活用した突破

NEW地方自治

2021.01.11

仕事がうまく回り出す!公務員の突破力

【新刊紹介】スーパー公務員でなくても大丈夫! 誰でもムリなく現状突破できるスキルが身につく!

『仕事がうまく回り出す! 公務員の突破力』安部浩成/著)

(株)ぎょうせいは令和2年12月、『仕事がうまく回り出す! 公務員の突破力』(安部浩成/著)を刊行しました。「仕事に行き詰まった…」「現状を変えたい…」など、職場環境にある問題にかぎらず、税収や人口減といった社会情勢など、さまざまな要因が重なって、いまひとつ現状を打開できないという感覚に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで求められる「公務員の突破力」について、理論となる考え方や具体的な進め方も含めてわかりやすく解説した1冊です。ここでは、Chapter5:WIN‐WINの効果をもたらす連携による「突破力」より「附属機関を活用した突破を掲載します。ぜひ業務のご参考にしていただけますと幸いです。(編集部)

附属機関とは

 附属機関とは、審議会、協議会等、個別の名称は様々であるが、要するに外部有識者等を委員として行う会議のことである。皆さんの課でも、何かしら附属機関を所管しているのではないだろうか。

 しばしば附属機関は、「行政の隠れ蓑」や「御用審議会」などと揶揄される。行政機関としての意図や目的が実現できるよう、第三者のお墨付きを得るために実施しているといった意味合いである。しかし、そもそも、意図や目的もなく実施する会議などあるわけがないし、また、仮に意図や目的もなく会議を開き、これに税金を使って委員報酬や会場使用料を支払っていることがあるとすれば、これは納税者である住民に対する違背行為である。行政機関としての意図や目的を備えた上で、これらを実現するには職員が持つ知見だけでは不足するため、有識者や当事者の知見を聴取し、時代が求める政策展開、当事者に寄り添った政策展開を実現しようとするものといえよう。

 ところで、私は、市町村アカデミーに教授として派遣されたときに、ある自治体から参加した研修生から質問を受けたことがある。それは、自分が担当している附属機関の委員を替えたいが、どうしたらよいか、ということであった。そして、その質問の背景には、その附属機関には長期間君臨する委員が存在し、制御不能な状態に陥っているということがあった。

 附属機関は外部有識者や当事者の知見が命であり、これがため委員構成こそが肝である。附属機関を活用して現状からの突破を図ろうとしているのに、附属機関の運営というオペレーションレベルに翻弄されているようでは困る。

委員構成のポイント

 では、機能する委員構成の実現を目指して、そのポイントを見ていこう。

 第一に、委員の属性である。属性には、大学教授、関係団体、当事者代表、地域代表、公募委員、報道機関等がある。当事者の意見の反映を主な目的とする附属機関であれば、関係団体や当事者代表を多く登用するだろう。また、政策の方向性を打ち出していくことが主な目的であれば、大学教授等の有識者を登用し、他の委員や傍聴している住民から高い納得性が得られる運営を図りたい。

 第二に、属性のバランスである。関係団体や当事者代表だけで構成すると、どうしてもそれぞれの立場に立脚した意見の表明に終始しがちとなる。ファシリテートできる人材も登用しないと運営がまとまらない。逆に、大学教授等の有識者に偏ると、地域や当事者の実態から離れた方向性となってしまうことが危惧される。ベストバランスはどの辺りかが重要である。

 第三に、人選である。大学教授を例にとると、専門分野を加味した上で登用することは当然として、その主義主張は多種多様である。自治体の附属機関で議題となることはまれだろうが、憲法学者を例にとると、政府の有権解釈に賛成の立場をとる学者も、反対の立場をとる学者も存在する。学者の主義主張は論文や著書で確認しよう。また、委員候補とする学者が在籍する大学を卒業した職員から評判を聞くことも有効であろう。さらに、その分野の全国的な第一人者を選定するのか、地域の事情をも熟知した地元の大学から選定するのかといった視点もある。選定自体に疑問を抱かれることのないよう、選定理由を明確化しておきたい。

 ところで、ワイドショーにおいて「有識者」が、実現可能性が著しく乏しい理想論を展開していることを見たことはないだろうか。ワイドショーは視聴率が命であり、たとえそれが荒唐無稽であれ、視聴者をあおり、その溜飲を下げさせる展開を見せなければ、誰にも見てもらえない。しかし、責任ある行政運営を司る行政機関においてはこれでは役割を果たすことができない。

 行政機関が設置する附属機関においても、その審議する案件に応じて、福祉、環境、工学等の専門分野の有識者を登用することはもちろん必要である。しかし、専門分野に特化した有識者だけでは、理想論となり現実離れして、財源等の裏打ちの希薄な実現性のない結論へ帰結してしまう恐れもある。このため、「専門分野に特化した有識者」に加え、「行財政経営全体が見渡せる有識者」の登用も求められる。

 私は、かつて、行財政経営をも語ることができる工学者にお目にかかったことがある。一般にハード系は多額の費用が掛かる大規模事業が花形であるが、この教授は、今後縮小していく時代背景を理解し、こうした時代におけるハード施策の在り方を自らの言葉で語ることができる方であった。その主張は、地域の課題を地域に住む人たちが解決していくコミュニティデザイン・まちづくりであり、こうした専門分野と行財政経営の両方に通暁した有識者が発掘できれば、複数の有識者を登用する必要性は低くなる。

 第四に、性別や年齢のバランスである。男女比は同等となることが望ましいが、わが国では、団体の代表者に女性が就くことがまだまだ少ないという実態もある。そこで、団体と協議の上、男性の代表者ではなく、女性の副代表者にお願いするといった手法も考えられる。

 また、年齢が高齢化する傾向もあろう。その構成がテーマと一致していれば構わないが、たとえば、これからの政策の在り方を検討しようとする場合には、若手の登用も検討すべきかもしれない。私は、ある附属機関の委員を選定する際に、当時の課長から、これまでの構成も踏まえながらも、「よく見る顔ぶれ」を打破した若手の登用を検討するようオーダーを頂いた。これを受け、20代の研究者を選定し、これが採用された。一般に、若手の研究者は、本人の実績づくりにもつながるため、意欲的といえる。

 第五に、激変緩和のため、これまでの自らの自治体の先例を踏まえつつも、他の自治体における同種の附属機関の委員構成も参考としたい。行政運営と同様で、附属機関の運営も井の中の蛙となると陳腐化する。今後の政策の在り方を議論する附属機関が陳腐化しては、方向性を見誤りかねない。他の自治体における委員構成を研究し、目指すものが見つかれば、それをモデルとして見直しを図っていきたい。

 幸いなことに、附属機関は公開で行われることが多い。そこで、百聞は一見に如かず、傍聴してみることも効果的である。事務局による附属機関の運営手法にも学ぶところがあるはずだ。私は、他の自治体の附属機関を傍聴したことがある。その際、目的に応じて、あらかじめ事務局に身分を明かし、了解を得た上で傍聴したこともあるし、私服で個人的に傍聴したこともある。本では雄弁な学者が、会議では訥弁であったりと意外な発見もある。非公開の附属機関も議事録は公開されていることが多いので、参考となるはずである。

附属機関を有効に機能させるための戦略

 ここからは、実例から3点述べたい。

 行政改革をテーマとした他都市の附属機関を傍聴したときのことである。委員長にはその道の第一人者である行政学者が、委員の一人には若手の行政学者が就任していた。この二人が所属する大学は異なり、一般に気づく者は少ないが、実はこの二人は師弟関係にあった。そこで、あらかじめすり合わせの上、委員長が正しいと考える方向性に立脚した意見を若手の委員が発言し、この発言を委員長が拾い、推進していく手法がとられていた。大変戦略的といえる布陣である。

 第二の例は、私が実践した手法である。国としては推進しているが、市としては既に陳腐化してきている事業があった。この陳腐化という印象について、既に気心が知れていた委員の一人である研究者も同意見であった。国の施策の方向性と違った方向性の打ち出しは、自治体としては難しい部分がある。そこで、この研究者に発言を打診し、方向性をつけてもらった。もちろんこれは誘導したわけではなく、研究者としての良心に基づいての発言である。

 第三の例は、行政運営に民間手法を取り入れるNPM(New Public Management)が唱えられ始めたころの例である。行政改革大綱案に「民間機能の活用」と入れたところ、民間企業から選定した委員から待ったがかかった。有名な大企業に所属するその委員の発言には、正に目から鱗が落ちた。

「皆さん、民間企業が何でも良いように思われているかもしれませんが、全てが優れているわけではありません。民間には汚い部分、ずるい部分もある。そこで、「優れた」民間機能の活用とした方がいい」

 私たちは、NPM礼賛の時代に頂いた貴重なこの意見をしっかりと受け止め、行政改革大綱に反映させることができた。

 何かしら現状を突破していく機会として、附属機関は有効に機能する。しかし、これが機能するためには、しっかりとした戦略が必要である。

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安部浩成

安部浩成

千葉市中央図書館長/元市町村アカデミー教授

1969年生まれ。明治大学政治経済学部卒業。1993年千葉市役所に入庁。税務課、保健医療課、都市総務課、教育委員会企画課、行政管理課、総務課、政策法務課、障害者自立支援課などを経て、人材育成課課長補佐、業務改革推進課行政改革担当課長、人材育成課担当課長、海辺活性化推進課長などを歴任。2019年より現職。厚生省(当時)や千葉大学大学院、市町村アカデミーへの派遣を経験。市町村アカデミーでは教授として、講義や研修企画等を通じた人材育成に携わる。人材育成と行政改革がライフワーク。著書に、『はじめて部下を持ったら読む 公務員のチームマネジメント』(学陽書房)、『市町村職員研修 いちからわかる! 地方公務員仕事のきほん』(共著、ぎょうせい)、雑誌寄稿に「新任昇任・昇格者の行動力」(月刊『ガバナンス』2020年3月号)ほか。

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