そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室
不当な要求と不当要求、どこが違うのですか|クレーム対応悩み相談室4【カスハラ対応】
NEWキャリア
2025.05.07

この記事は5分くらいで読めます。

出典書籍:月刊「ガバナンス」創刊20周年記念別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』
※本書は月刊「ガバナンス」2019 年4月号〜2020 年4月号までに掲載した連載をまとめたものです(一部加筆・修正)。
Chapter4 不当な要求と不当要求、どこが違うのですか
2025年4月1日、東京都などで「カスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例」が施行されます。
これにより、企業や自治体にも適切な対応策の整備が求められています。
本連載では、月刊『ガバナンス』の連載をまとめた別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』の内容を引用して掲載。
人材教育コンサルタントの関根健夫さんが自治体でのクレーム対応術を解説しています。
今回は不当な要求と不当要求の違いについて解説します。
カスハラ・クレーム対応の参考としてチェックしてください!
この記事で分かること
・不当な要求と不当要求の違い
・違法な行為(不当要求)の具体例
役所ができないことは断固断るというのは分かっていても、実際にしつこいお客さまがいます。不当なことを言い続けるのですが、これは不当要求でしょうか。

人材教育
コンサルタント
関根さん

① 不当要求とは不当な手段をつかって要求する行為 ② 不当なことを言ったからといって不当要求とはかぎらない
「不当要求」は法律に反する行為
D お客さま対応をしていると、無理難題を言われたり、断っているのに同じ要求を続けられたり、時には怒鳴られたり、個人的にひどいことを言われたりします。
関根 役所はいろいろな人に対応するので、中には常識を超えた言動をする人もいるのでしょうね。
D 無理難題は断るしかないですが、どう考えたらいいでしょうか。
関根 不当な内容は認めるわけにはいかないのですから断固断るしかありません。
D それは「不当要求」ですよね。
関根 そこは難しいところです。「不当要求」とは、端的にいうと法律に反する行為です。
でも、無理難題を言うこと自体は法に反するとは限りません。
D どう考えても、こちらができないことを言われるのですよ。
関根 できないことであっても、その人がそう思っているのなら仕方のないことです。言っただけで法律に反するわけではありません。
D しつこく言われると、こちらは無駄な時間が取られます。
関根 そこがポイントです。内容が非常識なことであっても、その人の意見であれば、言うこと自体は、にわかに違法とは言えません。ただし、その状況が長く続いて、こちらの業務を妨げるほどになれば、業務妨害として違法な“行為”になる可能性があります。
つまり、不当なことを“要求すること”が、法的な「不当要求」とは限らないのです。
「不当要求」とは、不当な手段をつかって要求する“行為”なのです。
D 現実にできないこと、ひどいことを言われ続けると、平静ではいられません。
関根 そこも一つのポイントです。こちらとは違う意見を言われてイライラしても、その人がそういう意見を持っているのは、どうしようもないことです。でも個人的な悪口、誹謗中傷、常識的に考えて人を傷つける言い方になると話は違います。人を侮辱するのは法に反する行為ですから。
D なるほど。
違法な行為とは
関根 日本人は議論が下手だということを聞きます。本当にそうなのかは何とも言えませんが、違った意見に接するとそれを感情的に排除する、日常の何気ないやり取りにもそんな傾向はあるような気がします。受け入れられないことを受け入れる必要はありませんが、違った意見の人の話を聞いてそういう考えもあるのかと受け入れることも大切です。
D 違法な行為というのは、他にどのようなことがありますか。
関根 例えば暴力です。言っている内容が正しいことでも、暴力行為を伴えばそれは明らかに違法なこと、つまり不当要求行為です。
D 具体的にはどんなことですか。
関根 叩く、殴るなど直接体に触れる行為はもちろんですが、現実には少ないでしょう。一方で机や壁を叩く、蹴るなども暴力にあたる場合があります。さらに唾を吐く、息を吹きかける、こぶしを握って威嚇するなどの行為も役所の窓口でされたという話を聞きます。これらは直接的に体に触れなくても、明らかに恐怖を感じさせる行為であり、暴力といえます。
D 確かに机を叩くなどの行為はありがちですね。
関根 他にも脅迫行為が考えられます。脅迫というのは、相手がどのような気持ちで言ったとしても言われたほうが“その言い方は脅迫です”と主張すれば脅迫です。例えば「俺の言うことを聞かないと殴る」などの言い方は、本人が冗談で言ったとしてもこちらが脅迫だと主張すれば脅迫なのです。
D そうなのですね。
関根 ですから、常識の範囲ではありますが、発言は何でもいいのです。「お前の顔を覚えておくぞ……」「あなたにも家族がいるだろう……」「今日の帰り道は気を付けろ……」などは役所で職員が実際に言われた言葉です。こうした発言は状況によっては、相当に恐怖を覚えますよね。こちらが“脅迫だ”と主張すれば脅迫です。
D 他にもありますか。
関根 不退去も時々聞きますね。手続きが終わったのに帰ってくれない、こちらの業務が終了する時刻、閉庁時刻になっても居座って主張を続けるなどすれば、違法行為になる可能性があります。
D 時折、窓口で長くしゃべっている人を見かけます。本人に悪気はないのでしょうけれど、迷惑なこともありますね。
関根 不当要求行為は、その行為が即違法とはいえなくても、現実に迷惑なことであり、それがあまりにもひどければ違法といえるのです。あまりにひどい、つまり程度問題です。そのことは、次回にもお話ししたいと思います。
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