クレーム対応術

関根健夫

質問することで相手の発言をうながす|クレーム対応術4【カスハラ対策】

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2025.03.21

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出典書籍:『ガバナンス』2014年7月号

自治体職員のためのトラブルの対処法を学ぶ!カスハラ対応図書特集

今さら聞けないクレーム対応術 4
『聞いても仕方のない話を延々とされたら、どうすればよいですか?』
/月刊ガバナンス 2014年7月号


2025年4月1日、東京都などで「カスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例」が施行されました。
これにより、企業や自治体にも適切な対応策の整備が求められています。

本サイトでは、月刊『ガバナンス』で好評を博した連載「クレーム対応駆け込み寺」の内容を引用して掲載。
第4回目の本記事では会話をコントロールする方法を解説します。

カスハラ・クレーム対応の参考としてチェックしてください!

この記事で分かること

・聞いても仕方のない話への対応
・会話をコントロールする方法
・相手の発言を促す質問例

どんな話でもとにかく聞く

 人の話を聞く機会は、日常どこにでもある。話す側の気持ちとしては、その場にいる相手方に話す必要がある、伝えたいことがあるから話すのである。

 相手が必要と思って話している以上、こちらとしては、とにかく聞かなければならない。特にクレーム対応では、お客さまが切実な気持ちを持って話しかけてくることが多い。時には興奮することもあるだろう。しかし、その内容がどのようなものであっても、相手が一所懸命であれば、こちらも心を込めて聞くべきだ。

 このことは、あらゆる場において、人として生きる上での原理原則である、といってもよい。相手が何かを話しているにもかかわらず、聞かないということは無視することに等しい。それは相手の立場を否定することになり、その場の人間関係は間違いなく乱れる。

クレーム対応は公務員の本来業務

 しかし、クレームで寄せられる内容には、非常識なもの聞いても仕方のないものにわかに解決策が見出せないものもあるだろう。それでも相手が主張している以上、まずはとにもかくにも聞いてみてから、その先を考える。つまり、こちらができることとできないこと、すべきことと断るべきことを判断するのだ。

 気をつけなければならないのは、相手が人間である限り、いくらこちらが聞いても仕方がないと思っても、そのことをストレートに感じさせると、間違いなく不快になるということだ。その結果、感情的な軋轢が生じる。 相手方は主張する内容に価値を見出しているからこそ話しているからだ。

 たとえそれがどのような内容であっても、住民の意見に耳を傾けること、クレームに対応することは公務員の本来業務である。こちらとしては聞く必要がないと思われる話をされても、相手が真剣に主張している以上、真剣に聞き、深く聞きこんでその状況を判断すべきである。非常識な内容、無理な要求ほど、その人の背後には何らかの事情が隠れているものだからだ。なぜ、このような主張をされているのだろう、と考えてみよう。

効率的・効果的に聞くことが大切

 そうはいっても、聞く必要のない話、聞いても仕方のない話をされると、誰でもイライラする。特に行政窓口へのクレームでは、論旨が飛んでしまってお客さまが何を言いたいのか受け取りにくかったり、自分の担当外の内容の話をされることがある。それが相当な時間続くと、ストレスも溜まる。他の業務に支障が及ぶこともあるかもしれない。

 そこで、聞くべきか聞かなくてもよいかではなく、効率的、効果的に聞くことが求められる。つまり、会話の主導権を握り、コントロールするのである。その結果、今まで30分かかって聞いていた話が20分になれば、そしてお客さまが「ありがとう」の一言でも言って帰ってくれれば、コミュニケーションへの興味や達成感も生まれるだろう。

 相手方から何かを主張されたとき、こちらがすぐに説明や反論を返すと相手方も主張を重ねてくる。これを続けると、お互いが相手を説き伏せようと思うから議論の応酬になり、往々にして言い合いになる。だからといって、「はい」「はい」と相づちを打って聞くのみに徹すれば、言い合いは防げるが、会話は相手の思うままだ。

会話をコントロールする方法

 会話をコントロールするための基本スキルは、相づちと逆質問を活用することである。
 的確に相づちを打てば、的確に聞いていることをアピールできる。そして、時には驚きのニュアンスを入れ、より深く受け止めたことを表す。

 また、質問することで相手の発言を促す。質問は、その話の内容に興味があり、もっとよく知りたいという気持ちを表す。意地悪な質問や相当に意図的な質問をすれば、それは反論したことにもなり、相手方も気を悪くもするだろう。しかし、謙虚に事実を質問すれば、相手方はこちらが積極的に聞いていることを実感する。

 クレーム対応では、こちらが聞くことに消極的だと感じられると、相手方に不快感を持たれる。だが、積極的に聞いていると実感してもらうことで、いつかは落ち着いてくれるものだ。こちらが質問すれば、相手方は答えることになる。また質問すれば、また答える。これを繰り返すことで会話の主導権が握れる。

「へー、そんなことがあったのですか。その前後には、どのようなことがありましたか」
「どうして、そうなったとお考えになったのですか」
「以前にも同じことがあった、というとそれはいつですか」
「どこで、起きましたか」
「その時の担当者を覚えていらっしゃいますか」

 など、5W2H(時、場所、人、対象、理由、方法(現象)、質量)を参考にして、丁寧に聞いていく。もし、嫌な顏をされても謝れば済む。

 相手から反論などされたら、会話の流れをとらえて、「では、その点については検討して、後日こちらから……」などと切り上げのタイミングを計ることになる。

 

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関根健夫

関根健夫

人材教育コンサルタント

1955年生まれ。武蔵工業大学(現、東京都市大学)卒業後、民間企業を経て、88年、アイベック・ビジネス教育研究所を設立。現在、同社代表取締役。コミュニケーションをビジネスの基本能力ととらえ、クレーム対応、営業力強化などをテーマに、官公庁、自治体、企業等の研修・講演、コンサルティングで活躍中。著書に、『こんなときどうする 公務員のためのクレーム対応マニュアル』『事例でわかる公務員のためのクレーム対応マニュアル 実践編』(ぎょうせい刊)。

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